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植物画世界の至宝展 [展覧会]

上野の東京藝術大学大学美術館で開催中の『植物画世界の至宝展』を観て来ました。

この展覧会では、英国王立園芸協会(RHS)の創立200年を記念して、RHSリンドリー図書館収蔵の植物画、約2万数千点の中から厳選された129点を展示しています。

RHSの所蔵する植物画は、長い間非公開にされて来ました。しかし、近年になって徐々に展覧会が開かれるようになり、今回の日本での公開は2万数千点中の129点とはいえ、これまでの最大規模の展示だということです。

今回の展示は、植物画の成り立ちから、現在までの状況を、「植物画の歴史」という観点から概観するものとなっています。

 

 

近代の植物画は、ルネッサンス期に、植物学的な正確さと写実性への追求から始まったということです。

それが、大航海時代に入ると、ヨーロッパ以外の世界からの情報が、大量にもたらされるようになり、多くの未知の植物もまた、ヨーロッパへと導入されるようになりました。
そうした新しい植物を紹介する媒体としての、園芸書やカタログの挿絵として、植物画の需要が拡大して行ったようです。
また、当時の石版画という新しい技術も、植物画の普及をより促して行きました。
さらには、ヨーロッパの王侯貴族たちの注目を受け、豪華な植物図譜が生み出されて行きました。

このような中で、「植物分野における科学と芸術の融合」という形で、「植物画」というジャンルが確立されました。

ところが、近代の印刷技術による、安価な書物の流通による質の低下と、写真という新しいテクノロジーの前に、やがて植物画は衰退して行きます。

しかし、1990年代に入り、植物画は見直されはじめ、復興を遂げることになります。
現代日本でもガーデニングブームの影響もあってか、植物画=ボタニカル・アートは、相当に普及している様子です。
数年前に刊行された、18~19世紀のフランスの画家ルドゥーテの『バラ図譜』の日本での復刻版が、かなりの高額であったにも係わらず、たちまちのうちに売り切れたことも、それを示しているように思われます。

この展覧会では、可憐で、華やかな色彩のスイートピーやチューリップ、瑞々しい質感を感じさせる果物などの、細密な描写の作品から、図鑑の絵のように、花や果実の断面を解説したものまで、様々な植物画を楽しむことが出来ます。
また、展示されている絵には、ツバキやボケなどの日本的な花も含まれていました。(上図、左下がツバキ)

以下のサイトで、詳しい案内と何点かの、作品を見ることが出来ます。

 東京藝術大学大学美術館
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/current_exhibitions_ja.htm#botanical
 

 

「植物画世界の至宝展」公式サイト
http://www.botanicalartjapan.com/index.html
「展示作品リスト」に、いくつかの画像が掲載されています。

 

                     『植物画世界の至宝展』 図録 表紙 
                           リリアン・スネリング画 キリ

 

会場案内

東京会場: 東京藝術大学大学美術館
会期: 平成17年6月11日(土)~7月18日(月)
開館時間:  10:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日: 月曜日(ただし7月18日は開館)
電話: (ハローダイヤル)03-5777-8600
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/current_exhibitions_ja.htm#botanical


巡回展 会場 

以下の情報は「東京藝術大学大学美術館」で配布されていた、リーフレットによるものです。
 
神戸会場: 神戸市立小磯記念美術館
会期:平成17年7月23日(土)~9月4日 (日)
電話:078-857-5880
http://www.city.kobe.jp/cityoffice/57/koiso_museum/

福岡会場: 全国都市緑化ふくおかフェア
             アイランド花どんたく
会期:平成17年10月22日(土)~11月20日 (日)
電話:092-720-3502
http://www.fukuoka-ryokukafair.jp/index.php   

                

◇◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇ 

以下は、今回の展覧会とは、直接の関係はありませんが、日本のボタニカルアート作品の掲載されているサイトの情報です。

日本での、植物画普及の一環として国立科学博物館「筑波実験植物園」では、毎年「植物画コンクール」を開催しています。
「筑波実験植物園」のサイトでは、その入選作品を見る事が出来ます。

筑波実験植物園
http://www.tbg.kahaku.go.jp/Tsukuba_Botanical_Garden/index.html

「植物画ギャラリー」→「検索」→「すべての作品を見る」で、画像リストが表示されます。

特に、小中学生の作品の素晴らしさには、驚かされます。

 


