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野菊 [野草]

       カントウヨメナ  関東嫁菜  キク科 ヨメナ属

所謂、「野菊」と呼ばれている花には、「ノコンギク」「ヨメナ」「ユウガギク」など、様々な種類があります。
「野菊」というのは、そうした様々な野生の菊の、一般的あるいは通俗的な呼び名です。

写真の花は、その内の「カントウヨメナ」と呼ばれている野菊で、東北地方から関東地方にかけて分布しています。

 

 

          秋が逝く

          薄紫の野菊が

          枯れ始める頃

          留める術もなく

          密やかに緩やかに

          秋は逝ってしまう


          まだ穏かな

          でも肌寒い風は

          やがて吹き始める

          木枯らしの予感

          ひっそりとしめやかに

          秋は過ぎ去って行く

 

同じ茎から枝分かれした花ですが、薄紫と白と色の違う花が咲いていました。
これは、花の中央の黄色い管状花の様子からすると、咲いてから日数の経った花が白くなっていて、まだ咲き始めたばかりの花が、薄紫色をしているようです。

また、ハナアブの仲間が来ていました。
そろそろ、花も少なくなる季節…。虫たちも、なかなか大変なようです…。

 

野菊というと、僕はどうしても、伊藤左千夫の小説『野菊の墓』を思い浮かべてしまいます。
ちょっと引用しようと思ったのですが、昨年の記事と同じになってしまうので、止めておくことにします。
http://blog.so-net.ne.jp/albireo/2005-10-30

今日の記事の写真を撮ったのは、十月の半ば過ぎ頃でした。
今朝、写真を撮った場所の近くを通ると、まだ辛うじてカントウヨメナが咲いていました。
これ以上、季節外れにならないように、とは思っていたのですが、今日やっと記事に出来ました。

と言うことで、更新が、二週間近くも滞ってしまいました。
折角お訪ね下さった皆さんのところへも、殆どお邪魔し切れていません。

誠に申し訳ありませんが、少しづつ拝見させて頂きにお伺い致しますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

 


野火 <彼岸花> [野草]

   ヒガンバナ  彼岸花  ヒガンバナ科  ヒガンバナ属

真っ赤な彼岸花は、時に燃え広がる野火のように、大きな群れを成して咲きます。
家の近くの公園の外れにも、昔からある程度の数の彼岸花が咲いています。

でも、野火が燃え広がるように一面の彼岸花は、なかなか見ることは出来ません。
もう何年も前に見た、奈良県・明日香の田圃に沿って燃え盛るような彼岸花の風景が、懐かしく思い出されます。


彼岸花の別名である「曼珠沙華」は、古代インドの言葉であるサンスクリット語の「マンジューシャカ」によるものです。
インドの仏典を、中国で漢訳する際、サンスクリット語の読みを、そのまま漢字に置き換える「音訳」の手法を採って「曼珠沙華」という美しい響きの言葉が作られた訳です。

「曼珠沙華」は仏典では、如来の説法の際に天空から舞い散る五天華(ごてんげ)という、五種類の花の一つとされています。

最も一般的な日本名は「彼岸花」ですが、その他にも「死人花」や「地獄花」など、様々な呼び方がされています。
「彼岸花」の名は、単に「お彼岸」の時期に咲く為に付けられた名のようですが、「死人花」や「地獄花」は、この花がよく墓地に植えられることによるものだといいます。

日本は、国民の多くが仏教徒(その多くは、葬式の時だけかも知れませんが…)である「仏教国」の筈ですが、仏典では「天上の花」が、民間信仰的には「不吉な花」とされていることに、僕は非常に興味を覚えます。

 

 

    秋の野を 焼き尽くし行く野火のごと 朝の光に彼岸花燃ゆ

    燃ゆる火の 野面を焼きて広がると 見紛う如く 彼岸花赤し

 

 

    紅き花の 炎は雨に打たれても いよいよ赤く燃え盛りおり

 

ヒガンバナという植物は、花は咲いても種は出来ず、地下の鱗茎によって繁殖します。
その事から、本来日本の野生植物ではなく、古い時代に中国から移入されたものが、人間の手によって植えられ広がって行ったものと考えられています。

ヒガンバナの根には、相当な毒が含まれています。
しかし、この根を掘り出してすりつぶし、充分に水に晒すことにより、毒を除去して食用となる澱粉を採ることが出来るのだそうです。
種の出来ないヒガンバナが、日本各地に広まっているのは、食料の乏しかった時代に、そうして食料とする為だったという説もあるようです。

