ユリノキ ~晩秋から初夏へ~ [樹木]
ユリノキ 百合の木 モクレン科 ユリノキ属
「ユリノキ」の花が、咲きました。
和名では、葉の形から「ハンテンボク(半纏木)」とも言います。
英名では、花の形から「チューリップ・ツリー(Tulip Tree)」と呼ばれます。
同じ植物に名前を付けるのでも、国や民族によって、目を付ける所が異なっているようです。
「ユリノキ」の学名は、「Liriodendron tulipiflora L.」と名付けられています。
明治の頃、その「Liriodendron」と言う名前から、大正天皇が「百合の木」という言葉を口にされたそうです。
そのことから、この木は「ユリノキ」と名付けられたと、伝えられています。
秋の終わりから冬にかけて、ユリノキは沢山の種を付けていました。
何故か、春になって新しい葉が出て来ても、種の殻は、種の入ったままのものも含めて、まだ幾つも木に残っていました。
遷ろって行く季節
流れ去る時間
緩やかに揺蕩う
風の中の花
そして、再び訪れた初夏。
ユリノキには今年も、チューリップに似た花が、沢山咲きました。
夏の街路樹 [樹木]
ベニバナトチノキ 紅花栃の木 トチノキ科 トチノキ属
「ベニバナトチノキ」は、「セイヨウトチノキ」と「アカバナアメリカトチノキ」との間の交配種の樹木です。
「セイヨウトチノキ」は、「マロニエ」の和名です。
ですから「ベニバナトチノキ」は、「マロニエ」の子供になる訳です。
咲いていたのは昨年と同じ、「まろにえ橋」のたもとでした。
家からは、歩いて三十分~四十分くらいのところにあります。
「まろにえ橋」のたもとの歩道から、階段を下りて行くと、下の道路に沿って、今年も日本の「トチノキ」が花を咲かせています。
実は、前の記事の「ベニバナシャリンバイ」も、この辺りに咲いていました。
大きな葉をした
その街路樹は
ぼんやりと曇った
五月の空に向かい
聳え立つような
紅色の花を開く
葉群から漏れる
弱い太陽の光が
照らしてくれるけれど
出来るなら明日
青い空の下で
溢れる光を浴びて
輝いてみたいと
花は願っている
遅れて咲いた花 <コブシ> [樹木]
ついこの間までは、暗い色をしていた辛夷(こぶし)の枝が、
いつの間にか、爽やかな新緑に色付いていた。
木の下へ向かって、ゆっくりと近付いて見上げると、その梢に
輝くような白いものが見えている。
それは、花の時期を外れて咲いた、辛夷の花であった。この木は
本来の花の時期には、昨年に比べて花の数が、かなり少なかった。
だからと言って、その分をを取り戻そうとしている訳ではないだろ
うが、沢山の葉の中に、そこそこの数の花が、見え隠れしていた。
青く澄んだ空と、柔らかな春の新緑の中で、辛夷の白い花は、
不思議に清々しく、生き生きとして見える。
いつもの、コブシの大きな木です。
先月末に、『辛夷の花が咲きました』の記事に写真を載せた時は、茶褐色の枝に白い花が咲いていましたが、先日また通り掛ると、美しい新緑の中に、遅れて咲いた花が見えました。
前に咲いていた花は、もうすっかり花びらを落として、種の入っている子房が、まだ細い姿で付いています。
今時分になって咲いた花たちも、秋にはあのゴツゴツした実を、同じ頃に着けることが出来るのでしょうか。
青空の下に咲く白い花は、とても爽やかに、気持ち良く見えます。
こんな優しい花を、何度も見せてくれたコブシに、ちょこっと感謝をしたくなりました。
柔らかな光の中で <カリン> [樹木]
時は巡り行き
柔らかな光に
包まれる頃
懐かしい人と
不意に出会った
そんな思いの
新しい季節
胸が弾むような
始まりの予感
カリン 花梨 バラ科 ボケ属
桜が、八重桜を残して、殆ど散ってしまい、カイドウの花も終わった頃、カリンの花が咲き始めました。
ボケの仲間と言われると、確かにそんな感じもする花です。
カリンの花は、どうも高いところにばかり咲くようです。
見上げて、木の下から撮っても、なかなか思うようには撮れません。
植物園の木や街路樹では、とてもそんなことは出来ませんが、家の庭にある木なので、梯子を掛けて、登って撮って見ました。
一眼レフカメラを片手で持って撮るしかありませんから、構図などは二の次で、木から落ちないようにするのが、精一杯でした。
でも何故か、昔からそうなのですが、カメラを手にすると不思議なもので、多少のことは怖くなくなってしまうのです。
この木には、例年は僅かしか花が咲かないのですが、今年はかなり沢山の花が咲きました。
海棠 [樹木]
ハナカイドウ 花海棠 バラ科 リンゴ属
普通に、『カイドウ』と言うと、今はこの『ハナカイドウ』を指します。
