妻沼聖天山歓喜院 [社寺]
11月13日に、埼玉県熊谷市妻沼にある、「妻沼聖天山歓喜院(めぬましょうでんざんかんぎいん)」へ行って来ました。
元々は、父親と秩父へ行く予定でいたのですが、予定を立てていた日が、台風の影響で雨天になってしまったり、車の車検があったりして、行きそびれてしまっていました。
そのうちに、僕が出掛けている時に、父がテレビで「妻沼聖天山歓喜院」の事を知ったようで、「熊谷の方に見事な彫刻のあるお寺があるらしいけれど知っているか」と聞かれました。それなら多分「聖天山歓喜院」の事ではないかと言うと、今回は秩父よりもそこへ行ってみたいというので、出掛けることになった次第です。
父親は、この9月で88歳を迎え、2007年の12月に発症した脳梗塞の後遺症のリハビリが今も続いている中で、このような好奇心を失わずにいてくれることは、子供としては嬉しいことと考えていいと思っています。
このお寺は、元々は平安時代に創建されましたが、幾度かの再興の後、江戸時代にも火事で焼け、享保から宝暦年間頃に、見事な彫刻を施した本殿が再建されています。
しかし、長い年月のうちに、壁面彫刻の彩色が剥げ落ちていましが、2003年から2011年に掛けて、大掛かりな修復工事行われ、造立当時の見事な彩色が復元されました。
その後、2012年には、本殿が国宝指定されています。
国宝としての登録名称は「歓喜院聖天堂」と言うそうで、「聖天山歓喜院」という元々のお寺の名称とは反転したような名称になっています。
国宝に指定された2012年には、何度かテレビのニュース番組などでも紹介されており、僕はそれを見て記憶していたという訳です。
当日は、天気が良すぎたこともあり、写真の陰影が強過ぎて、記事に載せられないものもありますが、比較的綺麗に撮れたものを、10枚ほど載せて置くことにします。
この彫刻は、入場券を兼ねた二つ折りの小冊子の解説に依れば、一見鷲が猿を捕らえた場面のようですが、実際には川に落ちそうになった猿を、鷲が助けるところなのだそうです。
つまり、この木登りの巧みさに慢心して、木から落ちた猿は、慢心して堕落した人間を表しており、鷲は堕落しようとする人間を救う、このお寺の本尊である「聖天様」を表しているということです。
この彫刻の中には、七福神と思われる姿が、度々描かれていますが、多分右側の老人は鹿を連れているので、寿老人であろうと思われます。
碁を打っている人たちも、そう思って見ると、七福神のどなたかのようにも見えて来ます。
これは、双六をしているところでしょうか。
双六と言っても、現在の「絵双六」ではなく、その源流となったとされる、「盤双六」というゲームです。
元々は、ヨーロッパの「バックギャモン」というボードゲームが、7世紀頃に中国経由で日本に伝わったものだと言うことです。
この彫刻が、僕は気になるのですが、左の女性が担いでいるものが、楽器の琵琶だとすると、弁才天さまかも知れません。右側の女性は、宝珠と思われるものを持っているようなので、吉祥天さまかも知れません。
普通、七福神の中では弁才天が紅一点とされていますが、寿老人と福禄寿を同一の尊像とする説もあり、その場合には福禄寿を省いて、吉祥天を七福神のメンバーとする例もあるそうです。
「歓喜院聖天堂」では、ボランティアの方に依る説明が、随時行われているそうですが、今回はタイミングが合わず、解説を聞くことが出来ませんでした。
写真を撮って来て、改めて見てみると、一体どういう場面だろう?と思うものが多々あって、解説を聞けなかったことが些か悔やまれます。
ここに行くに当たって、父親を乗せた車椅子を押して行けるのかどうか、と些か思い悩みましたが、「聖天山歓喜院 車椅子」のキーワードででネット検索をしてみると…
【車椅子の旅】妻沼聖天山(歓喜院) - 移動問題研究室 と言うサイトが見付かりました。
このサイトには、車椅子で通貨可能なルートの事、障碍者用トイレの有無に就いてまで、恐らくは自ら車椅子で移動して確認したと思われる、詳しい情報が載っていました。
行って見ると、実際にその通りの状況で、安心して車椅子を押しての移動が出来ました。
このサイトで、行って見たい他の社寺の幾つかを検索してみると、その殆どで、詳しい情報を得ることが出来ました。
このサイトを、作成・運用されている方たちに、心から感謝致します。本当に、有難う御座いました。
入場券を兼ねた二つ折りの小冊子の中に記されていた注意事項の中で、撮影は許可されていましたが、「営利目的で使用する場合は聖天山の文書による認定を受けて下さい」とも書かれていました。
このブログは、言うまでもなく営利目的ではありませんが、些か気になったので、電話で問い合わせてみました。電話に出てくれた女性に、ブログに載せたい旨を説明すると、「はい、構いませんよ」と答えて下さったうえ「ご参拝有難う御座いました」と言って下さったので、安心して記事を書くことが出来ました。
