日本国宝展 -東京国立博物館- [展覧会]
10月15日から始まった、トーハクの「日本国宝展」を観て来ました。
特別展の会場内での写真撮影は、言うまでもなく一切禁止ですから、今回の記事にはあまり写真はありません。
興福寺仏頭展 [展覧会]
上野公園内、告知ポスター
東京藝術大学大学美術館で開催中の、「国宝 興福寺仏頭展」を観て来ました。
僕は、九月四日と九月十二日の二回観に行きましたが、白鳳時代の国宝の仏頭と、鎌倉時代の国宝の十二神将像を中心にした、奈良・興福寺の仏像・仏画の名品を展観出来る、素晴らしい展覧会でした。
開催期間 2013年9月3日(火)~11月24日(日)
博物館に初もうで-トーハク- [展覧会]
レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の実像 2 [展覧会]
現在、東京国立博物館で開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の実像」は、本館第五室に設けられた第一会場での「受胎告知」に続いて、博物館の奥にある平成館が第二会場に充てられています。
ここでは、万能の天才と言われているレオナルドの秘密に迫ろうとする展示が行われています。
その展示内容は、フィレンツェのウフィツィ美術館で、今年の一月まで開催されていた企画展が元になっているそうです。
そのテーマは、
「かたち」のとらえ方
万物の「運動」
絵画への結実
という、3つの大きな枠組みから出来ています。
第二会場前の告知ポスターには、有名な「ウィトルウィウス的人体図」がデザインされています。
このデッサンの題名にある「ウィトルウィウス」とは、ローマ時代の建築家の名前です。
これは、正方形と円の中に、人体を配置し、幾何学的な原理で人体の比率を探ろうとして、描かれたものだといいます。
(注: このデッサンの実物は、今回は展示されていません)
平成館の二階にある展示室へ向かって、エスカレータ(あるいは階段)で上がって行くと、正面の窓の前に、レオナルドが考案した人間が飛行する為の翼を、実際に作って組み立てた模型が吊り下げられています。言うまでもなく、その翼で本当に飛べる訳ではありませんが・・・。
しかし、それはまさに鳥の翼を仔細に研究した成果である事が、明らかに見て取れる姿をしています。
でも、写真撮影は出来ませんでしたから、この展覧会を観た帰りに不忍池で撮った、些か近い形に翼を広げたユリカモメをご覧下さい<m(_ _)m>
この展覧会では、レオナルドの残した多くの手稿の最新の研究成果に沿って、そこに描かれたデッサンやメモを元に作られた、様々な再現模型やビデオ映像を用いて、更にはマルチメディアを駆使した展示が行われています。
聖アンナと聖母子 ルーブル美術館蔵
展示の最後は、レオナルドの研究成果の「絵画への結実」として、視覚や・光と影の捉え方、そして「空気遠近法」と呼ばれる技法に就いての具体的な解説を見ることが出来ます。
上に挙げた「聖アンナと聖母子」のぼやけた背景も、空気遠近法の技法で描かれています。
今回の展覧会では、残念ながら絵画作品の実物は、第一会場での「受胎告知」以外は展示されていませんが、多くの高精細な複製画によって、レオナルドの絵画作品の全体像を知ることが出来ます。
また「受胎告知」に次ぐ、展示の目玉として「伝・レオナルド・ダ・ヴィンチ」の作品とされる「少年キリスト」の頭部像も、この第二会場に展示されています。
テラコッタ(焼成粘土)製のその像には、レオナルドの作品であると言いきれる確証はないそうです。
しかし、この作品をつぶさにご覧になられたという、日本での本展覧会の監修をされている、恵泉女学院大学准教授の池上英洋さんは、「少なくとも「伝レオナルド」とされる幾つかの彫刻作品の中で、レオナルドの真作である可能性の高い作品だといえるだろう」(本展図録 P45)として、「現時点では、本作を「レオナルドかその周辺の人」の手になるものとしておきたい」と、述べておられます。
と言うことで、見学に行かれる方は、この作品も是非良くご覧になることをお奨めします。
付記
今回の展覧会の内容は、とても素晴らしいものであると思いました。
ただ、僕はレオナルドの手稿などを見るうちに、一つの心に引っ掛かるものを感じ続けています。
それは、今回の展示ではあまり触れられていないのですが、レオナルドが多くの兵器や要塞の素描を残していることです。
僕はもとより、戦争や兵器を好むものではありません。
しかし、レオナルドがその手稿に、多くの兵器を描いているからと言って、直ちに批判的な見方をしようとも思いません。
