金と赤とに染まる樹 [樹木]
秋になると、その大きな樹は、眩いばかりの金と赤とに染まります。
秋の日の光を受けて、輝いているのは『ユリノキ』の葉です。
ユリノキの黄葉は、最初に mimimomoさん、続いて tanaka-ma3さん のブログで拝見して以来、多くの方の記事に載せられていましたが、僕もいつも見に行く「東博」のユリノキの黄葉を、やっと見て来ました。
東博(東京国立博物館)のユリノキに就いては、以前の記事に多少詳しく載せましたので、半年以上も前のものですが、宜しければそちらをご覧下さい。
http://blog.so-net.ne.jp/albireo/2005-05-25-1
樹から舞い落ちた木の葉は、池の水の上をゆっくりと漂って行きます。
同時に落ちて来た種を、そっと押して行くかのように、静かに流れて行くのでした。
ユリノキの近くには、少しばかり季節外れの、萩の花が咲いていました。
ユリノキの周りに散り敷いた、黄色い落ち葉の色の中で、少し儚げに見える萩の花でした。
十一月二十三日、祝日の「東京国立博物館」は、大勢の人で混み合っていました。
本当は「北斎展」を観に行ったのですが、会場の平成館の前で、一時間待ちと言うことだったので、また後日と言うことにして、 同時に開催中だった「華麗なる伊万里、雅の京焼」と、庭園の木々を見て帰って来ました。
山茶花の咲く頃 [樹木]
山茶花を見ると、子供の頃に食べたはずの
花の形をした、懐かしい和菓子を思い出す
それは、素晴らしく美味しい和菓子だった
味までもが、はっきりと記憶に残っているのに
その後一度も、それと同じ山茶花の和菓子には
出会うことが出来ないままでいる
同じ姿の和菓子を見る度に、買ってみたこともあった
けれども、どれもあんなには美味しくなかった
あの山茶花の和菓子は、僕の記憶の世界にだけ
存在している、幼い日の幻想なのかも知れない
これからも、多分二度とは出会えない
今は、そんな気がしている
子供の頃食べて、とても美味しかったものというのは、記憶の中でその味が増幅して、実際以上に美味しいものになってしまうのかも知れません。
多分、子供の頃食べたものと同じ和菓子を、今食べることが出来たとしても、あんなに美味しくはない、ごくありふれた和菓子に過ぎないのだろうと思います。
山茶花と言うと、その幻の和菓子の他には、やはり詩人 巽 聖歌(たつみせいか)の「たきび」の歌を思い出します。
かきねの、かきねの
まがりかど、
の、あの歌ですが、2番の歌詞に
さざんか、さざんか
さいたみち、
と、山茶花が出て来ます。
僕は、この歌の最後の
「あたろうか。」
「あたろうよ。」
そうだんしながら
あるいてく。
という歌詞が、何故かとても好きです。
昔は、山茶花の咲く頃は、同時に焚き火の季節でもあった訳ですが、今はダイオキシンや火災の問題で、「おちばたき」そのものが、なかなか出来ない時代になってしまいました。
時折、焚き火の炎の、優しい暖かさをふと懐かしく思ったりもします。
サザンカ 山茶花 ツバキ科 ツバキ属
秋の色 その二 [樹木]
ハナミズキ 花水木 ミズキ科 ミズキ属
前の記事では、紫を秋の色だと書きましたが、もうひとつの秋の色は、色づき始めた、木の葉の色だと思います。
ハナミズキは、葉も実もそれぞれに美しい赤に染まります。
ハナミズキ 花水木 ミズキ科 ミズキ属
赤い葉と赤い実の、その色を際立たせる秋空の青もまた、秋の色かも知れません。
以前、写真を載せたハナミズキの花は、以下の記事の中で、今も咲いています。
http://blog.so-net.ne.jp/albireo/2005-04-22-1