境内では、菊展を開催していて、たった一体だけですが、菊人形も展示されていました。
子供の頃、蒲田に住んでいた時期には、よく家族で菊人形を観に行きましたが、大人になってからは、菊人形を観る機会はほとんどなく、かなり久し振りに観る菊人形でした。
この人物は、このお寺の開基とされる、平家の武将で「斎藤別当実盛(さいとうべっとうさねもり)」という人物です。
境内には、このような銅像もあります。
同じようなポーズを執っていますが、これは年老いて白くなった髪と髭を、鏡を見ながら、墨で黒く染めようとしている場面です。
かなり以前の事ですが、「実盛(さねもり)」と言う、能を観たことがあります。
その能の物語に依れば、既に老齢となった実盛は、源平の合戦で、武将としての最期のひと花を咲かせようと、戦に出陣しようとします。しかし、このまっ白な髪と髭では、老人と侮られてしまうと考え、髪と髭を墨で黒く染めて出陣しました。
しかし、激しい戦いの末に、実盛は源氏の大将「木曽義仲」の郎党(家来)に討たれてしまいます。その時、誰の首なのか分からない中で、「実盛公が髪を染めて出陣した」という噂が伝わっていたため、念のために首を池の水で洗ってみると、墨が流れ落ち、首の主が「斎藤別当実盛公」であったことが発覚します。
実は、実盛は元々は源氏の武将で、源義朝(義経の父)の家来でしたが、義朝が討ち死にした後、所領等を守るために平家の武将に鞍替えしていました。
実盛は、嘗て源氏についていた頃に、源氏の内紛で殺されかかった未だ幼い木曽義仲を救い出して、長野県の木曽へ落ち延びさせ、命を救ったと言う経緯があります。
その為、取った首が実盛のものと知った木曽義仲は、命の恩人を討ってしまったことを、深く悔やみ嘆いたと言うことです。
能「実盛」では、実盛の幽霊が現れ、上に挙げたような物語を、舞い・語って見せてくれます。
今回の、熊谷までのドライブでは、カーナビやスマートフォンの情報では、片道2時間と数分で着くという情報が得られました。しかし、現実にはかなり酷い渋滞に巻き込まれ、往復ともに倍以上の時間が掛かったうえ、持っていたカーナビの情報が古く、高速道路から降りるインターチェンジの位置が、些か変化しており、運転していながら、少しばかり慌てる場面もありました。
それでも、この「歓喜院聖天堂」 の彫刻の素晴らしさの為、来年の春になったら、もう一度行って見ようかと、父親と共に計画を立てるつもりでいます。
その際に、ボランティアガイドの方の詳しい説明が聴けて、もう少しいい写真が撮れたら、改めてブログに載せたいと思います。
こんな細かな細工を何度も復元とは・・
日本人にしかできない技かもしれませんね。
by ぜふ (2014-11-21 07:03)
慢心して堕落しても、助けてくれるなんてありがたいですね(^_^)
by mitu (2014-11-21 10:55)
こんにちは^^
88歳でもまだ好奇心を失わず・・・わが夫婦、爪の垢でも煎じて飲まなければ・・・最近とみに新しいことにチャレンジする意欲減退(__;
この彩色はすごいですね。日光を思い出しました。
彫刻で表されたそれぞれが面白いですね。物語があるのですね。
by mimimomo (2014-11-21 14:50)
こういう彫り物の飾り(?)、今まで漫然と眺めていましたが、いろんな場面が
描かれていて、その1シーンに物語があるんですね。
今度、気をつけて見てみよう^^。
by sakamono (2014-11-22 10:55)
お父様が病気で倒れてからも好奇心を持ち続けていらっしゃるのは、とてもいいことですね。私の父は脳梗塞を繰り返し、腎不全もあって、認知症が進んでしまい、亡くなる前は知的好奇心を失ってしまっていました。車椅子を使っていても、外出するのはご苦労もおありだと思いますが、来年はぜひ解説も聞きに行っていただきたいと思います。ところで鷲は猿を食べようとしているのだと思い、すごいなあと一瞬驚いてしまいました。
by はてみ (2014-11-22 13:09)
実盛の話まで、今回とても読みごたえがありました。
by はてみ (2014-11-22 13:11)
細かい部分まで、とてもよく表現されてますよね。
by sasasa (2014-11-23 20:16)
長い期間をかけて修復いただけあって、
彫刻がきらびやかですね。
1つ1つの彫刻の意味が判ったら
より興味を持って眺めることが出来るでしょうね。
by きまじめさん (2014-11-24 22:48)
おはようございます^^
再びお邪魔しま~~~す。
23日の日、ご訪問しようと思って忙しさにかまけて…それっきりになってしまいました(反省)
お誕生日おめでとうございます♪ すみませんかなり遅くなって<(__)>
by mimimomo (2014-12-01 06:43)