鎌倉時代の仏像 [仏像]
木造菩薩立像(重要文化財)
金泥塗り・彩色・切金、玉眼
高104.5台座高34.8 鎌倉時代・13世紀
上野のトーハク(東京国立博物館)の仏像です。
トーハク恒例の夏休み特集「親と子のギャラリー」の今年の企画として「仏像のみかた 鎌倉時代編」で展示されている仏像から、撮影が許可されている像を撮らせて頂きました。
因みに、「仏像のみかた 鎌倉時代編」は、トーハクの本館11室・14室で6月10日~8月31日まで開催しています。
菩薩像には普通、「観世音菩薩」や「地蔵菩薩」等の固有の名前がありますが、この像はただ「菩薩像」と呼ばれています。
それぞれの菩薩像には、何と言う名前なのかを見分けるための印があります。
その印は、「標幟(ひょうじ)」と呼ばれていて、被っている宝冠に取り付けられたりしていますが、この菩薩像からは、その標幟が失われていて、名前を特定することが出来ていません。(上の写真で、宝冠中央の隙間の部分に、標幟が取り付けられていた筈です)
しかし、この仏像の作風や様式から、奈良で作られた仏像で、恐らくは「弥勒菩薩(みろくぼさつ)」であろうと、推定出来るのだそうです。
弥勒菩薩は、釈迦の入滅後 五十六億七千万年の後に、「弥勒如来」として地上に降り、釈迦による救済から漏れた人々を救う、未来仏とされています。
トーハクの解説パネルによると、この像の姿は「救世主」としての弥勒菩薩が、地上へ降って来る姿を現していると言うことだそうです。
今回の特集では、「子供にも分かり易い展示」というコンセプトで企画されている為、敢えて台座の下に白い雲を添えて、雲に乗って降りて来る姿として、展示したと言うことです。僕は、孫悟空の乗る筋斗雲を、思い浮かべてしまいました。
厨子入木造愛染明王坐像 (重要文化財)
彩色・切金、玉眼
像高64.0髪際高47.4 鎌倉時代・13~14世紀
以前の記事「愛染明王」にも、この像の写真を載せましたが、再び新たに撮った写真を、ここに載せることにします。
今回は、ホワイトバランス等の設定を変えて撮って見ましたが、光背の彩色が以前よりも鮮やかに写せたようです。
「コワイ!けれど美しい」 子供向けに書かれた説明板に、そう記されていました。
金属やガラスで作られた装身具を身に着けていますが、すべて鎌倉時代に作られた物だそうです。
確かに、一見すると怖いお顔をされていますが、僕は何故か憤怒相の仏像が大好きですから、実際は少しも怖いとは感じたことがありません。
愛染明王像が納められていた厨子。
内部に描かれた絵画が美しいので、厨子は別に展示されています。
何だか、本来の居場所から追い出されているようで、愛染明王さまには、少し気の毒に感じますが、この装飾をじっくり見られるのは、やっぱり有り難いことです。
木造騎獅文殊菩薩及脇侍像 (重要文化財) 康円(こうえん)作
彩色、玉眼
文殊菩薩:総高193.7像高46.1
于闐王:像高69.5
善財童子:像高46.2
大聖老人:像高70.0
仏陀波利三蔵:像高66.6
鎌倉時代・文永10年(1273) 興福寺伝来
解説パネルには「文殊菩薩騎獅像および侍者立像」とあります。
上の「木造騎獅文殊菩薩及脇侍像」と言う名称は、重要文化財の指定名称だと言うことです。
別名を「渡海文殊」とも言いますが、これは四方を海に囲まれた日本独自の表現だと言うことです。
手前に、波のオブジェを表現しているのは、これも子供たちに分かり易くするためだそうです。
この群像は、元々は奈良の興福寺の所蔵だったと見られています。
恐らくは、明治時代の「神仏分離令」に依る、「廃仏毀釈」の被害に遭って、売られるか持ち去られるかしたものであろうと、僕にはそう思われます。それでも、兎も角も無事に存在するだけでも、有り難いことだと思わざるを得ません…
また、作者の康円(こうえん)は、運慶の孫(或いは孫世代)に当たる仏師で、運慶の力強い表現に比べると、穏やかで、形式的な表現であるとの指摘があります。
今回の企画展示では、京都の神護寺から寄託されている「愛染明王像」も展示されていますが、それは康円の最晩年の作と見られているそうです。
文殊菩薩 -もんじゅぼさつ-
知恵を司るとされる菩薩です。
子供のような姿に造像されることが多いようですが、文殊の知恵の清らかさを示すためだと言うことです。
獅子 -しし-
胸に付けられた鈴が猫のようで、何だか可愛らしさも感じられます。
仏像には、動物に乗る姿がよく見られます。
像に乗る普賢菩薩(ふげんぼさつ)と共に、釈迦三尊の脇侍とされる場合もあります。