人は、どんなに先進的に技術を持ち、斬新な思考能力を持っていたとしても、決してその「時代の子」であることからは、逃れようもないことです。
それでも、何故、兵器なのか?という疑念が、僕の心に蟠り続けていました。
ところが、先日書店で手にした一冊の叢書に、その答の一端が記されていました。
それは、先程引用させて頂いた、池上英洋准教授の書かれた「レオナルド・ダ・ヴィンチと受胎告知」(平凡社ライブラリー 京都大学 岡田温司教授との共著)という新刊書でした。
私生児として生まれたレオナルドは、フィレンツェでも当時最大の工房で多くの技術を学びながらも、あまりうだつの上がらない日々を過ごしていたようです。
しかし、三十台の頃、「ミラノへ仕官し、おもに軍事面を期待される技師として採用される。そう自ら売り込んだからだ」(「レオナルド・ダ・ヴィンチと受胎告知」P178)ということです。
つまりは、生活の糧を得るため、あるいは職人として世に出るためだったという事でしょうか。
それにしても、この事実は、多分暫くの間は、僕の心から消え去ることがないような気がします。
しかし、そんなことが気になるのは、類い稀な「平和憲法」を頂く現代の日本に住む僕が、やはり「時代の子」であるということなのかも知れません・・・。
尚、最後の桜の写真は、東博の構内に咲いていた、吉野枝垂です。
参考図書
展覧会図録
受胎告知 レオナルド・ダ・ヴィンチ -天才の実像 1 [展覧会]
上野の、東京国立博物館で開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチ-天才の実像-」を、観に行って来ました。
この展覧会の主要展示品は、何と言ってもレオナルドの絵画「受胎告知」です。
東博での、最近の企画展は殆どの場合、最も新しい建物である「平成館」で開催されます。
しかし、今回は展示が二つの会場に分かれていて、第一会場は本館第五室で、ここに「受胎告知」が展示されています。
第二会場は平成館で「レオナルド・ダ・ヴィンチ-天才の実像-」の展示となっています。
「受胎告知」は、イタリアのウフィツィ美術館の所蔵品で、今回の日本での公開に際して、最初に配布された展覧会の告知用チラシには、「館外初公開!」とされていました。
しかし実際には、第二次世界大戦以前に、パリとミラノで公開されていたということです。
そして、この事実は今回の日本での公開に際して、改めて分かったことだと言います。
そう言えば、僕は以前こんな話を聞いたことがあります。
かつてフィレンツェを支配していたメディチ家の、最後の女性当主が、様々な文化財を次のフィレンツェの支配者となる市民に託すに当り、「これらの宝物を、一切この町から出してはならない」と告げたと・・・。
もしかすると、そうした伝承が、このような誤解を生んだのかも知れないと、僕はふとそう思いました。
縦98センチ、横217センチのこの絵画は、レオナルドがほぼ単独で描いた初期の作品とされています。
この作品の特徴は、細部まで綿密に描かれた天使の足下の花々、また衣服のドレープ(襞)の質感。
そして、ルネッサンス期の遠近法の採用など、様々な見所に溢れています。
しかし、その素晴らしさは、やはり現物を見て頂かなくては、説明のしようもありません。
天使は、彼女のところに来て言った。「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。」マリアはこの言葉に戸惑い、いったいこの挨拶は何のことかと考え込んだ。すると、天使は言った。「マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。その子は偉大な人になり、いと高き方の子と言われる。神である主は、彼に父ダビデの王座をくださる。彼は永遠にヤコブの家を治め、その支配は終わることがない。」マリアは天使に言った。「どうして、そのようなことがありえましょうか。わたしは男の人を知りませんのに。」天使は答えた。「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる。あなたの親類のエリサベトも、年をとっているが、男の子を身ごもっている。不妊の女と言われていたのに、もう六か月になっている。神にできないことは何一つない。」マリアは言った。「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」そこで、天使は去って行った。
日本聖書協会 新共同訳聖書 新約聖書 「ルカによる福音書」 1.26-38
以上が、新約聖書に描かれた、「受胎告知」の場面の全文です。