中国原産のリンゴの仲間です。
ピンクの花が、下向きに咲きます。
この木は鉢植えですが、沢山の花が隙間もなく咲いています。
ミカイドウ 実海棠 バラ科 リンゴ属
こちらは、『ミカイドウ』です。
やはり、中国原産ですが、上の『ハナカイドウ』とともに、どちらも栽培品種だということです。
一番最初に、『カイドウ』という名が、今は『ハナカイドウ』を指すと書きましたが、実は江戸時代には『海棠(カイドウ)』というと、こちらの『実海棠(ミカイドウ)』を指す名称だったということです。
それが、いつの間にか入れ替わってしまい、今は誤って『花海棠(ハナカイドウ)』を指すことになってしまったのだそうです。
穏やかな春の日
薄紅色の花を眺めて
ゆったりと流れる時を
ただ 感じていたい
幾つもの悩みや
すべての不安から
心を解き放して
ただ 静かに緩やかに
通り過ぎて行く風に
この身を委ねていたい
家には、ずっと昔に長野県の親戚の家から貰って来た『実海棠』の木があります。
その為、僕にとっても『海棠』と言えば、昔から『実海棠』のことでした。
『実海棠』の花は、『花海棠』に比べて一回り以上大きな花で、いっぱいに開きます。そして、開いた花びらの内側は、より白っぽい色をしています。
『実海棠』は、秋には小さなリンゴのような実がなります。
食べて食べられないことはありませんが、パサパサした感じで甘味も無く、わざわざ食べるような果実ではありません。
時折、ヒヨドリがつつきには来ますが、あまり真剣に食べている様子もありません・・・。
さくら さくら [樹木]
ヤマザクラ 山桜 バラ科 サクラ属
今回は、様々な種類の桜の花をご紹介します。
ヤマザクラは、日本の野生種の桜です。
花と一緒に、赤い葉が出てきます。
オオシマザクラ 大島桜 バラ科 サクラ属
オオシマザクラも、日本の野生種です。
こちらも、花と一緒に若葉が出て来ますが、ヤマザクラと違って緑色の葉です。
アマギヨシノ 天城吉野 バラ科 サクラ属
静岡県三島市にある「国立遺伝学研究所」の、竹中 要(たけなかよう)という遺伝学者が1957ころに、エドヒガンとオオシマザクラの交配により作出したという、桜の栽培品種です。
竹中博士は、やはりエドヒガンとオオシマザクラの種間雑種とされる染井吉野に就いて研究を重ねる中で、このアマギヨシノや、次に紹介するミカドヨシノを作り出して行ったということです。
ミカドヨシノ 御帝吉野 バラ科 サクラ属
これも、エドヒガンとオオシマザクラの種間雑種で、竹中要博士によって、作出された栽培品種です。
ヨシノシダレ 吉野枝垂 バラ科 サクラ属
この花は、サトザクラの栽培品種と言われ、「仙台枝垂」「山桜枝垂」と言う名で呼ばれている桜と、同じ品種とされているそうです。
東京国立博物館 前庭の『ヨシノシダレ』です。
先日、gillmanさんから「東博の前の広場のシダレザクラもきれいですよね」と、コメントを頂いたのですが、先日の土曜日(4月1日)の時点では、この写真の手前の方にだけ咲いていて、反対側はまだちらほらと咲いているだけでした。
ヤエベニシダレ 八重紅枝垂 バラ科 サクラ属
僕の好きな、ヤエベニシダレ。
枝垂桜は、大抵染井吉野などよりも早めに咲いてしまうのですが、前のヨシノシダレも、このヤエベニシダレも、まだこれから本格的に咲き始めるようです。
この記事には、「さくら さくら」というタイトルを付けましたが、今日 sanesasi さんも、同じ『さくら さくら』のタイトルで記事を書かれていました。
とても品のいい、桜のある風景の写真に、日本らしい風情を味合わせて頂きました。
花びらの翼 ‹2› [樹木]
花びらの翼
白い花たちは夢見る
遠いあの空の彼方
いつか 鳥のように
憧れを目指して
青空に向かって広げる
輝く 花びらの翼
叶わぬ願いだとしても
決して諦めはしない
どこまでも高く
どこまでも遠く
見果てぬ遥かな夢の
翼を羽ばたかせて
まだ見ぬ明日を信じて
羽ばたく 花びらの翼
ハクモクレン 白木蓮 モクレン科 モクレン属
『花びらの翼』は、昨年の今頃「モクレン」の記事に付けたタイトルです。
高い梢に、一斉に咲いたハクモクレンが、僕には、まるで飛び立とうとする、白い鳥の群れのように見えました。
今年もまた、ハクモクレンを撮っていたら、やはり『花びらの翼』というイメージが心に浮かんで来ました。
今回も、青空を背景にして、撮ることが出来たせいかも知れません。
ハクモクレンは、この前の記事のコブシと同じ仲間ですが、コブシが日本に自生しているのに対して、ハクモクレンは中国原産の植物です。