また、その毒性を利用してモグラを駆除するため、田畑の畦などに植えられることもあります。

 

 
        曼珠沙華

               北原白秋

   GONSHAN. GONSHAN. 何處(どこ)へゆく、
   赤い、御墓(おはか)曼珠沙華(ひがんばな)
   曼珠沙華、
   けふも手折りに来たわいな。

   GONSHAN. GONSHAN. 何本(なんぼん)か。
   地には七本、血のやうに、
   血のやうに、
   ちゃうど、あの児の年の(かず)
   GONSHAN. GONSHAN. 気をつけな。
   ひとつ()んでも、日は真昼、
   日は真昼、
   ひとつあとからまたひらく。

   GONSHAN. GONSHAN. 何故(なし)なくろ。
   何時(  いつ)まで取っても、曼珠沙華(ひがんばな)
   曼珠沙華、
   恐(    こは)や、赤しや、まだ七つ。

           北原白秋 詩集『思ひ出』柳河風俗詩

             岩波書店版 白秋全集2 <詩集2> 所収

 

僕は、彼岸花というと何故か北原白秋のこの詩を思い浮かべることがあります。
白秋は、童謡詩人としても知られていますが、耽美主義的な傾向の詩も多く書いています。そして、時にこうした不気味とさえ言えるイメージの詩も見受けられますが、それもまた、白秋の魅力の一つと言えます。

ちなみに、白秋は福岡県柳河の出身で、「GONSHAN(ごんしゃん)」という言葉に就いて、別の詩に「良家の娘。柳河語。」という注釈が付けられています。

また、詩に打ったルビは、すべて白秋全集によるものです。


尚、この詩は以前の記事に lapisさんも、その一連目を引用されています。
lapisさんは、彼岸花に関してのとても興味深い記事を書かれていらっしゃいますので、是非ご覧頂きたいと思います。

また、書家の sanesasiさんは、lapisさんの記事を本に、白秋のこの詩を書の作品にされて、ブログに掲載されています。
とても、味わいのある素晴らしい書です。こちらも、是非ご覧頂きたいと思います。(ブログでは、textデータとしては横書きにしか表示出来ませんが、sanesasiさんの書は縦書きで書かれていますので、詩としての本来の雰囲気もよく感じる事が出来ます。)

lapisさんの記事↓
http://blog.so-net.ne.jp/lapis/2005-10-06

sanesasiさんの記事↓
http://blog.so-net.ne.jp/sanesasi/2006-09-18

 


夏の夜の幻想 ‹カラスウリ› [野草]

                  カラスウリ 烏瓜 ウリ科 カラスウリ属

今年も、カラスウリ花が咲き始めました。

藪のような場所で、夜にしか咲かない花ですから、実物をご覧になった事のない方の方が多いかも知れません。

夕方、六時過ぎくらいから、段々開き始めます。

 

折り畳まれていた細い糸状の花は、ほつれていた糸がほぐれるように開いて行きます。

 

 

          闇の中に

          人知れず咲く

          白い幻想の花

          夏の夜の夢が

          また密やかに

          開き始める

 

二つ並んだ、ツイン・スター。
そう言えば、サンリオのキャラクターに、「リトル・ツインスター キキとララ」というのがいましたね。

今回見た花は、すべて雄花でした。
カラスウリはウリ科なので、当然雄花と雌花があるのですが、何故か雌花を見る事は少なく、昨年も雌花は一度しか撮れなかったように記憶しています。
でも、秋になれば赤い実を沢山見掛けるので、それなりの数は咲いてる筈ですが…。

この花は、夕方の六時頃から咲き始め、およそ夜の七時過ぎ頃には開ききります。
そして、朝には萎んでしまう、一夜限りの花です。

薄暗い藪の辺りに咲いている事が多いですから、もし見に行かれる時は、防犯には充分にご注意下さい。

同時に、怪しい人物と間違われないようにも、ご注意願います。
(僕も注意しないと、そう思われているかも…)

 

この花の写真を撮る時は、いつもなら懐中電灯を持って行くのですが、忘れて出てしまいました…。
その為、途中からは、マニュアルでピント合わせをせざるを得ませんでした。

実は、ピント合わせの最中に、スズメガがやって来たのですが、残念ながら撮り逃がしました…。
夕方、写真を撮りに出る時は、懐中電灯は必須です…。

次に撮りに行くときは、忘れないようにします!

