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蝶の夢 [昆虫]

                                     ネギ  葱  ユリ科  ネギ属

                           モンシロチョウ 紋白蝶  鱗翅目 シロチョウ科

 

畑の隅のネギ坊主。

ネギ坊主は、ネギの小さな花の集まりです。

蜜を求めてやって来たモンシロチョウは、次々と小さな花の蜜を吸いながら飛び回っています。

 

もう、翅が痛んでしまった蝶も、まだ若い蝶も、たった一つのネギ坊主に、沢山のモンシロチョウが集まってきました。

 


           穏やかな昼下がり

           柔らかな陽射し

           緩やかな夏の風


           時間が停止した

           静かな空間に

           白い蝶は羽ばたく


           解き放された夢が

           只ひたすらに自由に

           ゆったりと舞うように

 

中国の古典『荘子(そうじ)』という本に、こんな話が載っています。

  荘周(そうしゅう)夢に胡蝶(こちょう)()

昔、古代中国の思想家である荘子は、夢の中で一羽の蝶となりました。
喜んで舞い飛ぶ蝶となって、それをを心から楽しんでいたせいか、彼は自分が荘子であることさえも知りませんでした。
けれども、目が覚めたとたん、自分は明らかに荘子です。
それは、一体どう理解したらいいのでしょうか。
荘子が蝶になる夢を見たのでしょか。
それとも、蝶が荘子となる夢を見たのでしょうか。

 

何だか、奇妙な話ですが、昔はよく知られていた話で、日本の古典文学の中にも引用されていることがあります。

「夢が現実か、現実が夢か。つまり人生が何かはわかったものではないのだ」
中国文学者の故・諸橋轍次博士は、「中国古典名言事典」のこの項の最後にそう書かれています。


    ちなみに、題名にある「荘周」の「周」は、荘子の名前です。


おばあさんは、こんなおだやかな月夜の晩には、よくこちょうが人間にばけて、たずねることがあるものだという話を思いだしました。

                          小川未明  月夜とめがね

月の綺麗な夜、一人で針仕事をしていたおばあさんを、足にけがをした美しい少女が訪ねて来ました。けれど、香水の匂いのするその少女は、足を痛めた小さな蝶でした。

少女に化けた蝶は、やがて裏の花園で、どこへともなく消え去ってしまいます。

小川未明のこの童話は、ただそれだけのお話です。
でも、僕にとっては、不思議に心惹かれる物語です。

もう、何十年も前に読んだ物語ですが、今改めて読んでみても、何故かあの頃と同じように、不思議な魅力を感じました。

 

僕は、蝶という昆虫自体に、どこか幻想的で不思議な魅力を感じているのかも知れません・・・。

 

 

参考文献
 荘 子 第一冊 内篇 金谷治 訳注  岩波文庫

 中国古典名言事典 諸橋轍次 著 講談社学術文庫

 小川未明童話集   小川未明 著    新潮文庫

 


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コメント 19

はてみ

記事のタイトルを見て、すぐ荘子が蝶になる胡蝶の夢の話を思い浮かべました。そして「胡蝶」という言葉から連想したのも、小川未明のこの話だったような気がします。未明の童話は独特で、美しいけどちょっとおそろしいようなところがありますね。読み直してみよう。
by はてみ (2006-06-27 00:24) 

penpen

どちらのお話も知らないのですが、蝶々が夢の中を舞っている様に見えます。翅の傷ついた蝶を見かけるとこのお話を思い出しそうです。治してあげることは出来ないけれど。
by penpen (2006-06-27 07:18) 

Baldhead1010

隣の香川県で、タマネギの種を採取するのに、タマネギの花を咲かせていましたが、大きいのにびっくりしました。
by Baldhead1010 (2006-06-27 07:48) 

uminokajin

単に飛んでるのではなくネギ坊主に集まってくるその動きがすごいです。
by uminokajin (2006-06-27 08:16) 

sera

すごいきれいなコラボー、白い蝶と白い花~

>解き放された夢が
>只ひたすらに自由に
>ゆったりと舞うように

小宇宙、、、
by sera (2006-06-27 10:02) 

ミヤ

蝶に、そんな神秘的な話があるのを知りませんでした。
また「臭い」の代名詞のネギ坊主に、こんなに蝶が集まるのが不思議ですね。
by ミヤ (2006-06-27 10:48) 

詩織

蝶は、美しくも儚い、というイメージがあります。
それが覚めてしまう夢や、消え去ってゆく姿の話と、とても合い、
少し切なくなります。

蝶というと、甘い香りのする花畑を舞うイメージですが、
ネギ坊主の花の蜜も吸うとは…
というか、ネギ坊主は、小さな花の集まりだと、初めて知りました(^^;)
by 詩織 (2006-06-27 11:23) 

YAYA

いろんなお話があるんですね。
ねぎぼうずに蝶々が・・・誰かがきているのかも・・・
とても幻想的です。
by YAYA (2006-06-27 11:48) 

m-tamago

蝶は儚い感じがしますね。ヒラヒラと短い命をきらめかせるからでしょうか。
モンシロチョウがこんなにたくさん葱坊主に、とても美しいですね。
by m-tamago (2006-06-27 12:08) 

「蝶の夢」、タイトルもお写真もお話も、どれをとっても
柔らかくて幻想的で、とても素敵です☆
小川未明さんの童話、探して読んでみようと思います。
「ネギ坊主」って小さなお花の集まりだったんですね。
お花っていうと可愛らしくて女性的なイメージがあるのですが、
「坊主」って、ちょっと愛嬌があって面白いですね。
by (2006-06-27 12:34) 

Silvermac

モンシロチョウと葱坊主、不思議な取り合わせですね。ネキ木の匂いに引き寄せられるのでしょうか。
by Silvermac (2006-06-27 16:18) 

こんばんは^^
葱坊主って美味しいのかしら・・・ 蝶はもっと綺麗なお花に飛んでいくというようなイメージがあります。先日登った息吹山にもアザミに黄色い蝶が群れて飛んでいました。白と白のコラボもいいですがアザミの紫と黄色の蝶もいいものです^^
by (2006-06-27 21:00) 

Runa

可愛いねぎ坊主さんに 白い蝶が たくさん集まってきてる。
素敵な情景です。
実家の ねぎも ネギ坊主さんに なっていました。
by Runa (2006-06-27 21:38) 

atom

飛んでるところ、見事ですね。
我が家の葱坊主には何も寄ってきません。
by atom (2006-06-28 01:30) 

mippimama

モンシロチョウの飛んでいるところ、お見事です!!
ひらひら飛んでる姿が、美しい彡☆
by mippimama (2006-06-28 09:44) 

さねさし

幻想的な お写真に 読みたくなるお話 そして 蝶も舞ひ夢も舞う ゆったりといい刻を味わいました
by さねさし (2006-06-28 23:04) 

じゅん

葱坊主とモンシロチョウ、なんだか奇妙で美しい眺めに見えます。
僕も夢を記事にしている関係上、荘子の話には共感を憶えていました。
夢か現か幻か、どれも真実で、どれも嘘なのかもしれませんね。
by じゅん (2006-06-29 17:24) 

モンシロチョウとネギ坊主、夢の世界のように可愛らしいですね。
by (2006-06-29 17:33) 

モンシロチョウと胡蝶の夢の取り合わせは、とても素敵でした。
そう言えば、中島敦の「南島譚」にも、夢と現実が入り乱れる話がのっていましたね。
by (2006-06-29 21:57) 

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