旅立つ日まで <ツバメ> [野鳥]
つばめさん、つばめさん、小さいつばめさん、ひと晩だけわたしのところにいて、使者になってくれない?
あの男の子は、のどがからからになっているし、母親は心から悲しんでいる。
オスカー・ワイルド 『幸福な王子』 より
西村孝次 訳 新潮文庫版
ツバメと言うと、僕はオスカー・ワイルドの童話 『幸福な王子』を思い出します。
『幸福な王子』の像は、街に暮らす不幸な人々を見過ごすことが出来ず、自らの身を飾る金箔や宝石を、一羽の小さな燕に託して、貧しい人たちに贈ります。
燕は、最初は少し反発しながらも、 『幸福な王子』の使者として、人々を救うために力を尽くしました。
ツバメ 燕 スズメ目 ツバメ科
今回の記事の写真は、南房総市の「道の駅」で、4月から8月にかけて撮ったものです。
とは言っても、月に一度の所用があって、土曜日か日曜日に南房総市に出掛けた際に、ほんの短時間その道の駅に立ち寄るだけですから、僅かにその時その時のツバメの姿を捉えただけの写真に過ぎません。
また、この道の駅には、沢山のツバメの巣があります。
ここに載せた写真は、その都度に、上手くツバメが居て、写真を撮り易い状態の巣を狙って撮っています。
ですから勿論、同じツバメの成長記録というわけでもありません。
最初の三枚目までは、4月27日(日)に撮った写真です。
この頃のツバメは、漸く産卵を終えて、未だ卵を抱いている状態ではないかと思います。
5月24日(土)
まだ幼い、子供のツバメは、大きな口を開けて、親鳥に餌をねだっているようでした。
6月22日(日)
5月時点と比べれば、雛たちは相当活発に餌をねだっています。
「道の駅」の建物の、謂わば軒下のような場所に巣を作っています。
ですから、どうしても光が回らず、必然的にシャッター速度も遅くなります。
その為に、親鳥の羽ばたく速度に、カメラのシャッター速度が追い付かず、このようなちょっと面白い写真になりました。
7月12日(日)
すっかり大きく育ったツバメの雛。
でも未だ、親鳥の運んで来る餌を待っているようです。
8月16日(土)
この頃になると、もう多くの巣には雛の姿は見えません。
途中の道路などに、ツバメが集団でいるのを、何度か見掛けましたし、この道の駅でも、沢山のツバメが空を飛び交っていました。
おそらくは、幼いツバメたちも、大人のツバメに交じって、飛ぶ練習をしたり、餌を採る術を学んでいる最中なのでしょう。
でも何故か、この子ツバメたちは、巣にとどまっていました。
まだ、巣立つには早い幼鳥なのでしょうか?それとも、ただ休んでいるだけなのでしょうか?
どちらにしても、十月頃までには、遠い国へ向かって、初めての旅に出て行かなければなりません。
『幸福な王子』の物語の中の燕は、王子の像を助けて、遠いエジプトへ向かう旅を諦め、王子の足許に落ちて息絶えてしまいます。
「わたしが行くのはエジプトではありません。死の家へ行くのです。死は眠りの兄弟です。
そうじゃありませんか?」
そしてつばめは幸福な王子のくちびるにキスすると、王子の足もとへ落ちて死にました。
オスカー・ワイルド 『幸福な王子』 より
西村孝次 訳 新潮文庫版
その時、王子の鉛で出来た心臓は、音を立てて二つに割れました。
すべての装飾を失い、みすぼらしい姿となった「幸福な王子」の像は炉に投じられて溶かされ、
何故か溶け残った鉛の心臓は、燕の死骸とともに打ち捨てられてしまいます。
神様が、町の中で、最も尊いものを二つ持って来るようにと、天使に命じます。
天使が持ち帰ったものは、壊れた心臓と、燕の死骸でした。
この物語を最初に読んだのは、何時のことだったのか…。もう、思い出すことも出来ません。
そのラストシーンの、キリスト教的な救済の在り方は、日本人であって、しかもキリスト教徒でない僕にとっては、本当には理解出来ないかも知れない、生と死の価値観です。
尤も、ワイルドの『幸福な王子』だけではなく、アンデルセンの『人魚姫』や『マッチ売りの少女』などにも、そうしたキリスト教的救済が描かれています。また、アンデルセンの童話の中には、キリスト教的な救済の在り方が、とりわけて顕著に描かれた『赤い靴』という作品もあります。
それなのに何故か、子供の頃から繰り返し読んだそれらの物語は、日本人であって、しかもキリスト教徒でない僕の心までをも、しっかりと捕らえているようです。
参考図書
絵解きで野鳥が識別できる本 (BIRDER SPECIAL)
- 作者: 叶内 拓哉
- 出版社/メーカー: 文一総合出版
- 発売日: 2006/03
- メディア: 単行本
幸福な王子は小学生の頃に読みました。
子供ながら 悲しいお話に涙がでました。
1枚目のお写真のツバメさんの美しいこと!