新約聖書には、イエスの伝記を記した四つの福音書が含まれていますが、マリアへの「受胎告知」の場面が書き記されているのは、「ルカによる福音書」だけです。
それでも、「受胎告知」は、西欧の古典的な絵画には数多く描かれ、主要な画題の一つとなっています。
「受胎告知」を描く絵画で、大天使ガブリエルは白い百合の花を手にしていることが多いようです。
この白百合は、女性の純潔を示す象徴として描かれていますが、上に引用した聖書の文章には、そうした記述はまったくありません。
尚、「あなたの親類のエリサベト」が、身ごもった男の子は、後にイエスに洗礼を施すことになる、「洗礼者ヨハネ」です。
この絵の中で、マリアは書見台の前に座って、書物を読んでいます。
これも、正典としての聖書には何も記されていませんが、この書物は旧約聖書の「イザヤ書」であるとされています。
そこには、このように書かれています。
見よ、おとめが身ごもって、男の子を産み
その名をインマヌエルと呼ぶ。
日本聖書協会 新共同訳聖書 旧約聖書 「イザヤ書」7.14
インマヌエルとは、「神われらと共に」という意味で、救世主を指しているそうです。
それはつまり、旧約聖書に書かれた預言が、ここに成就することを意味しています。
聖書には「正典」として編纂されたものの他に、多くの「外典」や「偽典」とされる文献があります。
これらの文献の中には、参考資料として、存在を許されたものもありますが、例えば「ユダの福音書」のように、その存在を抹殺されてしまった文献も、多数含まれています。
面白いことに、聖母マリアに関する記述は、何故かむしろ外典に多く描かれているようです。
また、13世紀のドミニコ会士で、ジェノバの大司教となったヤコブス・デ・ウォラギネがまとめた「黄金伝説」と呼ばれる聖人伝を集成した書物があります。
聖母マリアに関する記述は、ここにも詳細に書かれており、聖母マリアを描いた絵画作品には、かなりの影響を与えているようです。
西洋美術に隠された、様々な寓意や象徴。それは、異邦人には容易く理解できることではないのかも知れません。しかし、今回のような特別な機会をきっかけにして、そうしたことを色々と調べてみるのも、なかなか楽しいものです。
ところで、僕はレオナルドの「受胎告知」に描かれたものの中で、大天使ガブリエルの背中の翼に目を惹かれました。
レオナルドは、自然界の様々な事象に就いても、相当に鋭く観察していたようです。
まだ若い頃とは言え、レオナルドは恐らく、実際の鳥の翼に関して、様々な観察を行ったのではないかと思います。
さて、今回の展示に就いてですが、会期が長いせいか、今のところ土日でも思ったほどは、混雑していません。
但し、警戒はとても厳重で、金属探知機によるチェックや、所持品のチェックも、相当に厳しく実施されています。
その代わり、「受胎告知」の展示室の隣にある「寄贈者顕彰室」に、通常展示してある寄贈品を取り払って、沢山のコインロッカー(後から、100円コインが返却されるので、実質無料)が、置かれていますので、所持品はそこに預けて、身軽な状態で展観されることをお奨めします。
そして、本当に興味のある方は、是非早い機会に、観に行かれることを、併せてお奨めします。
次回、またはその次の記事で、第二会場の展示に就いて、多分ご紹介するつもりでおります。
参考URL
参考図書
『レオナルド・ダ・ヴインチ -天才の実像-』
展覧会 図録
特別展 仏像 東京国立博物館 [展覧会]
上野の東京国立博物館で開催中の「特別展 仏像」を観て来ました。
と言っても、実は三回目です。
前に行った時に、記事にしようと思ったのですが、時間的余裕がなく断念しました…。
この展覧会は、一本の木から彫り上げた「一木彫(いちぼくちょう)」の仏像を140体以上集めた、仏像好きには見逃せない企画展です。
特に、国宝の「菩薩半跏像-京都・宝菩提院願徳寺-」と「十一面観音菩薩立像-滋賀県・向源寺-」は、上の写真の告知看板にも、大きく紹介されている今回の展示の目玉とも言える仏像です。
しかし、京都・宝菩提院願徳寺の「菩薩半跏像」(看板、右端の像)は、11月5日に展示期間を終え、現在は11月7日から展示の滋賀県・向源寺の「十一面観音菩薩立像」(看板、左端の像)が展示されています。
前に二回行った際には、京都・宝菩提院願徳寺の「菩薩半跏像」を拝見して来ましたが、今日の目的は滋賀県・向源寺の「十一面観音菩薩立像」でした。
この十一面観音菩薩立像は、滋賀県高月町の「渡岸寺観音堂(どうがんじかんのんどう)」に安置されている観音像で、白洲正子・井上靖・土門拳などの人たちが、その美しさを称えたこともあり、十一面観音像としては特に有名な仏像となっています。
