ミゾソバと新選組 [歴史・伝説]
ミゾソバ 溝蕎麦 タデ科 タデ属
ミゾソバは、別名を「ウシノヒタイ」とも呼ばれるタデ科の多年草で、田圃の周辺や川辺などの湿った土地に群生します。
とても可憐な花ですが、花びらに見える部分はガク裂片です。
この可愛い花と、幕末の京都の町を暴れ回った新選組と、一体どんな係わりがあるのかと、今回のタイトルを見て訝しく思われたかも知れません。
実際には、この花と係わりがあるのは、新選組の中でも「鬼の副長」と恐れられた土方歳三です。
歳三は少年時代、土方家に代々伝わるという「石田散薬(いしださんやく)」という薬の行商をしていたという逸話が残っています。
石田散薬は、打ち身や骨折に効くとされていた粉末の飲み薬で、服用する際には水ではなく酒で飲むことになっていたそうです。
この石田散薬の原材料は、「牛額草(ぎゅうがくそう)」という植物だと言われています。
「牛額草」とは、葉の形が牛の顔に似ているために付けられた名で、「牛の額(ウシノヒタイ)」とも呼ばれています。つまり、「ミゾソバ」が「石田散薬」の原材料だと言うわけです。
但し、原料になるのは秋に咲くこの可憐な花ではなく、真夏の土用に刈り取られた葉や茎だったそうです。
土用の暑い時期に、多くの人手を頼んで刈り取りが行われた際、少年であった歳三は雇われた人々に的確な指示を出し、見事に監督を勤めたという逸話も残っています。
また、後に京都で新選組が旗揚げをしてからは、石田散薬は新選組の常備薬とされたと言います。
そんな「石田散薬」ですが、昭和二十三年に薬事法が改正になり、こうした民間薬の効能の見直しが行われた際、謳われているような効能はないということが分かり、以後販売は中止となりました。ただ、毒にもならないので、どうしても欲しいと言う人には、分けてもいいということではあったようです。
僕は、石田散薬に就いては、かなり以前から知ってはいましたが、「ミゾソバ」が原料だったことは国文学者の管 宗次さんの書かれた「俳遊の人・土方歳三」という本で初めて知りました。
もしかしたら、「牛額草」というさも漢方薬に使えそうな別名に騙されていたのかも知れません…。
ところで、この草は非常に生命力が強く、先日写真を撮りに行った折、茎の中ほどで折り取った花を持ち帰り、一輪挿しに挿しておいたところ、いつの間にか茎の下の方から根が生えだしていました。
そんな生命力の強さから、昔の人は薬効があるのではと考えたのかも知れない・・・。ふと、そんな気もしました。
ちなみに、二枚目の画像は数年前に売られていた、フルタ製菓の食玩フィギュアです。
デザインの元になっているのは、土方歳三資料館所蔵の、函館で撮影されたとされている洋装の写真です。
また、背後に誠の旗を配したのは僕の遊びです<m(_ _)m>。
この時期の歳三は、函館新政府の陸軍奉行並の役職にあり、既に新選組の副長ではありませんでした。
しかし、司馬遼太郎氏の小説「燃えよ剣」では、土方歳三はその最期に「新選組副長と名乗って死んだ」ということになっています。
また、この小説を原作とした栗塚 旭さん主演のテレビドラマでは、新選組で下男として働いていた人が命懸けで届けて来た「誠の旗」を身体に巻き付けて、最期の決戦に臨むという筋立てになっていました。
勿論、どちらも完全な作り話ですが、あの小説とドラマには、それが真実であるような迫力がありました。
なんと興味深いお話でしょう!今日も勉強させて頂きました。
ミゾソバという花も、土方さんとのつながりも、石田散薬のことも全く知りませんでした。
お花もかわいらしいですが、土方さんのフィギュアがいいですね~。なかなかよくできていますね!旗の御蔭で凛々しさが倍増って感じ。
by m-tamago (2006-10-30 22:07)
おはようございます^^
ミゾソバ一つにもいろんなお話があるのですね~。そんな丈夫なお花だったとは知らなかったです。土方歳三のイメージはわたくしには栗塚旭そのものです^^
by (2006-10-31 05:27)
おはようございます。
一昨年、大河ドラマ人気にあやかり、壬生屯所後を見学してきました。
現代に生まれてよかったです。^^
それではー
by kei果 (2006-10-31 11:56)
大河「新撰組」はもう一昨年になるんですねぇ。
albireoさんの遊び心がnice!です。^^
by はるまきママ (2006-10-31 12:10)
土方歳三のお話、興味深く拝見しました。
新撰組の中核は武士出身でなかったものが多いので、
理想を求めより武士らしい生き方を貫いたのでしょうね。
新撰組のフィギュア、僕も欲しくなりました。(笑)
by (2006-10-31 13:45)
歳ちゃんですか~
by あかまる亭 (2006-10-31 14:49)
ミゾソバという植物、初めて知りました、
本当に葉が牛の額ですね、面白いです。
偽薬でも精神的な理由で効果があるそうですから、
正確には少しは効いたのかもしれませんね、
もちろん、この草に関する人々の印象がそれを支えているのだと思いますが。
by じゅん (2006-10-31 19:40)
私も 遊び心にほほえましく 嬉しくなりました ミゾソバのかわいらしさに 似ていらっしゃるかと思います
by さねさし (2006-10-31 21:13)
ミゾソバと牛額草が同じ。
牛額草と石田散薬との関係。
石田散薬と土方歳三との関係。
今回もとても興味深い話を教えてもらいました。
二枚目の画像、いいですねぇ。
by konkon (2006-10-31 21:48)
albireoさんが撮るとだんぜん美しく写りますね。
光が透けているようなミゾソバ…きれいです。
フィギュアもグーです。
by はてみ (2006-10-31 22:59)
つい先日、川原にたくさん咲いているミゾソバを見ました。こんなふうに、新撰組とからめて記事になさるとは、さすがです。やはり、写真もキレイですねぇ。
by sakamono (2006-11-01 07:44)
野に生える草草で、人間の役に立たないものは、まずないでしょうね。
by Baldhead1010 (2006-11-01 10:07)
「牛額草」。緑のきつねにも見えますね。
函館の歴史はまだいろいろ掘り下げうる糸口があるものですね。
by 春分 (2006-11-03 18:17)
記事楽しく読ませていただきました。ミゾソバのピンクのはお花じゃなかったのですね。石田散薬が昭和23年まであったのもビックリです。今もまだあるのでしょうか?albireoさんはたくさんのフィギュアをお持ちのようですね。
by penpen (2006-11-07 07:36)
ミソソバのお話し面白いです。
石田散薬って初めて聞きました。
by barbie (2006-11-07 16:16)