夏の夜の幻想 <カラスウリ> [野草]
カラスウリ 烏瓜 ウリ科 カラスウリ属 (雄花)
セミの羽化とカラスウリの花を見ることは、僕にとってこの季節の楽しみの一つです。
このベールのような白い花は、コサージュにでもしたら、美しいかも知れません。
けれども、夕方六時頃から、徐々に開花を始めて、明け方には凋んでしまうカラスウリは、摘んで来て飾りにするには、到底不向きな花です。
カラスウリ 烏瓜 ウリ科 カラスウリ属 (雌花)
カラスウリには、雌花と雄花ががありますが、そもそも株そのものが、雌株と雄株とに分かれている、雌雄異株の植物です。
秋になると、赤い実が目を惹きますが、花を見に行くと、何故か雄花ばかりが目につきます。
毎年そうなのですが、雌花はなかなか見付かりません。
でも、今年はすぐに雌花を見付けることが出来ました。
雄花と雌花を見分けるには、花の下部に子房の膨らみがあるかどうかを見ればいいのですが、藪の中ではなかなか、確認出来ない場合が多いと思います。
でも、花の中央のシベを見れば、もっと容易く解ります。
因みに、今回の記事の写真では、二枚目と三枚目が雌花です。
ちょこっと、見比べて見て下さい。
多分、簡単に見分けられると思います。
雌花は、雄花に比べると、花弁も細くて、少し先が尖っているようにも見えます。
「花は、人に愛でられる為に咲いているのではない」と、時折そんな言葉を耳にしたり、読んだりすることがあります。
でも、それは大抵は、目立つことを好む人間への戒めや、目立たない仕事を黙々とこなしている人への賛美だったりすることが多いような気もします。
しかし、このカラスウリの花は文字通りに、そんな花だと思います。
夜中に満開となって、夜明けには凋んでしまう花を、わざわざ観賞しようという言う人もそう多くはないでしょうし、闇の中に咲いていては、気づく人さえも滅多にはいないでしょうから…。
僕は、路傍や公園の片隅で、小さな野草や昆虫などにカメラを向けている時に、「何を撮っていらっしゃるのですか?」などと、問われることがよくあります。
けれど、これまでカラスウリを撮っていて、そんなことを聞かれたことは、ただの一度もありませんでした。
ころが先日の夜、いつもの公園の外れで、カラスウリを撮っていると、三人の小さな兄弟を連れた、若いお母さんが通り掛かりました。すると、男の子の一人が「ねえ、何をしてるの?」と言って、僕に近づいて来ます。
「お花を写真に撮っているんだよ」と答えて、僕は手にしていた懐中電灯で、カラスウリの花を照らして見せてあげました。
「ほんとだ。きれい」男の子がそう言って、カラスウリの花を見ていると、若いお母さんは「お邪魔しちゃだめよ」と言いながら、一番下の子をおんぶして、こちらにやって来ました。
「あら、奇麗。何と言う花なんですか?」
「これは、カラスウリの花です」
「カラスウリなら知っていますけど、こんな奇麗な花が咲くんですね。知りませんでした」
「夜にだけ咲いて、夜明けには凋んでしまうので、知らない人の方が多いかも知れませんね」
若いお母さんと子供たちは、少しの間驚いたように、懐中電灯の灯りに照らされたカラスウリの花を眺めていました。
そして、お母さんが「ありがとうございました」と言うと、一番上の男の子も「ありがとうございました」と言って、立ち去って行きました。
今夜、カラスウリの写真を撮りに来て良かった。そう思えるような素敵な親子と出会えて、カラスウリの白い花も、撮れたので、確かにその日は良い一日だったのだと思います。
追記
カラスウリの記事を書くために、写真をリサイズしたりしてから、ブログ仲間の方たちの記事を拝見しに行きました。
その折、春分さんの「春分亭備忘録」へお邪魔すると、春分さんも「夜に咲く」というタイトルで「カラスウリ」の記事を公開されていました。
ちょっと、嬉しかったのでTBさせて頂くことにします。
↓ 春分さんの記事「夜に咲く」です。
http://shunbuntei.blog.so-net.ne.jp/2008-08-11
秋の日―野の花― [野草]
ミズヒキ 水引 タデ科 タデ属
前の記事に、野の花や蝶、そして鳥の写真を載せましたが、敢えて名前を表記しませんでした。
でも、改めて見てみると、それでは何となく僕のブログのようではないという気もして来ました。
そこで、前の記事に載せた花や蝶たちの名前を紹介することにします。
初めは、野の花たちからです。
七草~春の気配~ [野草]
セリ 芹 2007.1.7.