僕にとっても、興福寺の阿修羅像、醍醐寺の如意輪観音半跏像(有名な国宝や重要文化財の像ではなく、あまり知られていない可憐な小像です)と共に、とても心惹かれていた仏像でした。
しかし、今までお会いする機会がなく、ずっと憧れていたのですが、今日初めて会うことが出来ました。
と言うことで、その美しさ素晴らしさを、今の時点ではとても言葉に現せません。
興味のある方は、以下のHPで是非写真だけでもご覧下さい。
東京国立博物館のHP
http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?pageId=X00/processId=00
高月町歴史民俗博物館のHP(こちらでは、大きな写真が見られます)
http://www.biwa.ne.jp/~kannon-m/douganji-1-1.htm
今日は、小雨がふる生憎の天気でした。
博物館の大きなユリノキ(写真右の大木)も、大分色付き始めていたのですが、残念ながら写真にはその色も上手く写りませんでした。
博物館の構内では、カツラの木も黄葉していました。
こちらも、あまりいい色が出ていませんが…。
おまけの写真です。
不忍池の辺にいた、可愛いスズメ。
小雨に濡れながらも、元気よく飛び跳ねていました。
池には、鴨たちも来ていました。
少しですが、勿論写真も撮って来ましたので、明日には載せようと思います。
世界遺産からのSOS [展覧会]
上野にある、東京芸術大学の大学美術館で、「世界遺産からのSOS‐アジア危機遺産からのメッセージ」と言う、写真展が開かれています。
戦争・自然災害・世界のグローバル化。
それらが、様々な世界遺産を危機に陥れているといいます。
例えば、ヒンズー教と仏教に対する厚い信仰に支えられ、保たれて来た、
ヒマラヤの町カトマンズ。
衛星放送や、インターネットがもたらす過剰な情報に翻弄される人たちの中には、
伝統的な生活や、信仰を見失う者もいて、古い寺院が荒廃に瀕しているそうです。
その他にも、様々な危機的状況にある世界遺産。
中でも、僕の心に響いたのは、タリバンとアルカイダによって破壊された、
バーミヤン大仏の在りし日の姿でした。
そして、展示されていた バーミヤンに暮らす人々の写真の中に、親戚の結婚式に
お祝いの贈り物の山羊を連れて、おめかしをして出掛けるという可憐な少女の姿がありました。
その写真には、どこにも戦争の状況は写ってはいません。
でも、僕はその写真を見て、涙が出そうになりました。
その背後にある、環境にも人にも危機的な状況。
そこに生きている、あるいは生きて行かねばならないその少女の、
可憐な、しかし強いまなざし・・・。
会場を一回りして来た出口の近くに、募金箱が置かれていました。
その側に、さっきの少女の写真が、改めて展示されていました。
僅かですが、僕はそこに募金をして、「世界遺産からのSOS」の会場から出て来ました。
外に出て来ると、どこにも瓦礫などない、平和な日本があります。
でも、日本もまた、本当に豊かで繁栄しているのでしょうか・・・。
東京国立博物館の向かいの広場から、「ハレルヤ・・・」という
賛美歌が聞こえて来ました。
上野公園の植え込みの中に、ブルー・シートのテントを張って暮らす
ホームレスの人たちに、食事を届けている韓国系キリスト教会の人たちが
集会を開いているのでした。
ホームレスは、そうなった人たちの責任だと考える人もいます。
でも、僕は単純にそうだとは思いません。
実態の解らないグローバリズムから、いつの間にか生じた二極化。
そんな状況で、取り残されてしまう人がいるとしたら、
それは、政治の責任でもあるはずです。
ほんの少しの、切ない思いを抱いて、
僕は、東京国立博物館に展示された仏像の前に立っていました。
この切なさを消してくれそうな、優しい表情をした、十一面観音の前に・・・。
こんな絵本の展覧会も開かれていました。
まだ、随分先までやっているので、また今度ということにしました・・・。
レオナルド・ダ・ヴィンチに関する二つの展覧会 [展覧会]
現在、関東地方ではレオナルド・ダ・ヴィンチに関る、二つの展覧会が開かれています。
一つは、僕の自宅から比較的近い「千葉市美術館」の『ミラノ展 -都市の芸術と歴史-』と、
もう一つは、東京 港区の六本木で開催されている『レオナルド・ダ・ヴィンチ展』です。
その二つの展覧会を、11月3日と11月5日に観に行って来ました。
千葉市美術館『ミラノ展 -都市の芸術と歴史-』
平成17年10月25日(火)~12月4日(日)
この展覧会は、千葉市美術館開館10周年記念展として開催されているもので、イタリア ミラノ市の美術館と博物館16館の所蔵する絵画、彫刻等を展示しています。
