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江戸時代の奈良観光案内 [歴史・伝説]

                                                        奈良公園 夕景

去年と一昨年は、八月に奈良へ行きましたが、今年は、ついに行くことが出来ませんでした。

そこで、せめてもと、幻の奈良旅行に出掛けることにしました。
但し、行く先は現在の奈良ではなく、江戸時代の奈良。今から、290年から、300年ほど昔の奈良へ、行って来ることにしようと思います。

旅の案内は、僕の手もとにある『南都寺社名所記』という、江戸時代に発行された、ほぼB4版サイズの一枚物の旅行案内です。

 

この『南都寺社名所記』には、現在の奈良公園周辺の社寺の案内が載っています。
主なところは、猿沢の池・興福寺・春日大社・東大寺などです。

 

挿絵として、東大寺の大仏殿の絵が描かれているだけで、後はそれぞれのお堂などに祀られている仏様の名前が、細々と書き込まれています。

ここに掲載した画像では、サイズが小さいので、あまり良く分らないかも知れません。
もし、興味をお持ちになられた方は、僕のHPに大きな画像を置いてありますので、宜しければご覧下さい。
 
My HP ←こちらから、『版本』のページをご覧下さい。

             再建工事中の中金堂越しの、五重塔と東金堂

この『南都寺社名所記』で、興福寺の項目に入ると、いきなり『南大門』の事が書かれています。
しかし、興福寺へ行かれたことのある方なら、多分ご存知かも知れませんが、現在の興福寺には南大門はありません。これは、江戸時代の享保2年(1717)に、火災で焼け落ちています。
その他にも、中門・南円堂・西金堂・中金堂・講堂等、その時に消失した建物が残らず載っています。
それが、288年前の事なので、この『南都寺社名所記』が作られたのは、290年以上は昔だろうと考えられるわけです。

その際、焼け落ちた中で、江戸時代に再建されたのは、中金堂と南円堂くらいで、後は再建されることなく明治時代を迎えます。

そして、また明治の「神仏分離令」により、興福寺でも「食堂(じきどう)」等の建物が失われて行きました。
現在は国宝となっている「五重塔」は、一旦焼き払われることに決まった後、危うく難を逃れて残されることになったものです。

 

                        数年前に再建された南円堂

南円堂は、享保の火事の後、直ちに立て直されていますが、現在建っているものは、数年前に再建された建物です。

また、現在は国宝館に収められている『阿修羅像』も、この時被災した『西金堂』に安置されていた諸仏の中の一体でした。阿修羅を含む八部衆などは、主に麻布と漆を使う『脱乾漆』という技法で作られていて、非常に軽量である為、火災の際も手早く運び出せたのかも知れません。

しかし、この『南都寺社名所記』には、阿修羅像のことは、残念ながら一切記載されていません。

 

僕にとって、夏の時期に奈良公園を歩く楽しみの一つは、可愛い子鹿の姿を見ることです。
この時期には、漸く乳離れをし始める頃の子鹿が、母鹿に甘える姿がとても可愛いものです。

奈良の鹿は、当然江戸時代以前から、この辺りにいた訳ですが、『南都寺社名所記』では、鹿のことにも触れられてはいません。


江戸時代の奈良観光案内である『南都寺社名所記』には、まだ春日大社や東大寺についても記載されています。
特に、東大寺については、大仏様の顔や手足のサイズまで書かれていて、なかなか面白いのですが、まだ解読文が完成出来ていません。

大分以前のことですが、ラジオの番組で、永 六輔さんが「旅行のガイドブックと言うものは、旅に出る前に読むものではなく、帰ってきてから『ああ、ここも間違っている、あそこも間違っている』と、間違い探しをして楽しむものだ」という意味のことを仰って居られました。実は、この『南都寺社名所記』にも、あちこちと間違いの箇所が見つけられます。
その為に、解読し難い面もあるのですが、永さんの言葉を思い出して、そんなことも楽しみながら解読するのも、案外面白いものです。

いずれ、解読が出来ましたら、また続きを記事にして見ようと思っています。
その時は、また宜しくお願い致します。

 

 


タグ:奈良 興福寺 鹿
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コメント 24

hiro

幻の奈良旅行、290年前の世界が甦って来るわけですね。全部解読できたら面白いでしょうね。その時を楽しみに待っています。
by hiro (2005-08-27 16:05) 

じゅん

現在の奈良という場所に行くだけでなく、
過去の動きも通して現在の奈良を見るという、3次元的な見方で、
面白かったです。
by じゅん (2005-08-27 16:24) 

koza

ボクの叶わぬ夢,それは奈良県をすべてほじくり返すことです。
きっと,日本の歴史がくつがえる発見が多そう。
by koza (2005-08-27 16:50) 

gillman

奈良か?
修学旅行以来行っていないな
ヴァーチャルな旅もいいですね
by gillman (2005-08-27 17:04) 

この案内、読めるんですか?
すごい!
by (2005-08-27 19:34) 