今日は一月七日。
春の七草を摘んで、七草粥を作る日です。
「せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ」
一枚目の写真は、その七草の最初に挙げられている「せり」です。
近くの田圃の水路の辺で、今日撮った写真です。
ナズナ 薺 2006.12.24.
こちらは、二番目の「なずな」。
この写真は、昨年最後の記事になった、「冬のコスモス」を撮りに行く途中で見付けました。
三番目の、「ごぎょう(または「おぎょう」)」とは、母子草のことです。
実は先週、都内の公園で花が咲いているのを見付けたのですが、生憎カメラを持って行かなかったので、残念ながら写真はありません…。
ハコベ 繁縷 2007.1.7.
これは、「はこべら」。
今は、普通に「ハコベ」と呼ばれています。
市販の「春の七草セット」には、何故かハコベが一番多く入っているようです。
次の「ほとけのざ」は、昨年の記事にも書きましたが、ピンクの花が咲くあの「ホトケノザ」とは、まったく別もので「コオニタビラコ」と言う、キク科の植物のことだと言われています。
そして、「すずな」が「蕪」、「すずしろ」は「大根」の事です。
万葉集の最初に、若菜を摘む歌が載っていますが、昔の人たちは、早春に萌え出る若草に、霊的なパワーを感じ取って、それを食べることで、その力を身に付けようとしていたようです。
七草の花は、普通この時期には咲きませんが、今年はその内の幾つかが、冬に咲いているのを何度か見掛けました。
そして今日、激しい寒風が吹く中で、七草には含まれていませんが、春を彩る幾つかの花が咲いているのを見付けました。
オオイヌノフグリ 2007.1.7.
この小さな青い蕾は、春を告げて咲くオオイヌノフグリです。
ヒメオドリコソウ 2007.1.7.
こちらも、春を待ちわびるように、可憐な輪舞を見せてくれるヒメオドリコソウです。
どちらも、もっともっと暖かくなる頃に咲く花ですが、寒風が吹き荒ぶ中に、ひっそりと咲いていました。
ちなみに、僕は今日の七草粥用に、市販の「七草セット」を買って来ましたが、それは昨年と同じ大分県産のセットでした。
今日は、千葉県でも激しく吹く風がとても冷たい一日でしたが、その大分県でも今朝は、「珍しく雪が積もった朝でした」と、ナナさんが久し振りに僕の記事に下さったコメントに記されていました。
昨年の、「七草」の記事です。
http://blog.so-net.ne.jp/albireo/2006-01-07
ヒヨドリジョウゴ [野草]
ヒヨドリジョウゴ 鵯上戸 ナス科 ナス属
ヒヨドリジョウゴは、ナス科のつる性の多年草です。
名前の由来は、その赤い実をヒヨドリが好んで食べることから名付けられたと言います。
しかし、この一見美味しそうに見える赤い実には、毒があるそうです。
そんな、毒のある実を本当にヒヨドリが食べるのかどうか…。
些か疑問に感じたので、様々な図鑑を当たって見ました。
すると図鑑によって、解説文には幾つかの異同が見られました。
ある図鑑は、「ヒヨドリが好んで食べる」と断定しています。
また、別の図鑑には「ヒヨドリが好んで食べると言われる」と曖昧な書き方がなされています。
更に、赤い実が沢山付く事から「ヒヨドリが好んで食べるのではないかと言う想像によって」名付けられたと言う意味の書き方をしている図鑑も、何冊がありました。
結局、本当のところは分からず仕舞いになってしまいました。
ただ、人間には毒であっても、他の動物は問題なく食べるという例は、幾つも存在します。
例えば、ユーカリは有毒ですが、コアラはそのユーカリしか食べません。
また、昆虫の中にも、他の昆虫には有毒な植物を食草としているものもいます。
ですから、このヒヨドリジョウゴも、実際にヒヨドリが食べるのかも知れません。
そして、もしそうであれば、いつか写真を撮ってみたいと思っています…。
また、平凡社世界大百科事典によれば、「全草薬用となり,下熱・解毒剤として用いられる」とのことです。
赤い実も綺麗ですが、濃い緑色の未熟な実も、なかなか綺麗です。
この写真は、十二月四日に撮ったものです。
そして、こちらは一週間後の十二月十一日に撮影したものです。
見比べて頂ければ分かると思いますが、同じ葉と実です。
緑の実が熟して赤くなるまでには、これを見ると、どうも一週間以上は掛かるようです。
ヒヨドリ 鵯 スズメ目 ヒヨドリ科
ところで、「ヒヨドリってどんな鳥?」
と、思われた方もいらっしゃるかも知れません。
何とか、ヒヨドリの写真を撮りたいと思っていました。
無理なら、以前撮った写真を探して見るつもりでした。
そんな折、既に実の無い家の柿の木に、一羽のヒヨドリが来てくれました。