 

注 ①
「スズメガ」は、比較的に大型の蛾です。
仲間には、アペリアなどによく来る蛾で、昼間行動する「ホシホウジャク」や「オオスカシバ」がいます。
しかし、スズメガ科の大半は夜行性で、こうした夜咲く花などで吸蜜をして、同時に受粉をします。

また、夜行性の蛾は、百合などの大型の白い花に来ることも多いそうです。

 

注 ②
懐中電灯の使い方ですが、はてみさんからコメントでご質問を頂いたので、ちょっと補足します。

懐中電灯で照らしながらだと、暗いところでもオートフォーカスで、ピントを合わせられるので、僕はその為に使っています。
写真を撮る時は、カメラのフラッシュを使います。
デジカメは(特にコンデジだと)、マニュアルでのピント合わせがしづらいので、以前コンデジをメインに使っていた頃は、夜にセミの羽化を撮るときにも、懐中電灯で照らしてピントを合わせて撮りました。
懐中電灯の持ち方は、色々と工夫していますが、慣れないと一人では扱い難いかも知れません。

 


野生の蘭 <ネジバナ> [野草]

                                 ネジバナ 捩花  ラン科 ネジバナ属

ネジバナの名前の由来は、茎にねじれたように花が付くことによります。

別に、「モジズリ」という名があります。
これは、昔の草木染の一種と思われる、「もぢずり」の模様と、花の様子が似ているから付けられた呼び名とされています。
「もぢずり」は、「捩る」と「摺り」とを合わせた言葉で、草木の汁を石に付けて、それを布に摺り付けて染めるという技法だったとされています。
(色々な本を調べてみたのですが、この染物に就いては様々な説があって、本当のところは分かっていないというのが、現実のようでした)

その為か、ネジバナというと、以下の和歌がよく引き合いに出されることがあります。

   みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに乱れそめにし われならなくに

陸奥国の信夫郡で作られた、もじずり染めの紋様のように、私の心はあなたへの想いで乱れてしまいました。いつもなら、そんな私ではないのですが・・・。

この和歌は、「伊勢物語」や「百人一首」に取り上げられた有名な歌ですが、ネジバナの別名「モジズリ」は、どうもこの和歌によって付けられたようです。

しかし、この歌には実際の「ネジバナ」は詠み込まれている訳ではありません。
ネジバナは、江戸時代には栽培されていたという記録があるようですから、誰か教養のある人が、雅な和歌から「もじずり」の言葉を取って名づけたと、ただ単に、そういうことなのかも知れません。

ちなみに、上に引用した歌は、河原の左大臣と呼ばれた 源 融(みなもとのとおる)の歌で、その出典である古今和歌集では、少し言葉が異なっています。

   みちのくの しのぶもぢずり たれゆゑに みだれむと思ふ 我ならなくに

                           源 融
                           古今和歌集・巻14 恋歌四 724

 

ネジバナには、比較的に稀ですが、白花もあります。
写真のこの花は、些かピンクがかっていますが、もっと白い花もあります。

以前、家にもあったのですが、いつの間にか無くなってしまいました。
多年草とは言え、一本の草がそう長く芽を出す訳ではないでしょうし、周りのピンクの花と交配して出来た種からは、白花が咲くとは限りませんから、それも仕方の無いことではあります…。

 

ネジバナの巻き方には、左巻きと右巻きがあります。

地方によって、右か左かの比率は違うという事です。

 

日本の野生のランは、乱獲や生息環境の変化の為に、絶滅に瀕しているものが多いと言われています。

そんな中で、このネジバナは、唯一と言っても良いほど絶滅の恐れの無い、日本原産の野生の蘭なのだそうです。

ちょとした公園の芝生などにも、いつの間にか咲いているネジバナは、遠目にはあまり目立ちませんが、近づいて見ると、本当に可憐な花です。

 

モンシロチョウも、蜜を求めてやって来ます。

 

 

参考文献

  平凡社 世界大百科事典 DVD版  平凡社

  スーパー・ニッポニカ CD-ROM版 小学館

  八代集  CD-ROM版   岩波書店

  伊勢物語   講談社文庫版

 

 


クローバーの草原 [野草]

