星めぐりの歌 [宮沢賢治]
星めぐりの歌
宮沢賢治
あかいめだまのさそり
ひろげた鷲のつばさ
あをいめだまの小いぬ
ひかりのへびのとぐろ
オリオンは高くうたひ
つゆとしもとをおとす
アンドロメダのくもは
さかなのくちのかたち
大ぐまのあしをきたに
五つのばしたところ
小熊のひたひのうへは
そらのめぐりのめあて
雨ニモマケズ [宮沢賢治]
校本宮澤賢治全集 資料第五(復元版宮澤賢治手帳) 昭和五十八年十月一日 筑摩書房刊
通常、「雨ニモマケズ」という仮の題名で呼ばれている、宮沢賢治が晩年に近い昭和六年頃に所持していた一冊の手帳に書き残した一続きの文章は、一般的には「詩」として認識されています。
僕も、最初に(恐らくは中学校の教科書で)、この「雨ニモマケズ」を読んだ時には、「詩」として認識していた記憶があります。
けれども、高校生の頃に、新潮社版の「日本詩人全集」の第20巻として刊行された「宮沢賢治」の巻に、「手帳より」として、括弧付きで(雨ニモマケズ)の題名で掲載されていたものを読み、それが本来は11月3日(昭和6年)の日付と共に、一冊の小さな手帳に記されていたものだと知った瞬間、これは本当に「詩」として書かれたものなのか?という疑念が、僕の心を占めたことを、はっきりと記憶しています。
それは、まったく直観的なもので、その当時としては確たる根拠もないものでした。
しかし、賢治の代表的な研究者である、天沢退二郎さんと入沢康夫さんは、それぞれに「雨ニモマケズ」に就いて、「手帳の五一―五九頁に書き付けられた無題の詩あるいはメモ」(宮沢賢治詩集・新潮文庫・天沢退二郎編)、「手帳の一冊に記されたあのあまりにも人口に膾炙(かいしゃ)した章句(作品? 自戒自省のメモ? 祈り?)・・・」(「ヒドリ」か、「ヒデリ」か 宮沢賢治「雨ニモマケズ」の中の一語をめぐって・書肆山田・入沢康夫著)などと、記されています。
また、大学院時代には宮沢賢治の作品に関する論文を書かれておられたという、So‐netブログ仲間の今は亡き lapis さんも、嘗てブログに書かれていた「雨ニモマケズ手帳と賢治の絵画」という記事に、「宮沢賢治の「雨ニモマケズ」は、日本でもっとも知られた詩の一つであるが、これはもともと手帳に書かれたメモであった。」と記されていました。
冒頭に掲載した写真が、その賢治の手帳です。
但し、本物ではなく、かなり精巧に作られた復元版(レプリカ・複製品)です。
僕の手元にあるこの手帳は、昭和50年代に刊行された「校本宮澤賢治全集」(筑摩書房)に、資料として付けられていたものです。
今年(2012年)の3月から4月、横浜のデパートで開催されていた「宮沢賢治・詩と絵の宇宙 雨ニモマケズの心」展に、本物の手帳が会期当初の短期間のみの限定で展示されることを知り、この復元版を持って、観に行って来ました。(経年劣化が激しく、一定期間展示後はレプリカを展示)
展示されていたのは、「雨ニモマケズ」の冒頭部分が書かれた、見開きの二ページ分だけですが、その場で復元版の手帳と見較べて見ると、復元版は装丁等は新品の状態ですが、中身は汚れや染みに至るまで、ほぼ忠実に再現されていることが分かりました。
以下に、僕の手元にある「雨ニモマケズ手帳」復元版の51ページから60ページまでの、引用画像と、そのページ毎に対応した翻刻文を掲載して置きますので、興味のある方はご覧下さい。