ハクモクレンもコブシも、花びらの数は同じ六枚なのですが、ハクモクレンは三枚あるガク片も、同じ白い色をしていて、しかも大きい為、一見花びらが九枚もあるように見えます。
先日の、コブシの花の下に付いた、小さな若葉と共に、これもハクモクレンとコブシを見分けるポイントになります。
昨年は、ナナさんから、モクレンの写真のリクエストを頂いて、ブログの記事にしました。
今は、暫らくブログをお休み中のナナさんですが、きっとまた元気で戻って来て下さることを信じています。
冬の実 [樹木]
センダン 栴檀 センダン科 センダン属
黄色っぽい実が、たくさん実っている木がありました。
以前、六月の始めに花を紹介しました、栴檀(せんだん)の木です。
http://blog.so-net.ne.jp/albireo/2005-06-06-01
↑こちらに、花の写真があります。
全体的には、黄色いのですが、近寄って撮れる低い所の実は、まだ緑色をしています。
前の記事にも書きましたが、この『栴檀』は香木ではありません。
白檀から取れる香(こう)のインドでの呼び名『チャンダナ』を、中国で『栴檀香』と訳したことが元で、昔の人が勘違いをして、『栴檀』と『白檀』が混同してしまったようです。
また平安時代には、罪人の首を刎ねて、この木に掛けたということで、庭木としては好まない地方もあります。
しかし、同時にこの葉は、端午の節句にはショウブと一緒に軒端に飾って、邪気を払う為にも使われたそうです。
アオキ 青木 ミズキ科 アオキ属
こちらは、真っ赤に熟し始めた『アオキ』の実です。
花はあまり目立ちませんが、実は綺麗な赤でよく目立ちます。
このの実は、ヒヨドリなどが食べにくるそうです。
トベラ 別名: トビラノキ トベラ科 トベラ属
始めは、薄緑の実がなるようですが、今の時期に弾けて、赤い種が見えるようになります。
『トベラ』は『扉』と書くらしいのですが、これは昔、節分の時にこの木の枝を、魔除けとして門に挿したことに由来するそうです。
このトベラの実も、鳥が食べに来ます。
センダンの木の近くにあった『カラスウリ』の実は、既に干乾び始めていました。
冬木立 [樹木]
空に向かって聳える、冬枯れの木立は、春に白い花を咲かせるコブシの木です。
でも、たやすく冬枯れの木立と言ってしまっていいのかどうか・・・。
傍らの小さな丘に登ってみると、枝には既に沢山の花芽が付いていました。
冬は、まだ始まったばかりですが、コブシはもう、すっかり冬の休暇に入っているようでした。
まだ小さな花芽は、柔らかな感じの毛布に包まって、春になるまで眠りに就きます。
↓こちらは、今年の四月始めに咲いていた、コブシとモクレンの花です。
http://blog.so-net.ne.jp/albireo/2005-04-02
秋が来ると、落葉樹は光合成を停止して、
葉に残されたエネルギーもすべて樹幹に取り込み、
暫しの休息の時を迎える。
植物としての生育を望めない冬の季節には、
通常の生命活動をするよりも、
休眠する方がリスクが少ない為だという。
人は冬枯れの木立の姿に、時に人間の生き方を
重ね合わせようとしたりもする。
そこに、苦難に耐えて生きる姿や、
凛として気高い孤高の生き方を見るのは、
それはそれで、意味のあることかも知れない。
けれど、冬枯れの木々は、既に充分な春を迎える準備を整え、
ひたすらに、深く長い眠りに就く。
そしてもしかしたら、木々は穏やかな眠りの中で、
満開の春の花を訪れる、優しく可憐な蝶の舞い姿を、
楽しく、夢に見ているのかも知れない。
コブシの木のある場所へ行く途中にあった、カラスウリの実です。
色の少ない写真ばかりでしたから、ほんの少し彩りを添えるために。
公園の紅葉 [樹木]
樹の下に立って見上げたら
緑の葉に縁取られた空を
赤く染め抜く紅葉の葉が見えた
ありふれた公園の隅にも
こんなにも鮮やかな風景があった
時折立ち止まることが出来れば
そして空を見上げる気持ちになれたら
目にも鮮やかに美しく輝く命の姿を
どこにでも見い出せるのかも知れない
ただ気付かずにいただけかも知れない
以前の記事でも、何度か紹介しました「カルガモ」のいる池のある、近所の公園です。
池の周りにも、カエデの木が何本か植えられていますが、ちょっとだけ奥に入ったら、低い木に隠れて見づらい場所にあるカエデが、特に鮮やかに紅葉していました。
まったく紅葉していない、緑の葉のカエデは、この時期不思議に瑞々しく見えました。
一面の紅葉と言うわけには行きませんが、ごく近い場所にある、こんなに綺麗な木々に気付いたことは、多分幸せなことかも知れません。