タイムトラベルをしたようで、とても面白かったです。
記事を拝見していて、阿修羅像が無事で本当に良かったと思いました。
また、「神仏分離令」は、本当に愚行であったと思います。
せっかく調和しているものを無理遣り引き離すとは、愚の骨頂です。
現在もその影響下にあるように思えてなりません。
by (2005-08-27 20:03) 

300年前と言うと、凄い昔って気もしますが、案外そうでもないですね。
でもこの字面を見るだけでわたくしは頭が痛くなりそうです。
奈良も17~8年行っていません。
by (2005-08-27 20:06) 

さねさし

興福寺で 阿修羅像を拝観しましたときの 感動を思い出させていただきました はなしの導入から 古文書 鹿 永六輔さんのお話で閉められるところ 素晴らしいですね HPの 古文書 やっと最初の四分の一だけ ざっと 読みました 間違いがあったり 抜けていたりの説明や 当時と今の違いなど深くじっくり読むと面白そうですね またHPへ伺います
by さねさし (2005-08-27 20:27) 

shareki

古文書、読めるんですね、凄いなぁ、素晴らしいです。
奈良は名阪国道で少し足を伸ばせば日帰りできる距離なので、
今度車で行ってみようと思います。
by shareki (2005-08-27 21:10) 

あやこ

奈良へは、中学の修学旅行で行っただけなんですよー
今 行ったら、違ったふうにみえるのだろうなぁと思います。
by あやこ (2005-08-27 21:56) 

Runa

現代の奈良と 昔の奈良と 両方見れて得した気分に
なりました。
奈良は 3度くらい 行った事があります。
だから 少し懐かしいな~と 記憶を たどりながら見ていました。
小鹿 可愛いですね。
宮島も 鹿が 多いです。
by Runa (2005-08-27 23:28) 

INOUE

今度は、平安時代の「平安京旅行記」をお願いしたいです。
出来れば室町時代もですが。
自宅にも多くの古文書があるのですが、全く読むことが出来ません。
by INOUE (2005-08-27 23:41) 

Silvermac

奈良は1年近く滞在しました。「日本」そのものですね。
by Silvermac (2005-08-27 23:41) 

albireo

◇ hiro さん はじめまして、ありがとうございます。
文字そのものは、既に大半は読めているのですが、建物や施設などの今は失われたものもあって、なかなか意味の分らないことが多く、解読には時間が掛かりそうです。
でも、ある程度目処が付いたら、また記事にしますので、その時は是非宜しくお願いいたします。

◇ じゅん さん ありがとうございます。
もうちょっと、この資料の内容に踏み込めば良かったのですが、なにしろ仏像の名前の羅列が多く、思うように書けませんでした。
面白いと仰って頂ければ、とても嬉しいです。

◇ こざき さん ありがとうございます。
奈良は、掘り返せば、どこでも遺跡でしょうね。
でも、宮内庁で管理している陵墓と陵墓参考地は、掘らせて貰えないですね・・・。

◇ gillman さん ありがとうございます。
京都へ行く人は多くても、奈良へは行かないようですね。
僕は、逆に奈良へ行くことが多いですが・・・。

◇ 吉井春樹 さん はじめまして、nice!ありがとうございます。

◇ tanaka-ma3 さん ありがとうございます。
古文書の解読は、20年も前に習ったのですが、時々字を眺めていないと、たちまち読めなくなります。
でも、外国の言葉ではなく、やはり日本語ですから。

◇ lapis さん ありがとうございます。
「神仏分離令」による「廃仏毀釈」では、多くの文化財を失いました。
戦前の国家神道は、今も妙な形で息づいているかもしれません。
でも、案外深い部分で、神仏混交時代の名残があったりもして、なかなか面白いものもありますよ。

◇ mimimomo さん ありがとうございます。
この観光案内の実物を手に取って見ると、確かに300年も遠い昔ではない気もします。
でも、一つの言葉の意味が分らずに、色々な資料を調べる事になると、やはり時の隔たりを感じることもあります。

◇ sanesasi さん ありがとうございます。2005-08-27 20:27)
文字は、 sanesasiさんの方が、間違いなく読めると思います。
ただ、仏像の名前なども、漢字でなく変体仮名で書いてあるので、意味が取れなかったりします。
興福寺の部分を読む為だけに、結構様々な資料が必要でした。でも、色々覚えられて楽しかったですよ。
是非、楽しみながら解読して頂けたらと思います。

◇ 渋樹 さん ありがとうございます。
古文書は、しばらく見ていないと読めなくなってしまいます。
それで、こういうものを見つけて来て、眺めています。
名古屋からなら、近いのですね!
僕は、千葉県からですが、日帰りが多いです・・・。

◇ あやこ さん ありがとうございます。
奈良はいいですよ!
京都も、勿論いいですし、僕も好きですが、奈良にはまた違った雰囲気があります。
ただ、京都のようなお洒落な感じは、望めないかも知れませんが・・・。

◇ Runa さん ありがとうございます。
奈良へはここ十数年、最低年に一度は行っています。
でも、厳島神社へは、いった事がなく、昨年の台風の被害を受ける前に行きたかったと、ちょっと残念に思っています。
そう言えば、宮島の鹿も、確か奈良から移したものだと聞いたように思いますが、どうだったでしょうか?

