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日本国宝展 -東京国立博物館- [展覧会]

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 10月15日から始まった、トーハクの「日本国宝展」を観て来ました。 

 特別展の会場内での写真撮影は、言うまでもなく一切禁止ですから、今回の記事にはあまり写真はありません。

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 冒頭の、会場入り口の看板にも写っていたこの男の子は、つい先年国宝に指定されたばかりの、国宝界での新人の「善財童子」くんです。

 仏像好きで知られる、タレントのはなさんは、その著書「ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう」の中で、この少年のことを「善財くん」と書かれていますが、その文章がとても面白かったので、僕もついそれに倣って「善財くん」と呼ぶようになってしまいました。

 この像は、奈良県桜井市にある「安倍文殊院」に祀られている快慶作の「文殊菩薩および眷属」(鎌倉時代)という群像のうちの一体で、像高1.38mという実際の子供の大きさで作られています。

 僕は、かなり以前に、奈良で会ったことがありますが、獅子に乗った文殊菩薩の像高は7mもありますし、他の大人の像も、1.89m~2.7mという、圧倒される程の見事な群像でした。
 

 因みに、この群像と同じ構成の、謂わばミニチュア版とも言える像が、トーハクに所蔵されていて、このブログの、「鎌倉時代の仏像」と言う記事にも、その写真を載せています。

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 今回の「日本国宝展」 は、「祈り 信じる力」というテーマで開催されており、「人々の篤い信仰心が結実した文化遺産」を集めた展示内容となっていると言うことです。

 その為、展示の終盤には、比較的大きな、観応えのある仏像が集結しています。

 上の、案内板に掲載されている仏像は、京都・三千院の「勢至菩薩座像」(平安時代)です。展覧会場では、阿弥陀如来の脇侍としてコンビを組んでいる、「観音菩薩酒像」と並んで展示されています。

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 先にも書いた通り、特別展の会場内では撮影は一切「禁止」ですが、ここにその会場内に展示されていた像の内の一体の写真があるので、載せて置くことにします。 

 この像は、京都・浄瑠璃寺に伝来する、四天王像の一体で、「広目天立像(こうもくてんりゅうぞう)」です。

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 この像は、本来の所蔵先である浄瑠璃寺から、トーハクに寄託されているようで、昨年の夏から秋に掛けて、本館11室(彫刻室)に展示されていました。

 寺院からの寄託による仏像は、他にも幾つか展示されていることがありますが、殆どが「撮影禁止」となっています。ところが、この像の案内板には、「撮影禁止マーク」の表示がありませんでした。これは、何かの間違いではないかと思い、展示室の案内と警備を担当している女性に、「本当に、撮影しても良いのでしょうか?」と尋ねると、「撮影しても構いません」とのことで、漸く安心して撮影させて頂いたことを、はっきりと覚えています。

 しかし、この像は、僕の知っている「広目天」の特徴からすると、些か異質に感じられて、家に帰ってから何冊もの本を引っ張り出して調べることになりました。

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 この像は、現在本館11室に現在展示されている四天王像の一体で、「広目天立像」です。

 手には、一切の武器を持たず、巻物と筆とを持つ姿を取っていますが、この像容は、四天王像としては最も有名な像の一つである、「東大寺・戒壇院」の「広目天立像」と一致しています。しかし、三叉鉾を手にした、浄瑠璃寺伝来像の姿とは一致しません。

 調べて見ると、四天王自体、元々は一定の様式があったようですが、「奈良時代以後の像は表現が自由」になって来ると言うことで、「必ずしも定型はなく、持物はしばしば変わる」のだそうです。(「仏像図典」佐和隆研・著 吉川弘文館・昭和53年15版発行)

 「四天王」に就いては、トーハクでその一部の写真を撮らせて頂いていたので、何れ記事にしたいと思っていたのですが、全員の画像がなく、上手く記事が書けないままになっていました。でも、今回全員の画像を撮ることが出来たので、改めて何とか記事に出来そうな気がしています。

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 ところで、このような大きな展覧会の会場で、よく感じることがあります。