                                 シロツメクサ 白詰草 マメ科 シャジクソウ属

『クローバー』は、その和名である『白詰草』が、江戸時代に海外から輸入されたガラス器などに、乾燥したものが詰め物として使われていたことに由来する通り、比較的近い時代に日本に入って来た外来植物です。

けれど、クローバーは、恐らく誰の心にも、幼い日の思い出として、様々な形で残っている花だと思います。

 

 

        もしも 気持ちが塞ぎ込んだら

        風が輝きながら 吹き過ぎて行く

        あの懐かしい 幼い頃の草原へ

        四葉のクローバーを探しに行こう


        そこに吹いている優しい風を

        身体いっぱいに感じられたら

        たとえ ほんの少しだけでも

        子供の心に戻れるかも知れない


        きっと クローバーの草原は

        誰の心にも残されている

        遠く 幼い日々の思い出

        人の想いが 帰って行く場所

 

 

元々は、牧草として明治時代に導入されたクローバーですが、今は完全に野草と化して、あちこちの空き地などに大きな群落を作っています。

 

                         コメツブツメクサ 米粒詰草 マメ科 シャジクソウ属

名前の通り、とても小さな花を付けるクローバーの仲間です。

 

花の大きさは3~4mmほどしかありません。

写真を撮るには、ちょっと厄介な花だと思います

 

          ムラサキツメクサ  紫詰草  マメ科 シャジクソウ属

ムラサキツメクサは、別名を『アカツメクサ(赤詰草)』とも言います。

僕は、子供の頃に見ていた図鑑で、『ムラサキツメクサ』と覚えてしまったので、どうしてもその名前で呼んでしまいます。

僕にとっては、このムラサキツメクサの花も、小学生の頃の夏休みを思い出させてくれる、懐かしい植物です。

 


振り向くと・・・ [野草]

        ムラサキサギゴケ 紫鷺苔 ゴマノハグサ科 サギゴケ属

野原に咲いていた『ムラサキサギゴケ』。

2cmほどの小さな花は、草原(くさはら)の地面を、這うように広がって咲いています。

白い花が咲くものもあり、それを『サギゴケ』と言うのだそうですが、白い花はまれにしか見られないと、何冊かの図鑑には書かれています。

 

一度、その白花を見てみたいとは思っていました。

けれども、どこに自生しているか分からないものを、そう容易(たやす)く探せる訳もありません。

この時も、どこかで白花を見られたらいいな、でも滅多に咲いていることは無いのだろうな・・・と、思いながら、ふと後ろを振り向くと・・・。

 

              サギゴケ 鷺苔 ゴマノハグサ科 サギゴケ属

そこに、『サギゴケ』 の白い花が咲いていました。

何気なく心に思い浮かべた花が、そこに咲いていたと言うのは、とても嬉しいことでした。

もしかしたら、作り話のように思われたかも知れませんが、でもこれは本当のことです。

『ムラサキサギゴケ』が沢山咲いている中に、ほんの一叢(ひとむら)だけの白い『サキゴケ』の花でした。

 

 

             草の香りが

             心地よい午後

             ふと振り向くと

             咲いていた

             小さな白い花

             揺蕩(たゆた)うように

             揺れる陽射しが

             花を(きらめ)かせると

             ほんの少しだけ

             深まる夏に気付く

 

この『サギゴケ』の名前の由来は、花の姿が鳥の鷺に似ているからだと言います。

多分、名付けたであろう人たちの念頭にあったのは、美しい白鷺の姿だったのでしょう。

 

                                    コサギ コウノトリ目 サギ科

けれども、それは・・・こうして、立っている白鷺の姿なのでしょうか。

 

                     ダイサギ あるいは チュウダイサギ コウノトリ目 サギ科

それとも、優雅に空を飛んでいる白鷺の姿なのでしょうか。

そんなことを思って、この小さな花を見ていたら、何故か遠い昔の人の思いが、ふと分かるような、そんな気分になりました。

 

ちなみに、今回の白鷺の写真は、昨年の記事、『街に暮らす白鷺』と、『夕暮れの海で・・・』及び『遥かな空へ』の時に撮ったもので、以前の記事では使わなかった写真です。

 


野の苺 <蛇苺と構苺> [野草]

 

                               ヘビイチゴ  蛇苺  バラ科  ヘビイチゴ属

田圃の畦に見つけた、赤いヘビイチゴです。

花は、以前上野で見つけて撮ったのですが、ブログには載せそびれました。

 