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コメント 13

albireo さん、こんばんは
充実した一時を過ごされたようですね。
僕も、「植物画世界の至宝展」には、すごく興味があるのですが、日程的に、見に行けそうもありません。とても羨ましいです。ポスターの左下の椿は、澁澤龍彦の「フローラ逍遥」の函に使われている絵ですね。このポスターを初めて見たとき、それに目がいきました。僕は、ボタニカル・アートに関心を持った時期が遅かったので、少し前まで簡単に手に入った本が絶版になっており、結構悔しい思いをしております。展覧会と関係がないことを書き連ねてしまい申し訳ありません。(苦笑)
ポスターの画像、ありがとうございました。リンク先も、とても楽しめました。
by (2005-06-27 23:47) 

ナナ

・・・感動
何にって?
albireoさんにです。
こんなに詳細を記してくださって、ありがとうございます☆
私も九州に来たら、いってみよう。
そう決めました。
by ナナ (2005-06-28 00:14) 

albireo

◇ lapis さん ありがとうございます。
東京近郊に住んでいると、こういう時だけは、恵まれていると感じます。
せめて、巡回展がもっと多くの会場で開催されればいいのですが、今回は二ケ所だけのようで、それも残念に思います。美術品の輸送は、なかなか大変なことのようですから、それも仕方のないことかも知れませんが・・・。

◇ ナナ さん ありがとうございます。
そう言って頂ければ、書いた甲斐があります。
イギリスでも、殆ど公開されていない作品もあるようです。
もし、行けるようでしたら、一見の価値はあると思います。

ナナさんが、この展覧会の情報をくれたことを、感謝しています。
by albireo (2005-06-28 00:36) 

Gotton Factory

小磯記念美術館で見れそうです。
絵や写真の展覧会へ行くのが好きなので、
こういう情報はうれしいです。ありがとうございます!
by Gotton Factory (2005-06-28 00:43) 

albireo

◇ Gotton Factory さん ありがとうございます。
お役に立てれば、嬉しく思います。
ナナさんへのコメントに書いたように、この情報は九州にお住まいのナナさんから、最初に頂いたものです。ブログを通じて、こういう情報の遣り取りが出来ることも、とても有り難いし、嬉しいことですね。
by albireo (2005-06-28 00:53) 

seedsbook

はじめまして。Lapisさんのブログから”植物画展”の文字に引かれてこちらにやって参りました。植物がも色いろあってとても楽しいジャンルですね。
時にはどうやったてこれはどうしちゃったのでしょう?と思うような絵にも出合います。私は時々古書市やのみの市で手ごろな複製や無名の銅板の植物画を買ったりしています。学校の理科室などにある植物、キノコなどの大きな図も中々好きです。また立ち寄らせていただきます。
by seedsbook (2005-06-28 00:57) 

あやこ

植物画って独特な雰囲気がありますよね^^
正確に捉えられているのですが、普通の絵とはまた違うような。。。
とても昔からあるものだということにも驚きです。
その知識の蓄積が今にも生かされているってスゴイことですよね^^
by あやこ (2005-06-28 08:28) 

penpen

小学生の描いた植物画見ました。繊細で色も鮮やかで綺麗でした。京都には来ないみたいですね
by penpen (2005-06-28 11:12) 

この植物が、どこかで見たような気がしますが、わかりません。ひょっとしたら本かな~。似たようなのがあるから。
それにしてもalbireoさんは凄い趣味の範囲が広いですね~~~。
by (2005-06-28 11:18) 

すごい絵描きますね。写真がない時代は写実的に何かを残そうとしたら絵を描くことしかないですから、技術や手法が発達したんですね。
by (2005-06-28 12:51) 

はるまきママ

ここ数年、ボタニカルアートがブームですね。
美術館までは足を運べそうにないので、筑波実験植物園のHPを見てきました。
小学生でもあんなに緻密な絵が描けるなんて・・・ちょっとショックでした。
by はるまきママ (2005-06-28 12:54) 

じゅん

絵と言うのは例え写実画であったとしても、
人間の感性のフィルターを通るので、雰囲気が違うでしょうね。
それは人間が五感で感じたものが混じっているので、写真を超えているともいえます。
by じゅん (2005-06-28 13:56) 

koza

すごく丁寧なガイドですね! リンクもふんだん。
そして、上の上の、はるまきママさん同様、
小学生の絵は…すげぇ! 
大人が思うよりもすごいレベルを持ってるんだ。
by koza (2005-06-28 14:17) 

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