 今回の展覧会では、会場入り口に入るとすぐに、奈良・薬師寺の「仏足石」が展示されていました。その先には、奈良・法隆寺の「玉虫厨子」が、展示されており、その辺りは非常に混雑していて、他の人たちの頭越しに覗いて観る状態でした。
 そして、展示会場の中盤に差し掛かると、混雑した中で、設置されたソファに腰かけて、休んでいる人たちが目立つようになります。
 やがて、最後の展示室には、今回の展覧会の主要な展示物である、仏像が何体も展示されていました。でも、そこまで来ると、意外に空いていて、ゆっくりと展観が出来ました。

 今「意外」と書きましたが、実際はそれが、特に大きな展覧会でよく感じられることで、入り口は混み合っていても、終盤に至ると驚くほど空いているということがよくあるものです。

 そういう言い方は失礼かも知れませんが、実際には博物館の展示に、然程に深い関心はなく、みんなが行くから行って見ようか、という方たちが、思いの外多いではないかという気もします…

 それでも、大勢の観客が来てくれることで、「独立行政法人」としての国立博物館の経営も成り立つことになる訳ですから、トーハクのファンとしては、混み合うこともまた良しとすべきことではあると感じます。

 今回の「日本国宝展」には、開催2日目の16日に、父親の車椅子を押して観に行って来ました。父は、大きな仏像や、怖い顔をした仏像が好きなので、他の展示品はざっと目を通すだけで、最後の展示室を目指しました。今回は、「善財童子立像」が特に気に入ったようで、暫くそこに留まって眺めて来ました。(僕は、初日にも下見に行って来たので、取り敢えずすべての展示はを、ひと通りは観ては来ましたが…)

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 本当は、花の写真の記事を、もっと早くに更新する予定でしたが、また長期間更新が途絶えました。

 実は、この前の更新の後に、以前の勤め先で仲良くしてくれていたAさんから、僕のスマートフォンへ、(更新が滞っていたので)「心配していた」という旨のメッセージを頂きました。心配して頂けると言うことは、非常に有り難いことと思いながらも、またしても滞ってしまい、申し訳なく感じています。

 次回は、庭に咲いた「ミゾソバ」その他の花の写真を、出来るだけ早く掲載したいと思っています。

  参考図書


ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう (幻冬舎文庫)

ちいさいぶつぞう おおきいぶつぞう (幻冬舎文庫)

  • 作者: はな
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2006/12
  • メディア: 文庫

仏像図典

仏像図典

  • 作者: 佐和 隆研
  • 出版社/メーカー: 吉川弘文館
  • 発売日: 1990/11
  • メディア: 単行本

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コメント 7

mimimomo

おはようございます^^
善財くん、何だか愛らしいですね^^ 
火炎を背負っているのは、何でも不動明王かと思っていたら違うのだわ。
時々「京都のお寺さん」と言う本を出してきて見るのですが、なかなか覚えられない(-”-
by mimimomo (2014-10-20 06:31) 

mitu

善財君の髪形ときどきしてます(*^。^*)
仏像をみていると、気持ちが引き締まる感じがします
by mitu (2014-10-20 08:50) 

ねこじたん

背中のメラメラとお顔が
やっぱ ぴったしですよね
お仏像 ちゃんと見たときないです
背中ぴしっとして みなくちゃな〜
by ねこじたん (2014-10-20 08:59) 

ゴーパ1号

こんにちは。
展示物って、じっくり見てると本当に疲れますよね^^;
もうすこし休む所が多くてもいいのかなって思うくらいです。
やはり2度行くといいのかな。
by ゴーパ1号 (2014-10-22 13:37) 

きまじめさん

広目天って(わからないので調べましたが)
悪人を罰し,仏心を起こさせるという仏様だそうでですから
お顔は一見怖そうですが、よく見ていると、慈悲のある良いお顔をしていますね。
by きまじめさん (2014-10-24 00:10) 

sakamono

国宝界での新人というのも面白い表現ですね^^;。
確かに「善財」くんと呼びたくなるような、可愛さがあります。
by sakamono (2014-10-24 23:49) 

sasasa

こういうのも、なかなか奥が深いですよね。

by sasasa (2014-10-26 19:55) 

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