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尾花を渡る風 [詩・歌]

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            風

                北原白秋

           一

        遠きもの

        まづ揺れて、

        つぎつぎに、

        目に揺れて、

        揺れ来るもの、

        風なりと思ふ間もなし、

        我いよよ揺られはじめぬ。


            二

        風吹けば風吹くがまま、

        我はただ揺られ揺られつ。

        揺られつつ、その風をまた、

        わがうしろ遥かにおくる。



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            三

        吹く風に揺れそよぐもの、

        目に満ちて、

        翔る鳥、

        ただ一羽、

        弧は描けど、

        揺れ揺れて、

        まだ、空の中(うち)。


            四

        吹く風の道に、

        驚きやまぬものあり、

        光り、また、暗みて、

        をりふし強く、急に強く、

        光り、また、暗む、―

        すべて秋、今は秋。


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            五

        輝けど、

        そは遠し。

        尾花吹く風。


              北原 白秋 『水墨集』「動き来るもの」より

                   岩波書店版 白秋全集 4 詩集 4  

                   岩波文庫版 北原白秋詩集(下)  所収

 

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「風」というこの詩は、著名な作品の多い白秋の詩としては、決してよく知られているものではないかも知れません。
けれど、風が好きな僕にとっては、とても心惹かれる作品の一つです。

秋の風は、熱い季節が過ぎ去った後であるせいか、どうしても寂しげな雰囲気が感じられます。

そう言えば、古今集にもこんな歌がありました。

   秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる

                    藤原 敏行   古今和歌集四・169

 

けれど、賑やかな夏が過ぎて、穏やかさを感じさせる秋は、僕の一番好きな季節かも知れません。

とは言っても、ここのところすべてが慌しく過ぎ去って行き、秋の雰囲気に浸っている気分でないことが、とても残念ではありますが・・・。

ですから、ブログの記事にだけでも、せめて秋を感じさせる写真を載せて置きたいと思います。

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菊は、やっぱり秋の花の代表格と言えるかも知れません。

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でも僕は、やっぱり野生種の野菊が好きです。

野菊には、幾つかの種類がありますが、この写真の野菊は「カントウヨメナ」です。 

 

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夏の夜に、白いヴェールのような花を咲かせる「カラスウリ」は、秋になるととても秋らしい果実を実らせます。 

 

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「ヒヨドリジョウゴ」も、未だ緑の実を残しながらも、少しづつ秋の色に染まろうとしています。

 

後少しの時間が過ぎれば、木々の紅葉も始まります。

もう、十一月。本当の秋が訪れる頃になりました。

 

 

ここ暫く、何故か慌しい日々が続いています。
何時も僕のブログへご訪問下さる皆さんのところへも、なかなかお邪魔出来ず、とても心苦しく思っております。
なんとか、明日からは少しづつでも、皆さんの記事を拝見させて頂くつもりでおりますので、何卒宜しくお願い申し上げます。 

 

参考図書

北原白秋詩集 下 (3) (岩波文庫 緑 48-6)

北原白秋詩集 下 (3) (岩波文庫 緑 48-6)

  • 作者: 北原 白秋
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2007/01
  • メディア: 文庫

 


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コメント 14

mimimomo

おはようございます^^
相変わらず美しいブログ~
北原白秋の詩、秋を感じますね~ 
albireoさんと違ってわたくしは秋は物悲しく、子供の頃ほど好きになれません(--;
決して嫌いな季節ではありませんが、、、特にこうして‘美景’の秋に触れると。
by mimimomo (2008-11-03 05:15) 

春分

落ち着きある季節ですが、風の詩に触れてみると変化する季節でもありますね
(言うまでもないのかもしれませんが、北原白秋って、やはりすごい)。
ふと強く吹く風を意識するとき、かつては何を思い、今は何を思うのか・・・。
大きな世界の中でほんの小さな人であることの再認識か。そうである喜びか。
by 春分 (2008-11-03 06:48) 

sakamono

ススキが秋の陽に照り映える様は、好きな風景の1つです。最近、急に冷え込んできて、たしかに自分もなんとなく、物寂しいような気分になっています。秋を十分に感じられる記事を拝見しました^^。
by sakamono (2008-11-03 09:54) 

お茶屋

本当に美しい感じ・・・☆
まさにnice!です♪
by お茶屋 (2008-11-03 11:49) 

lapis

いつの間にかもう11月になってしまいました。
まさに「すべて秋、今は秋。」といった感じですね。
お忙しそうですが、寒い日が続きますので、どうかご無理をなさいませんように。
by lapis (2008-11-03 19:31) 

sanesasi

ほんとにいい芒のお写真 私の一番好きなものは 花よりもススキですので 別名hanasusuk とつけております

我が家に今年ひと本の芒が植えたのでもなく 穂が出ました もう嬉しくて でもご近所の人は不思議に思われているみたいで 悲しくなります 

いい詩をご紹介していただきありがとうございました ぜひこの詩を 作品にしたくなりました

ヒヨドリジョウゴのお写真を拝見して 予定変更して 庭のヒヨドリジョウゴの実をUPいたしました 私のはいつまで経ってもぼんやりしている写真です


カラスウリの花 今年は沢山咲きましたが 実が見つからなくて寂しい限りです


by sanesasi (2008-11-03 20:23) 

SilverMac

自然現象に鋭い感性が表れるのは日本人の特性でしょうか。
by SilverMac (2008-11-03 21:54) 

ichii

真っ白でステキな芒ですね。
ススキは、子どもの頃から何故か好きです。
私が近所で見かけるススキは茶色く枯れて、ぼそぼそしたものばかり。
これはとても美しいすすきです。
民芸品とかで、ススキのフクロウとかありましたね。
これで作ったら、ふわふわの上等なフクロウが出来そう。
by ichii (2008-11-03 23:27) 

konkon

詩と写真の間を風が吹き渡っていく・・・素晴しいページに酔いしれています。
by konkon (2008-11-04 18:05) 

oita

はじめまして
ツルハナナス(やまほろし)をうえようと思っていますが木の近くにうえると木の成長をさまたげるでしょうか。鉢に植えてから地面にうえたほうがいいでしょうか
by oita (2008-11-08 06:51) 

albireo

oita さん、はじめまして。
僕は、一枝頂いて来たツルハナナスを小さな鉢に挿して置きましたが、今は鉢の底から地面に根を張ってしまっています。
かなり繁殖力は強いようですが、他の木の成長をさまたげるかどうかは、詳しいことは済みませんが分かりません。
でも、家の庭の木で見る限りでは、多分そのようなことはないと思いますが・・・。

また、以前の記事にも書きましたが、「やまほろし」というのは、ツルハナナスとは別の植物ですから、その名前を混同して使われないことをおすすめします。
by albireo (2008-11-08 22:17) 

oita

ありがとうございます
by oita (2008-11-09 08:31) 

koyuri

ご無沙汰してる間に11月に突入してました。
最近、ずーーっと仕事が忙しくって、ゆっくり景色を見るような時間もなかったけど、ここにきて、なんだか秋を満喫できたみたいで、得した気分です。(笑)
by koyuri (2008-11-10 01:46) 

はるまきママ

ここ数日寒くて、もう冬がきたのかと思ってましたが
こちらのページには秋が沢山ですね。^^
ススキもカラスウリも、今期はまだお目にかかっていません・・・
by はるまきママ (2008-11-10 11:59) 

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