でも、実が付いていた草からは、少し離れた場所に、ちょっと季節外れの花も見つけました。

 

 

 

           緑の草の中に実る

           赤い色をした野の苺

           その鮮やかな色の対比と

           瑞々しく可憐な姿に

           そっと手を伸ばすと

           あの幼かった日の

           遠い夏の野原の風を

           不意に指先に感じた

 

                    カジイチゴ 構苺 バラ科 キイチゴ属

キイチゴの仲間には、いくつもの種類があるようです。

最初は、この葉の形を見た時、百科事典で見た「モミジイチゴ」の葉とよく似ていたので、「モミジイチゴ」だろうと思い、昨年の記事にも、そう書いてしまっていました。でも、改めて調べてみると、花の形が違っているようです。

改めて、葉の形と花の形とを総合して調べてみると、これは「カジイチゴ」という種類に間違いないようです。
…ということで、今更ですが、昨年の記事も訂正致しました
誤った情報を載せてしまい、申し訳ありませんでした<m(_ _)m>

 

この写真は四月半ばに撮ったもので、少し時期を逸して、記事にするのを諦めていました。

 

そろそろ、実も色づき始めた頃かと、数日前に行って見ると、一つだけですが、まだ花が咲いていました。

上のヘビイチゴと同様、些か季節外れの花のようです。 

 

そして、カジイチゴの実は、まだ殆どが熟してはいませんでした・・・。

 

でも、ほんの僅かですが、すっかり熟しているものもありました。

昨年記事にした時には、上手く木漏れ日の逆光を受けて輝いている様子を撮れたので、この黄色い実を宝石のトパーズに見立てて『トパーズの煌めき』というタイトルを付けました。

でも今回の、あまり陽当たりの良くない藪の陰で撮った写真は、少しくすんだ琥珀(こはく)のようにも見えます。

 


初夏の風 <雛桔梗草> [野草]

津田沼駅から、先日の『ベニバナトチノキ』の咲いていた、「まろにえ橋」へ向かう途中の道。

歩道の脇に、直径5~6mmくらいの、小さな紫の花が咲いていました。

初めて見る花でしたが、昨年『キキョウソウ』を調べた時に図鑑で見た、『ヒナキキョウソウ』だとすぐに分かりました。

 

                 ヒナキキョウソウ  雛桔梗草  キキョウ科

『ヒナキキョウソウ』は、北米原産の帰化植物です。

今から、七十年以上も前に、横浜で見付かり、帰化が確認されているそうです。

 

 

           初夏(はつなつ)の風よ

           優しい風よ

           野の花をそっと

           揺らして吹く風よ


           遠い記憶を再び

           呼び覚ます風よ


           あんなにも空は

           どこまでも高く

           過ぎ去った日は

           果てしなく遠い


           初夏の風よ

           あの人の髪を

           (なび)かせ吹いた風よ

 

 

この『雛桔梗草』は、花びらが細いせいか、『桔梗』の仲間という感じはしませんでした。
でも、この雌しべは、『桔梗』とそっくりです。

 

この写真の雌しべの状態は、上の写真とは違っています。

これは、『雄蕊先熟(おしべせんじゅく)』という『桔梗』の持つ一つの特徴です。
そうして見ると、確かにこの花は『桔梗』の仲間なのだと分かります。

雄蕊先熟』に就いては、以前の記事に、少し詳しく書きましたので、宜しければそちらをご覧下さい。
http://blog.so-net.ne.jp/albireo/2005-09-01

また、『雄蕊先熟』というのは、ホタルブクロ等にも、見られる現象だそうです。

 


オヤブジラミ <雄藪虱> [野草]

                         オヤブジラミ 雄藪虱  セリ科 ヤブジラミ属

家から、そう遠くない農道脇の藪に、30cmから1m位の草丈で、ニンジンのような葉の草が沢山生えています。

何という植物なのか、ずっと気になっていましたが、図鑑を調べてもなかなか分かりません…。

ところが、先日 はてみさんブログの記事に、この小さな花の写真が掲載されていました。
でも、その時点では はてみさんも、名前が分からなかったそうです。

その後、僕の手元にある野草の図鑑の最後の一冊、「全国農村教育会」刊行の「ミニ雑草図鑑」(ISBN4-88137-062-6 C3645)に、漸くそれらしい植物を見付けました。