http://blog.so-net.ne.jp/albireo/2005-04-24
ニシキギ 錦木 ニシキギ科 ニシキギ属
秋の色は枯葉の赤
秋の色は秋空の青
秋の色は寂寥の白
遷ろう時の彼方へ
吹き抜けて行く風は
枯葉の色にも
青空の色にも
染まることなく
永遠の高みへと
駆け昇って行く
秋の風は孤独の色
ケヤキ 欅 ニレ科 ケヤキ属
ケヤキも、黄色に染まります。
葉が小さく、あまり目立たない場合もありますが、黄葉した葉が風に追われて、足元を滑って行くのを見ると、秋が深まって行くのを感じます。
イチョウ 公孫樹・銀杏 イチョウ科 イチョウ属
イチョウも、少しですが黄葉し始めました。
先日行ってみた、明治神宮外苑の銀杏並木は、まだ緑でしたがこちらでは一部の木が色づき始めました。
ヤマモミジ 山紅葉 カエデ科 カエデ属
紅葉と言えば、なんと言ってもモミジとカエデです。
こちらも、まだ本格的ではありませんが、少しづつ赤く染まり始めていました。
何れまた、もっと沢山の紅葉を撮りに行きたいと思っています。
上の詩に、秋の色として「白」を挙げましたが、実は「陰陽五行説」では、秋の色として「白」が当てられています。
喫茶去 <きっさこ> [樹木]
チャ 茶 ツバキ科 ツバキ属
『お茶』です。
中国原産と言われ、日本には平安時代初期に入唐僧によって、もたらされました。
しかし、当時は儀式等に使われるに留まり、日常の飲み物としては普及しなかったようです。
それが、鎌倉時代になって宋から帰国した禅僧・栄西によって、茶の苗と禅宗の茶の作法が、改めて日本に伝えられました。
その木は、肥前や筑前に植えられ、やがて京都の栂尾 高山寺(とがのお・こうざんじ)の明恵上人(みょうえしょうにん)に贈られます。
それ以降、茶の栽培と抹茶を飲む習慣が、広まって行ったと伝えられています。
明恵上人ファンの僕は、そんな話を聞いて、尚更お茶が好きになりました。
『喫茶去(きっさこ)』という禅語があります。
趙州(じょうしゅう)和尚という、1,000年ほど前の中国の禅僧は、訪ねて来る人の誰にでも『喫茶去』と言ったと伝えられています。『喫茶去』とは、「お茶を召し上がれ」という意味だそうです。
「お茶を召し上がれ」と言われて、ただ無心に茶を飲む事が出来れば、それは一つの悟りの境地に達しているのだと言われます。
お茶を出され、「品よく飲まなければ」「こぼさないようにしないと・・・」「高そうな茶碗だな~」・・・そんなことを考えず、ただ無心に飲むことは、本当はとても難しいことです。
禅宗の『茶礼(されい)』と呼ばれる作法は、「ただ、無心に茶を飲む」という境地を得る為の、修行の一つとして行われていました。
日本の『茶道』は、その『茶礼』を元にして、独自に発展したものと言われています。
茶道の大成者である千利休が、「茶の湯とは、ただ湯をわかし茶をたてて飲むばかりなる本(もと)を知るべし」と言っているのも、「ただ、無心に茶を飲む」という境地に至ることの大切さを説くものと言えると思います。
お茶の花の蕾は、抹茶入りの和菓子のような色をしていました。
僕は、正式な茶道の作法で、抹茶を頂いたことはありません。
でも、奈良や京都のお寺などで飲む抹茶は、とても好きです。
けれど、抹茶入りのお菓子というのは、何故かあまり好きではありません・・・。
もう、お茶の実もなっていました。
この実の中に、1個~3個の種が入っていて、それを植えると容易に繁殖するそうです。
aoさんと、penpenさんも、綺麗なお茶の花の写真を、記事にアップされて居られましたので、リンクさせて頂きます。
ao さん
http://blog.so-net.ne.jp/ao66/2005-10-07
