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遅く咲いた梅 [花]

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        春の夜は吹きまふ風のうつり香を
             木毎に梅と思ひけるかな

              崇徳院御製(すとくいんぎょせい)

         千載和歌集 巻一 春歌上 所収


     春の夜は 吹き舞う風が運ぶ
     梅の移り香りのために
     他の木々も梅かと思ってしまう

 この歌の風は、何とも優雅に吹いていますが、先週の土曜日(3月31日)に吹いた大風は、梅の移り香を運ぶ程度の風ではなく、既に八分咲きとなっていた庭の梅を、かなり散らして吹き荒れました。

 そしてまた、昨日(4月3日)の台風のような風で、今年の梅の見頃はすっかり終わりそうです・・・

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 梅の花は昔から、他の花に先駆けて咲くため、「百花魁」とか「花の兄」とか呼ばれて来たと、江戸時代の学者 貝原益軒の「花譜」という本で読んだことがあります。

 現在では、真冬でも咲いている園芸品種の花が、思いの外沢山ありますが、昔は春も浅い頃に咲く梅は、貴重な花だったのでしょう。

 その為か、以前「春の夢」という記事で紹介したことのある「胡蝶(こちょう)」という能には、梅があまりにも早い春に咲くために、梅の花に出会えない蝶の精霊の哀しみが描かれていますし、平安時代には、梅の花と雪とを見紛うという趣旨の和歌が幾つも作られています。

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    雪ふれば木ごとに花ぞ咲きにける
       いづれを梅と分きてをらまし

              紀 友則 (きのとものり)
      
          古今和歌集 巻六 冬歌 所収

    雪が降ると それぞれの木々に花が咲く
    どの枝を梅の花と見分けて折ればいいのだろう

 その梅は、白梅なのでしょう。白い雪を花に見立て、雪と花との見紛うばかりの美しさを歌っています。    

 冒頭に引用した崇徳院の歌は、この紀友則の歌の影響を受けて作られたと考えられています。

 尚、上記それぞれの歌の「木毎に…・木ごとに…」は、「梅」と言う文字を「木」と「毎」に分解したもので、元々は、漢詩に用いられる「離合詩」と言う技法に由来する、今で言えば言葉遊びの一種です。

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 今年の梅の花は、例年に比べて、ひどく遅れて咲きました。
 本来であれば、もっと早く咲く梅も、今年はついに、桜の開花に追い付かれてしまいました。

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 こんなに、開花が遅くなって、ちゃんと実が成るのかどうか、少し心配ですが・・・
 いつも通りに、ヒヨドリが訪れてくれました。

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 こんなに、花粉で嘴を黄色くしながら、一所懸命に蜜を嘗めています。

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 これなら、しっかりと授粉の手伝いをしてくれているに違いありません。

 今年は、メジロは見ませんでしたが、公園の梅には来ていたので、僕が気付かないうちに、きっと家の庭の梅にも、メジロは来てくれていたことでしょう。

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 冒頭に、崇徳院の和歌を引用しましたが、先月「西行忌」の記事を書いて以来、何時か僕のブログに「崇徳院」の記事を書くと言う、 So-netブログ仲間の今は亡き lapisさんとの約束が、頭を離れなくなってしまいました。

 もう、決して果たせない約束とは、相手の生死に係わらず、何とも言えず切ないものです。

 しかし、それでも約束は果たしたいと思い、改めて以前に読んだ崇徳院関連の論文や、和歌集や説話集などを持ち歩いて、電車の中などでも読んでいました。

 ただ、他に色々と面倒な用事もあって、思うようにブログの記事として纏められていません・・・

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 折角、前の記事に、枝動さんから「更新ペース、上がりましたね。(*^_^*)」というコメントを頂いたにも関わらず、また更新が滞ってしまいました。

 取り敢えず、崇徳院の記事は、少しづつ纏めて行くことにして、折角咲いてくれた梅を始めとして、ここ一・二週間の間に咲き始めた花々の記事を、改めて更新したいと思います。

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 昨夜のニュースに依れば、季節外れの台風のような激しい風雨は、あちこちに被害を及ぼしたようです。

 どうか、皆さんやご家族に、お怪我等がありませんように、心からお祈り申し上げます。


タグ: 和歌
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コメント 7

ぜふ

ウメ、コブシ、ハクモクレン、そしてサクラが一緒に見られるのは、
うれしいやら気持ちわるいやらですね^^;
昨日の低気圧は”台風”として記録していいのではないかと思いました。

さて、最後の写真のような梅らしい梅を、そういえば今年見たかなと、はっとしました。
by ぜふ (2012-04-04 06:29) 

mimimomo

おはようございます^^
ほんとうに凄い風でしたね。我家の場合、昨日の風より先週末の方が
酷かったです。
梅のお写真が素敵です。美しさが際立って。
ここのところ寝る前に、白洲正子の『西行』を読んでいます。永らく不勉強だったので
最初のころは歌を読んでもピントこないで四苦八苦でしたが、読み進むうちに少し
頭に入るようになりました^^  しかし齢ですね~覚えられないです(__;
by mimimomo (2012-04-04 08:34) 

春分

日本の古典を散りばめた梅にまつわる記事を読めば、私もlapisさんを
思い出さずにはいられませんでした。カイエの香りを残すのは当にここだと
思います。無念の他界でしたから、余り重ねるのも縁起でもないですが。
でも古典の言葉を繋ぐ糸にして、たくさんの故人の思いが重ねつづられる春
といったところか。
by 春分 (2012-04-05 13:13) 

sakamono

梅の香りはホントに良いですね。この歌の言わんとしているところが
なんとなく分かるような気もします^^;。
今年は梅の花をじっくり見る前に、桜のお花見に行ってしまいました。
by sakamono (2012-04-08 13:44) 

sera

梅の花って、桜に似ていますね、、

お花見、いらっしゃいましたか
今頃、国立博物館の裏庭は公開してあるかな、、
ムラサキの草花、きっとたくさん咲いていると
思いながら、もしかしてAlbireoさんのブログに
写真があるかな、、、と、期待していました。
by sera (2012-04-08 20:10) 

はてみ

梅と桜が近づいてしまった春でしょうか。
辛夷や木蓮も、愛でる間もなく飛ぶように春が過ぎそうです。
by はてみ (2012-04-08 22:21) 

きまじめさん

こうして梅の写真拝見すると、
華やかさはないけれど、
それに勝る気品のある花なのだとあらためて感じました。
嘴に花粉をつけたヒヨドリが、
口の周りに食べつけをしたいたずら坊やのようで可愛いです。
by きまじめさん (2012-04-11 00:47) 

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