それは、「オヤブジラミ」というセリ科の植物です。

そして、はてみさんもネットで検索されて、「オヤブジラミ」ではないかというコメントを下さいました。

先日、改めて実物と比較して見て、やっぱり「オヤブジラミ」であると、確信しました。

この「オヤブジラミ」の近縁種に「ヤブジラミ」という植物があるそうです。

近縁種の「ヤブジラミ」の名は、この植物の種が人間の衣服や動物の体に付着して運ばれる、所謂「ひっつき虫」の一種であることに依ります。

その小さな種を、昆虫の「虱(シラミ)」に見立て、藪に生えることの多い植物あることから「藪虱(ヤブジラミ)」と名付けたのだと言う事です。

今回の記事の「オヤブジラミ」の名は、その「ヤブジラミ」より少し大柄なので、「雄藪虱」という事で名付けられたようです。

上の、3枚目の写真をご覧頂くと分かると思いますが、この(たね)は細かく硬い毛の先端が少し曲がって、マジックテープのようになっています。
これで、衣服や動物の毛にくっついて運ばれ、あちこちに広がって行く訳です。

ところで、実際には、このような植物の(たね)がマジックテープに似ているのではありません。
マジックテープを発明した人(確か、アメリカの人だったと思います)が、こういう種類の植物から思い付いたものだと言うことです。
真似をしたのは、あくまでも人間の方であるという事になります。

この小さな花は、直径約 2 mm 程です。

花の縁や蕾などが、赤みを帯びていることも、よく似た「ヤブジラミ」との違いの一つだそうです。

良く見れば、なかなか可愛い花なのですが、あの嫌われものの「(しらみ)」の名を付けられてしまうとは、ちょっとばかり可愛そうな気がします・・・。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ちなみに、僕は昆虫が好きですが、「シラミ」という昆虫については、実物は殆ど見たことはありません。
これは、戦後のDDTなどの薬剤の使用、及び公衆衛生観念の普及によって、シラミ等の発生が減って来たことによる為です。

しかし、先日のTVニュースによれば、ここ数年の間に、何故か小学生や幼稚園・保育園児に、アタマジラミの発生が増加しているということです。

その為、公衆衛生活動への新たな取り組みが必要となっているようです。

この件に就いては、「国立感染症研究所 染症情報センター」のHPに詳しく載っていました。
幼い子供さんがいらっしゃる方、この問題に関心のある方は、以下のサイトをご覧下さい。
↓「国立感染症研究所 感染症情報センター」のHP内の「シラミ症」に就いての記事
http://idsc.nih.go.jp/iasr/20/232/tpc232-j.html

↓「国立感染症研究所 感染症情報センター」のHPトップ
http://idsc.nih.go.jp/index-j.html

 


風の詩 [野草]

                   マツバウンラン 松葉海蘭  ゴマノハグサ科

マツバウンランは、北米原産の帰化植物です。

去年の初夏に、初めて見掛けて、この花がとても好きになりました。

薄紫の花は 1cm程しかなく、とても小さな花です。
その花が、20cmから 50cmくらいの高さになる、細くしなやかな茎に、穂状に咲きます。

この、独特な顔のような形の花を『仮面状花』と言うそうです。

 

数が少ないと、あまり目立たない花ですが、芝生の上などに群生すると、その花のあたりだけ、薄紫の靄がかかっているように見えます。

 

 

      穏やかな午後

      揺れる木漏れ陽

      遠ざかった日々の

      帰らない記憶

      何もかもが

      過ぎてしまえば

      すべてはただ

      懐かしい思い出

      聞えて来るものは

      吹き過ぎて行く

      優しい風の詩(うた)

 

マツバウンランの、聊かやせっぽちな感じのする茎は、微かな風にも大きく揺れてしまいます。

先月の記事「アスファルトに咲く花」で紹介した『ツタバウンラン』とは近縁種ですが、ツタバウンランは、花の輪郭がはっきりしているのに対して、マツバウンランはなんとなく輪郭がはっきりしません。

その為、写真には撮り難い花だと思います。

でも何故か、とても愛おしくなる花です。

 

 

        薄紫の儚げな花

        緩やかな午後の

        密やかなひと時

        優しく戯れる

        初夏の陽射し

        微笑みながら

        過ぎ去って行く

        夏色のそよ風

 


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