penpen さん
http://blog.so-net.ne.jp/buffy/2005-10-08
白い夾竹桃 [樹木]
キョウチクトウ 夾竹桃 キョウチクトウ科 キョウチクトウ属
夾竹桃は、インド原産の植物で、江戸時代中期には、既に日本に渡って来ていました。
明治時代になって、西洋夾竹桃という地中海原産のものが入って来ますが、これは植物学的にはインド原産の夾竹桃の変種というべきものであるそうです。
夾竹桃には芳香があり、西洋夾竹桃には香りがないと言うことですが、この花に香りがあるのかどうか、高い所にしか咲いていなかったので、分りませんでした・・・。
花の色は、赤・白・黄・ピンク・オレンジとさまざまあり、園芸品種も多いということです。
花期は6月から9月ですから、この木も夏の名残の花を咲かせていたのでしょう。
青空に向かって
手を伸ばしたら
少しだけ夢に
近付くだろうか
あの雲に向かって
祈ったならば
悲しみが一つ
消えるだろうか
吹いて行く風に
願いを込めよう
いつかのぞみが
叶うようにと
夾竹桃の白い花は、秋空の青さに映えて眩いほどに輝いて見えます。
やがて、青空に雲が広がって行くと、白い花は雲の白に溶けて行きました。
秋の日 [樹木]
秋は 空が青い季節
木の枝が天に向かって
大きく背伸びをする
まだ立去りかねている夏が
そこかしこに名残の花開かせ
過ぎ行く時を惜しんでいる
秋は 暖色系に染まる季節
木の葉が色を変えて
日差しも穏やかになる頃
やがて すっかり夏が過ぎ去ると
息を潜めていた秋の風が
待ち兼ねた実りの時を連れて来る
サルスベリ 猿滑り ミソハギ科 サルスベリ属
花期が長いことから、『百日紅(ひゃくじつこう)』という名でも呼ばれます。
以前紹介した『盆花』とも呼ばれる『ミソハギ』の仲間だということです。
『ミソハギ』は草ですが『サルスベリ』は、勿論木(落葉小高木)です。
『猿滑り』の名は、幹や枝の皮が剥がれやすく、このように滑らかになることに由来します。猿が登ろうとしても、滑って登れないに違いない、というのですが・・・。
本当に猿が登れないかどうかは、猿を連れて来て実験してみないと分りませんね・・・。
この木は腐り難いので、カヌー、土木用の杭、床柱などに使われるということです。
『百日紅』という名前ですが、ピンクの花も白い花もあります。
この白い花には、もう実も一緒になっていました。
赤も白も、それぞれに青空に映えて見えます。
不老長寿の薬 [樹木]
クコ 枸杞 ナス科 (小低木)
クコは、昔から不老長寿の薬効があると言われている、ナス科の小低木で、日本中に分布している植物です。
今は、住宅地が増えて、減ってしまいましたが、僕が子供の頃には、家の近くには沢山のクコが生えていました。
僕がいつも利用する駅は、総武線の「津田沼駅」なのですが、この「津田沼」というのは、この近辺の三つの地名を併せて作られた名前です。
それは、谷津・久々田・鷺沼の三つで、その内の「久々田(くぐた)」という地名は、クコが多く生えていた為に「くこた」と呼ばれていたものがなまって「くぐた」になったという説があります。
若葉は、おひたしにすると美味しかった記憶があります。
しかし、アブラムシが付きやすく、自生している木には、葉のほとんどが食い尽くされているものも、よく見掛けます。
クコには、可愛い赤い実が、いっぱいなります。
実は、沢山集めて、焼酎に漬け込み「枸杞酒」を作るのに使います。
実を、生で食べることもできますが、これはあまり美味しいと言えるものではありません。