by すずめ (2008-08-21 01:36)
おはようございます^^
一番最後のお写真の燕目線が気に入りました^^ とっても可愛い~~~
それにしてもよく見ると燕って相当口が大きいですね~^^
日本のお話と違ってヨーロッパのお話は日本的感覚から言うとハッピーエンドじゃないですよね。
それがキリスト教的価値観から言うと『魂が救われる、救済』なんでしょうね~
by mimimomo (2008-08-21 05:11)
西洋の童話は、悲しい結末もありますね。
by SilverMac (2008-08-21 08:53)
素晴らしいお写真ばかり!
童話は、小さい頃に読んだものを今 改めて目を通すと、
いろいろな新しい感じ方をすることが非常に多いように感じています。
by お茶屋 (2008-08-21 19:11)
やはり春のツバメは頭が青いなというのが最初の感想でした。
欧州でもツバメはポピュラーなものだったなと思いました。
子ツバメもすごいなー、迫力があるなーと、思いました。
私は幸福な王子の幸福に共感します。なんとなく最後はかくありたいと思います。
by 春分 (2008-08-21 20:02)
再び~お邪魔虫~
おはようございます^^
昨晩はご訪問ありがとうございました~~~
by mimimomo (2008-08-22 04:36)
くりっとした瞳がかわいいですね*^^*
ツバメって見ているとなんだか癒されますよね^^
幸福な王子・・・ちょっと悲しい終わり方に感じます。。もっとハッピーな終わり方の方が私はいいなぁ・・・・
by あやこ (2008-08-22 22:47)
今年はツバメの子育てを見るコトができなかったので、たっぷり堪能しました。
子供向けの絵本で、このお話は読んだコトがありますが、そんなラストシーン
あったかな?と思いました。ツバメが死んだところで終わりだったように記憶
しています。
by sakamono (2008-08-23 10:25)
「幸福な王子」は小さい頃に読んだ記憶がありますが、結末が悲しくって・・・幸福って題名がついてるのに、全然幸福じゃないと思った記憶があります。何十年も昔に読んだ本のことですが、いまだに心に残っています。
by barbie (2008-08-25 01:37)
確かに、ツバメというと 『幸福な王子』を連想しますね。
ワイルドの代表作は『サロメ』や『ドリアン・グレイの肖像』等でしょうが、
それに劣らず彼の童話も魅力的だと思います。
3枚目の写真、動きがあって、面白いですね!
by lapis (2008-08-26 20:54)
大きな口をあけたヒナが可愛いですね。
「幸福な王子」は読んだ記憶がないです。
興味をそそる内容ですね。探してみます。
by penpen (2008-08-28 22:19)
顔中を口にして歌っているような かわいいですね
童話知りませんでしたので ジーンときました
私もツバメを撮りたいと今年もいつものところへ何度か行きましたが 随分減りました 寂しいでした
by sanesasi (2008-08-31 09:12)