SSブログ

井の頭弁財天 [社寺]

_DSC0092.jpg

 一月の記事「弁才天~妙音弁才天と宇賀弁財天~」に書いた通り、井の頭弁財天で、十二年に一度の巳年「秘仏御本尊御開帳」を拝観して来ました。
 

 期日は、四月の十三(土)・十四(日)・十五(月)日の三日間と言うことで、最初は初日の土曜日に出掛ける予定でした。しかし、玄関の鍵が壊れると言うアクシデントがあり、午前中に修理に来てくれると言うので、行けなくなってしまったため、最終日の十五日に行って来ました。

 行ってみると、数十人の行列が出来ていましたが、前に並んでいた中高年の二人の女性と、通りかかった顔見知りらしいお坊さんとの会話によると、土日は相当な混雑だったようで、最終日に来たことは、どうも大正解のようでした。

_DSC0177.jpg

 事前に得た、ネット上の情報に依れば、御簾(みす)の外から拝めるだけらしいという事でしたが、実際には御簾などはなく、扉を開いた逗子の中に安置された、弁財天さまのお姿を、間近で拝むことが出来ました。
 但し、弁天さまの前に留まることは許されず、列を作って逗子の前を通り過ぎるようにしての拝観でした。



_DSC0117.jpg

 それでも、前にいた二人の方と、これも顔見知りらしいお坊さんとが、ちょっとした挨拶を始めたので、その間、些かなりとも長く拝観させてもらうことが出来ました。

 井の頭の弁天様は、一月の「弁才天~妙音弁才天と宇賀弁財天~」の記事でも紹介した、宇賀弁財天でした。
 
像高は、7,80cmから1m弱くらいで、八本の腕を持ち、頭頂に宇賀神と鳥居を冠した座像です。
 そのお姿は、ふくよかで、些かのっぺりした感じの、少女のような可愛いお顔をされていました。

 短時間の拝観であったため、何とも言えませんが、多分江戸時代くらいの造立であろうと思われます。また、秘仏とされていて、滅多に開扉されないこともあり、彩色もとても綺麗に残っていました。

 

      IMGP3447.jpg

 秘仏と言うことで、画像等はありませんが、その姿は一月の「弁才天~妙音弁才天と宇賀弁財天~」の記事に、ボストン美術館展のクリアフォルダーに印刷された画像として載せた、橋本雅邦の描く「騎龍弁天」の雰囲気に、いくらか似ているような気もしました。
 

_DSC0195.jpg 


  

 この地に祀られた、弁財天の当初の像は、日本天台宗の開祖である、最澄の作とされていたようです。
 しかし、後に火災により焼失し、江戸時代初期に、弁天堂が再建されたと言うことからも、現在の像もその際に造られたと見て良いのではないかと思います。

 また、一月の記事に引用させて頂いた、山本ひろ子さんの論考を拝見しても、「宇賀弁財天」そのものの成立は、最澄の時代まで遡れるものとは考えられませんから、当初から祀られていた尊像が現在の宇賀弁財天であったとすれば、それは時代的には合わなくなってしまいます。

 ですから、史実と信仰上の尊像の在りようとは、必ずしも一致しないと言うことで、理解するしかないのだと思います。

 

_DSC0132.jpg

 上の「宇賀神」の石像の写真は、一月の「弁才天~妙音弁才天と宇賀弁財天~」の記事にも、載せていますが、今回行って見たところ、安置されている場所が異なっていて、些か驚きました。

 以前は、弁天堂の参道の階段の上に立っていたのですが、現在は弁天堂の脇に移されています。


_DSC0179.jpg


 移転は、今年の四月になされたようで、現在は真新しい台座の上に、宇賀神の石造が安置されています。



_DSC0148.jpg

 ただ、この石像は元来、江戸時代の崇敬者たちによって、井の頭弁天堂に鳥居を寄進した記念に建てられた記念碑の上に置かれていたものと思われます。その意味では、これ自体は信仰の対象と言えるのかどうかと言う疑問も残ります。

 

_DSC0038.jpg


 また、一月の記事を書いた後に調べて分かったのですが、この弁天堂には実際に、江戸時代には「石鳥居」が建てられており、それが明治の神仏分離令によって取り壊されたという事です。
 本来、仏教の天台宗に所属する弁天堂に、神道の鳥居が建てられていたと言うことは、当時の神仏混淆の信仰形態の一端を物語るものと言えますが、その石鳥居が失われた今、石鳥居建立の記念碑は重要な歴史的価値を持つものと言えます。