(インターネットの自然食品のサイトなどを見ると、中国から輸入したクコの実が紹介されていて「甘酸っぱくて美味しい」と書いてあったりします。他の植物でもよくあることですが、日本のものとはいくらか種類が違うのかも知れません)
クコは実が実りはじめてからも、花が咲いて、次々と実って行きます。
クコは、葉・果実・根の皮などに、ベタインという成分を含むため、強壮薬として利用されるそうです。
葉は「枸杞茶」にもなります。
果実と根の皮は、他の薬に配合されて、果実は高血圧や肝臓病、腰や膝の痛みなどの治療に、また、根の皮も解熱薬などに利用されるようです。
そう言えば、市販の健康酒の広告などにも「枸杞」の文字を見た事があるような気もします。
紅白の萩 [樹木]
ミヤギノハギ 宮城野萩 マメ科 ハギ属
以前紹介した『ヤマハギ』よりも、葉が細長く、葉先が尖っていることが見分けるポイントです。
前の記事→ http://blog.so-net.ne.jp/albireo/2005-08-10
前の記事の時は、『ヤマハギ』かどうか、些か自信が無かったのですが、この『ミヤギノハギ』と見比べると、花の感じも随分違っています。
前の記事の『ヤマハギ』の写真には、細長く尖った葉も見えるのですが、『ヤマハギ』も若い枝の葉は、先が尖るのだそうです。
花の時期には、枝先が地面に付くほどに枝垂れることも、ミヤギノハギの特徴です。
シラハギ 白萩 マメ科 ハギ属
真白な花が、とても清楚な感じがしました。
ミヤギノハギもシラハギも、まだあまり沢山の花が開いてはいませんでした。
もう少したって、花がいっぱいに咲く頃、もう一度見に行きたいと思っています。
ただ ひっそりと夏は逝き
ただ ひっそりと秋は来る
心の底にわだかまる
消えて行かない哀しみを
夏と一緒に送れるならば
巡り来る秋はどんなにか
穏やかな秋になるだろう
ただ しのびやかに夏は逝き
ただ しのびやかに秋は来る
赤い実 [樹木]
庭の木に、赤い実がなりました。『ニワウメ』の実です。
今までは、こんなに目立つほど沢山ならなかったのですが、今年はどうしたことか、沢山なっています。
『ニワウメ』は、桜の仲間で、『ユスラウメ』にも近い仲間だそうです。
昔、庭に『ユスラウメ』があって、とても美味しい実がなりました。
でも、この『ニワウメ』の実は、あまり美味そうに見えません・・・。
それでも、少し黒っぽく熟した実を採って、試しに食べてみました。
残念ながら、すっぱ苦くて美味しくありませんでした・・・。
『ニワウメ』の花は、4月初めに咲きました。
写真も撮ったのですが、ブログの記事にはしませんでした。
しなかった、というより、あの頃は色々な花が次々と咲くので、いつの間にか載せそびれてしまったのでした。
そこで、今更ですが、こんな花でした。と、言うことで載せて置きます。
ニワウメ 庭梅 バラ科 サクラ属
トパーズの煌めき <キイチゴ> [樹木]
強まってゆく夏の日差しに
木々の緑が濃さを増して行く
深く ほの暗い藪の中で
瑞々しく実った木苺は
眩い木漏れ日を受けて
トパーズの煌めきを見せる
4月の終わり頃に花を紹介しました、キイチゴです。
http://blog.so-net.ne.jp/albireo/2005-04-29-1
ようやく実が、実りました。
久し振りに食べてみると、やっぱり懐かしい味がしました。
キイチゴも、色々種類があるようですが、分類の難しい植物だと言うことです。
これは木の様子や葉の形などから、ごく普通に見られる種類の、『モミジイチゴ』のようです。
モミジイチゴ バラ科 キイチゴ属
花の形等から、このキイチゴは「カジイチゴ」であると判断しましたので、ここに訂正致します<m(_ _)m> 2006.5.25.