世界遺産からのSOS [展覧会]
上野にある、東京芸術大学の大学美術館で、「世界遺産からのSOS‐アジア危機遺産からのメッセージ」と言う、写真展が開かれています。
戦争・自然災害・世界のグローバル化。
それらが、様々な世界遺産を危機に陥れているといいます。
例えば、ヒンズー教と仏教に対する厚い信仰に支えられ、保たれて来た、
ヒマラヤの町カトマンズ。
衛星放送や、インターネットがもたらす過剰な情報に翻弄される人たちの中には、
伝統的な生活や、信仰を見失う者もいて、古い寺院が荒廃に瀕しているそうです。
その他にも、様々な危機的状況にある世界遺産。
中でも、僕の心に響いたのは、タリバンとアルカイダによって破壊された、
バーミヤン大仏の在りし日の姿でした。
そして、展示されていた バーミヤンに暮らす人々の写真の中に、親戚の結婚式に
お祝いの贈り物の山羊を連れて、おめかしをして出掛けるという可憐な少女の姿がありました。
その写真には、どこにも戦争の状況は写ってはいません。
でも、僕はその写真を見て、涙が出そうになりました。
その背後にある、環境にも人にも危機的な状況。
そこに生きている、あるいは生きて行かねばならないその少女の、
可憐な、しかし強いまなざし・・・。
会場を一回りして来た出口の近くに、募金箱が置かれていました。
その側に、さっきの少女の写真が、改めて展示されていました。
僅かですが、僕はそこに募金をして、「世界遺産からのSOS」の会場から出て来ました。
外に出て来ると、どこにも瓦礫などない、平和な日本があります。
でも、日本もまた、本当に豊かで繁栄しているのでしょうか・・・。
東京国立博物館の向かいの広場から、「ハレルヤ・・・」という
賛美歌が聞こえて来ました。
上野公園の植え込みの中に、ブルー・シートのテントを張って暮らす
ホームレスの人たちに、食事を届けている韓国系キリスト教会の人たちが
集会を開いているのでした。
ホームレスは、そうなった人たちの責任だと考える人もいます。
でも、僕は単純にそうだとは思いません。
実態の解らないグローバリズムから、いつの間にか生じた二極化。
そんな状況で、取り残されてしまう人がいるとしたら、
それは、政治の責任でもあるはずです。
ほんの少しの、切ない思いを抱いて、
僕は、東京国立博物館に展示された仏像の前に立っていました。
この切なさを消してくれそうな、優しい表情をした、十一面観音の前に・・・。
こんな絵本の展覧会も開かれていました。
まだ、随分先までやっているので、また今度ということにしました・・・。
たとえば、いま年金をもらえない、或いはほんとに小額しかもらえない高齢者の方がいますが、その方たちを「ちゃんと払ってこなかった自分たちの責任だ」と単純に切り捨てるわけにはいかないと、私も思います。行政の不手際や政治の無責任もあるし、今後については私自身も責めを負うべきだと思っています。理想論でも、方向は「みんなそれぞれ幸せ」を目指したいです。
by はてみ (2006-01-30 01:03)
世の中は平等じゃない。生まれた時の本人の条件・環境は大きな不平等の真っ只中にあるので、それを人間社会がどう是正し、それぞれの幸せに結び付けていくか......他国の不幸は自国の痛みに繋がっているべきなのに、しばしばそういう視点を忘れて生きていることが多いです。ブログを拝見して私自身も反省させられました。
by SomethingPrecious (2006-01-30 08:22)
芸大美術館でこういう展示会をしているんですか。知らなかった。
日本も外見上は平和なように見えて、人々の心の中は平和でないと思います。私自身を考えてもそう思うこともあります。
今、皆が感謝と思いやりをもって過ごすことが求められていると思います。当たり前のようで難しい。相手のために何ができるのか、どうしたら笑顔になれるのか。
by m-tamago (2006-01-30 12:47)
土曜日に練習があって大学に行ってきたのですが、長引いてしまって
この写真展に立ち寄ることができませんでした…。
いろいろなことが、「自分に関係ない」じゃなくて、「みんなの責任だから」と
考えられる社会にしてゆきたいですよね。
2月の終わり頃からは都美館と芸大美術館で卒展が始まると思うので、
もしご都合がよろしかったら観に行ってあげてくださいm(_ _)m
by (2006-01-30 12:54)
沢山考えるのは辛いから、つい単純に善悪で決めてしまいそうになりますが、
どんなことにも理由があって、その多くは中々複雑なものだと思います。
怒ってしまう前に、考える。簡単そうで難しいですね。
by じゅん (2006-01-30 13:21)
社会の矛盾って、新聞を読んでもテレビをみても毎日のように感じて
いますし、こうやって意見を言うことがこの国では許されていますね。
考える余地を与えない国にならないように、やさしさは要らない国に
ならないようにしたいですね。一人の力って本当に小さいですけれど。
by くみみん (2006-01-30 18:57)
シンガポールでは政府主導でホームレスを出さないようにしているそうです。
さまざまなサポートシステムがあると聞きました。
by (2006-01-30 20:22)
私は、「ホームレス本人ばかりが悪いわけではない」より「本人以外ばかりが悪いわけではない」派かもしれません。生活保護制度もあるし。
でも、何より、目を向けるのが怖いのかもしれません。
by 春分 (2006-01-30 22:07)
albireo さまの この記事だけでも 強烈な心痛む メッセージ伝わりましたとともに albireo さまのおやさしさに救われた気になりました
by さねさし (2006-01-31 10:19)
後世に残したいもの、たくさんあります。でも、思想の違いでいとも簡単に壊し、壊されてしまう。悲しいことです。最近ホームレスの青テントを強制的に壊している映像をTVは伝えていました。おっしゃるとおりだと思います。
by ziziblog (2006-01-31 13:44)
その少女は、そんな社会情勢の中でも、その瞬間は幸せを感じているのでしょうね。
何気ない日常。
大きな背景の中にある戦争。
そのギャップが、いたたまれません。
私たちは生きていく。
そんなメッセージを受けました。
albireoさんの記事で。
追伸:・・確かに。同じ日に絵本の展覧会を見るって気分じゃないですね。また、後日、楽しみにしています。私も。
by ナナ (2006-01-31 22:03)
昨年上野へ行った時に、ブルーシートのテントをたくさん見かけました。
こんな寒い冬はどうやって暮らしていらっしゃるのでしょうね。
絵本展7月まであるのですね。
by (2006-02-01 09:25)
以前琵琶湖の花火大会に行った時、橋の下で見ていると多分普段そこに暮らしていらっしゃる人と思うのですが、ダンボールを貸して下さいました。普通に優しい方たちでした。とっても嬉しかったです。
by penpen (2006-02-02 21:35)