 そうしたことを考えると、この宇賀神の石像は、文化財保全の観点からも、やはり石鳥居建立の記念碑と共にあることが相応しいものであると、僕にはそう思えます。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 折角、井の頭公園まで行ったのだから、本当は「井の頭自然文化園」へ寄って見たかったのですが、行けたのが御開帳最終日の月曜日だったため、残念ながら休館でした…

 その代わりという訳でもありませんが、公園内の花壇に咲いていた野草の一部を、ここに載せて置くことにします。

_DSC0272.jpg

 クサノオウは、以前にもブログに載せたことがありますが、それほど見掛ける機会もないので、写真を撮るのは久し振りでした。

 

_DSC0233.jpg

 クサノオウは、ケシ科クサノオウ属の植物で、茎を折ると出てくる黄色い汁には、毒があります。

 薬として利用されることもあるようですが、毒性が強いため、自己流の使用は避けて下さい。

 口に入れたりすると危険なので、山林などで見掛けても、不用意に折ったりしない方が賢明です。

 

_DSC0240.jpg

 ジロボウエンゴサクを見るのは、多分初めてです。

 当然、撮るのも初めてですが、色が思うように出ていないのが残念です… 

 

_DSC0248.jpg

 ジロボウエンゴサクもケシ科で、一つ前の記事に載せたムラサキケマンと同じ、キケマン属の植物です。

    追記:僕は、この花「ジロボウエンゴサク」を、「ジロボウエンゴグサ」と、誤って記憶していました。
        この記事の上でも、つい先ほどまで「ジロボウエンゴグサ」と誤表記をしていましたが、
        ブログ仲間のゼフさんが、コメントで指摘して下さって、初めて気が付き、訂正しました。
        ゼフさん、親切に教えて頂きまして、有難う御座いました。

        因みに、漢字では「次郎坊延胡索」と書くそうで、この名は同種の植物で、漢方薬として利用される
        「延胡索」の名に由来するのだそうです。
                                             2013.4.16. 7:22

 その他、まだ幾つかの野草が咲いていましたが、それはまた、別の記事に載せることにします。

 


nice!(16)  コメント(8)  トラックバック(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 16

コメント 8

ぜふ

移設はひょっとしたら盗難をおそれてのことですかね。。

ジロボウエンゴサク ですね。”索”ですからね。
by ぜふ (2013-04-16 06:48) 

mimimomo

おはようございます^^
ちょっと出かけますのでまた後ほど。
by mimimomo (2013-04-16 07:07) 

albireo

>ゼフさん 
 「ジロボウエンゴサク」の名前の間違いを御指摘頂きまして、有難う御座いました。
長い事勘違いしていましたが、今回教えて頂いて、本当に助かりました。
今後とも、宜しくお願い致します。

>mimimomoさん
 お忙しいところ、わざわざお立ち寄り下さり、有難う御座います。
by albireo (2013-04-16 07:31) 

mimimomo

こんにちは^^
今日は皇居東御苑に行っていました。春うららかな日の今日は、人出もたくさんでした。
それだけ多くの方が見えるというのはご開帳を楽しみになさっている方が多いのですね。
by mimimomo (2013-04-16 15:51) 

ichii

>クリアフォルダーに印刷された橋本雅邦の「騎龍弁天」
とてもやさしいお顔立ちの弁天様ですね。
龍も上品で高貴な感じがします。
こういう感じの弁天様なのですね。
姿を想像するだけでも、暖かな気持ちになります。
by ichii (2013-04-17 00:59) 

きまじめさん

ジロボウエンゴサク,訂正が入っているにもかかわらず、
ジロボウエンゴグサと読んでしまっていました。
最後の「次郎坊延胡索」を見てやっと気が付きました。
可愛い花ですが紫色はどことなく寂しげに見えます。
by きまじめさん (2013-04-17 23:15) 

ねこじたん

ヘビにしばられてるぅぅぅ…
by ねこじたん (2013-04-18 10:57) 

sakamono

私も感じを見て、自分の間違いに気づきました。
「シロボウエンゴサク」だと思っていました^^;。
by sakamono (2013-04-20 15:10) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。