今回の展覧会では、ローマ帝国時代のキリスト教美術から、現代美術までを幅広く展示しており、ダ・ヴィンチの作品はその目玉という感じで展示されていました。
↓こちらのサイトで、展示品の一部の画像を見る事が出来ます。
http://www.city.chiba.jp/art/exhibition/milano.html
今回のポスターにもなっている、レオナルド・ダ・ヴィンチの『レダの頭部』は、レオナルドの『レダと白鳥』という、現在は失われた絵画の素描とされています。
この作品は、一部にレオナルドの弟子による加筆がされている可能性もあると言われていますが、全体的にはレオナルドの真筆とみなされています。
20cmX15.7cmという小さな作品ですが、細かく編まれた髪や、独特な表情が美しいデッサンでした。
レオナルドの作品としては、もう一つ『キリストの頭部』というチョークとパステルによる作品が展示されています。
この『キリストの頭部』は、レオナルドの大作『最後の晩餐』の準備素描であるという見方がされています。
こちらも、弟子による加筆が加えられているということです。
しかし、このことはレオナルドの弟子たちが、常に師匠の作品を熱心に研究していた事の証拠であると見られています。
*この二作品は、上記のサイトで見る事が出来ます。
森アーツセンターギャラリー『レオナルド・ダ・ヴィンチ展』
平成17年9月15日(木)~11月13日(日)
こちらは、『レオナルド・ダ・ヴィンチ展』と銘打っていますが、実際にはレオナルドの直筆ノートである『レスター手稿』の展覧会です。
『レスター手稿』は、レオナルド・ダ・ヴィンチ晩年の研究ノートで、様々な化学的な観察や考察をまとめた、非常に貴重な直筆文書です。
↓こちらのサイトでは、解説等をを見る事が出来る他、壁紙やペーパー・クラフトもダウンロード出来ます。http://www.leonardodavinci.jp/index.html (このサイトは閉鎖されました)
『レスター手稿』は、マイクロソフト社のビル・ゲイツ氏夫妻の個人所蔵となっていますが、一年に一度だけ、一ヶ国でのみ公開を許可しているということです。
この展覧会ではまず最初の部屋に、幾つものアクリル製の実験装置が置かれていました。
それらの装置は、『レスター手稿』の中に書かれている、レオナルドの観察に基づいて作られたもので、水流の変化や、波紋の干渉、サイフォンの原理などを、来場者が実際に手に触れて観察できる仕組みになっています。
僕が行ったのは土曜日だった為、子供を連れた家族が目立ちました。
子供たちがそうした装置に触れて、楽しそうにしている様子を見ると、こちらも楽しい気分にさせて貰えます。
さて、肝心の『レスター手稿』の展示ですが、貴重な展示品の保護の為、展示室は暗く、展示された『レスター手稿』にも、微弱な光が間歇的に当てられるという、特異な展示方式です。
しかし、『レスター手稿』のそれぞれの紙葉毎に、裏表ともに見えるように個別に立てて展示してあり、非常に見易い配慮がなされています。しかも、個別の展示で、どこから見ても良いようになっているため、酷く混み合ったり、行列を作ることなく比較的楽に展観することが出来ました。
『レスター手稿』が書かれた年代は、1505年及び、1507~1508年で、レオナルドが53歳頃の事だということです。
書かれた文字は、研究者でない限りは、到底読み解く事など出来ませんが、500年も前にレオナルド・ダ・ヴィンチよって書かれたものだと思うだけで、とてもワクワクした気分に浸ることが出来ました。
今回の展覧会の内、『ミラノ展』の方は、「千葉市美術館」の会員になっているので、開催通知を貰っていましたが、六本木の『レオナルド・ダ・ヴィンチ展』の方は、つい先日 lapis さんが『レオナルド・ダ・ヴィンチに関する興味深いサイト』という記事で紹介されていたことで初めて知りました。
以前、紹介した『植物画世界の至宝展』の時は、ナナさんから展覧会の開催情報を頂き、今回は lapis さんから情報を頂きました。
お二人ともそれぞれ、東京からは離れた場所にお住まいの方たちです。
僕は近くに住んでいながら、不覚としか言いようがありませんが、ブログのお陰でお二人の方から情報が得られたことに、とても感謝しています。
*花の写真は、『レオナルド・ダ・ヴィンチ展』会場ビルの、エントランス付近に咲いていた『シクラメン』です。
久し振りに行った六本木からの帰り、明治神宮外苑の銀杏並木に寄って見ました。
黄葉で金色に染まった風景を、僅かに期待して行ったのですが、まだまだ黄葉には程遠い状態でした・・・。
これも久し振りに見た、夕暮れ間近の東京タワーです。