◇ INOUE さん ありがとうございます。
そういう資料が、手に入れば面白そうですね!
僕の所持している古文書類は、すべて古書店で購入したものです。
ご自宅に、古文書があるのは羨ましい限りです。
僕の手に入れた古文書も、元はどこかのお宅に保存されていたものの筈です。
それを、誰かが不要なものとして売り払ったと言うことだと思います。
でも、売り払えばまだいい方で、中には風呂の焚き付けにした、という話も耳にしています。
INOUE さんでしたら、そのような心配は無用と思いますが、是非大切に保管して頂けますように、お願い致します。

◇ SilverMac さん ありがとうございます。
奈良には、古いものが比較的古いままに残っていますね。
by albireo (2005-08-28 00:15) 

maya

あやこさんと同じく、ワタシも奈良公園って
修学旅行以来行ってないです。。。今はどんな風にみえるかな?
by maya (2005-08-28 01:04) 

atom

奈良には中学の修学旅行でしか行ったことないので、行ってみたいです。
300年前から旅行ガイドブックがあったんですね。
by atom (2005-08-28 03:04) 

ichiro

奈良は不思議な気持ちにさせてくれます。。
いまもむかしも観光地なんですね。。
by ichiro (2005-08-28 09:23) 

Baldhead1010

歴史の重みを感じますね。
by Baldhead1010 (2005-08-28 15:58) 

IXY-nob

幻の奈良旅行!大作ですね。大仏殿の絵が今と同じで、すこし可笑しかったです(当然といえば当然なのですが)。私は近いので、秋の一日奈良も訪ねてみたいです。
by IXY-nob (2005-08-28 20:16) 

penpen

江戸時代から観光旅行があったのですね。奈良は広くていいですね。子鹿もかわいいです。古文書楽しそうですね。
by penpen (2005-08-28 21:05) 

rin

古文書の解読ができるなんて楽しいでしょうね。
奈良には、もう5年くらい行っていませんが好きな場所です。
橿原神宮などにも行ったことがあるのですが、albireoさんほどの知識があれば楽しみ方もまた違ったのだろうな。。。と思ってしまいました。
by rin (2005-08-29 00:32) 

ナナ

あ!なんか、albireoさんの十八番って感じの記事だ♪
書いていて、楽しかったでしょ?(笑)
by ナナ (2005-08-29 22:41) 

マユ

興福寺は、私にとっての奈良の「日常部分」。
ならまちに泊まって、五重塔を見ながら朝の珈琲を飲んで、まったりしているところに9時の鐘が鳴る。駅から宿に戻るときは、二条から猿沢池を通ってゆくか、興福寺と52段経由で戻るか。友人との待ち合わせはきまって、52段のふもとか南円堂の前にちょこんと座って。

なんで、こんなに好きなのでしょうね。
誰か、私の前世が見えますか。
by マユ (2005-08-30 15:27) 

albireo

◇maya さん ありがとうございます。
僕は、奈良が大好きで、最低年に一度は行っています。
もう何年かすると、興福寺の境内の様子は大きく変りますよ。

◇atom さん ありがとうございます。
あまり自由には、旅の出来なかった江戸時代も、信仰目的の旅は許されていました。
結構、色々な名所案内が出版されています。

◇ichiro さん ありがとうございます。
奈良へ行くと、違う時代に来たような気分になります。
江戸時代も、信仰のための旅は許されていたようです。

◇Baldhead1010 さん ありがとうございます。
奈良は空気まで、遠い遠い昔のままのような雰囲気です。

◇IXY-nob さん ありがとうございます。
いいですね、近くて!
IXY-nob さんも、阿修羅がお好きでしたよね。
会いに行かれたら、阿修羅さまによろしくお伝え下さい!

◇penpen さん ありがとうございます。
江戸時代は、本当は遊びの為の旅は、許されていませんでしたが、信仰目的なら許されたようです。
とは言っても、実際は遊びに行っていた訳ですが。
僕は、奈良公園の子鹿が大好きです。
古文書はいまだに難しいですが、楽しいです。

◇rin さん ありがとうございます。
何時までたっても、思うようには読めませんが、やはり楽しいです。
あまり知識がある訳ではないですが、仏像が大好きなので、奈良へ行くとワクワクします。

◇ ナナ さん ありがとうございます。
さすがナナさん!お見通しですね!
仰る通り、楽しかったですよ!
こう言う古い資料が大好きですし、興福寺は「興福寺友の会」に入会するほど、「阿修羅像」が、大好きですから!

◇マユ さん ありがとうございます。
興福寺はいいですね。興福寺だけは、五重塔・大御堂など、普段は非公開の建物にも一通り入ったことがあります。
しかし、僕が「興福寺友の会」に入会するほど、興福寺を好きな理由は、ひたすら「阿修羅」に尽きる訳ですが・・・。
どうやら マユさんは、前世は興福寺に関る人物だったようですね・・・。
by albireo (2005-08-31 22:07) 

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