于闐王 -うてんおう-
釈迦の時代に、仏教を擁護した国王の一人だと言うことです。
何故か、獅子の手綱を取って先導して行くようです。
上の写真でも分かるとは思いますが、実は綱は獅子とは繋がっていません。
博物館の展示品の、保全や補修については、幾つもの方法論があるようですが、「現状維持」もまた重要な保全の在り方であるそうです。
この 于闐王像が手にする綱も、恐らくは鎌倉時代の物で、敢えて取り替えたり繋いだりはしないという方法を取っているのではないかと思われます。
大聖老人 -たいしょうろうじん-
「最勝老人」の別名もあります。
どのような人物なのか、調べては見ましたが、良く分かりません…
仏陀波利三蔵 -ぶっだはりさんぞう-
実は、この人物も…仏教事典等も調べては見ましたが、やはり良く分かりません…
善財童子 -ぜんざいどうじ-
『華厳経』という仏典の中に、文殊菩薩の命を受けて、五十三人の善智識(仏の知恵を持つ人)を訪ねて修行して行く物語がありますが、その主人公がこの善財童子という男の子です。
迦陵頻伽 -かりょうびんが-
文殊菩薩の光背の左右に、迦陵頻伽が彫られています。
これは、極楽に住むと言う生き物で、鳥の身体に人間の顔を持ち、美しい声で歌ったり、楽器を奏でたりする天人のような存在です。
尚、この記事に載せた仏像の名称等については、「e国宝」のサイトを参考にしました。
このサイトには、各国立博物館が所蔵する展示品の内、国宝及び重要文化財の写真と解説を掲載されています。博物館の展示品に関心のある方には、興味深いサイトだと思います。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
この企画展示には、もっと沢山の仏像が展示されていますが、今回は僕が特に心惹かれる幾つかの仏像を取り上げて見ました。
また、今回の展示の中には、2008年にニューヨークのオークションに掛けられたものを、宗教団体の真如苑が落札した「運慶」作と見られている「大日如来座像」も含まれています。
美しい像ですが、撮影は禁止です。
その像のように、団体や個人が所有していて、トーハクに寄託されている展示品の中には、写真撮影が禁止されている展示品もあります。
撮影をされる場合は、「撮影禁止マーク」に充分気を付けて、マナーを守って撮って頂きたいと思います。マナーを守れない人が増えてしまえば、再び以前のように、すべて撮影禁止になる可能性もあるかと思いますが、出来ればそうならないようにしたいものです。
因みに、撮影禁止の展示品を誤って撮られた方が、以前トーハクのサイトに反省を込めて書き込まれていた文章に依ると、「係の方が非常に穏やかに、撮影禁止の旨を伝えられた上で、当人立会いの下で、画像の消去を行った」との事でした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
また、更新が滞ってしまいましたが、6月には父親用に車椅子を買ったので、足慣らしのために、今回の記事に書いた仏像の企画展示や、上野と千葉市の動物園へも出掛けたりしていました。
そこで、パンダやレッサーパンダの写真も撮ったのですが、ブログの記事には載せられないままになってしまっています…出来るだけ、月日が過ぎないうちに、写真を載せたいと思います。
また、少し前の記事で紹介した、インターネット上で大学レベルの講義を、無料で受けることの出来るJMOOKのgacco(ガッコ)の講座で受講した「国際安全保障論」について…。そして、久し振りに読み返した『自由からの逃走』という本についても、ブログの記事にして置きたいと思っていますので、宜しくお願い致します。
おはようございます^^
木造菩薩立像はすてきな菩薩様ですね。全体像は何だかちょっと色ぽいような^^
仏像の見方、わたくしも勉強したほうがよさそうだわ。
愛染明王像が納められていた厨子、お色がとても綺麗ですね。じっくり見たいです。
by mimimomo (2014-07-20 06:33)
昨日はお疲れ様でした!
天気にも恵まれて楽しい1日になりましたね。
今後ともよろしくです~!
by よーちゃん (2014-07-21 18:36)
昨日はお疲れさまでした♪
存分に楽しみました♡
更新ままならない、おっぺけですが…
(MY365はガンバってます(笑))
今後もよろしくお願いします☆(^_−)−☆
by すぅ〜(*´`*) (2014-07-21 19:58)
昨日はおつかれさまでした!!
本当に楽しい一日でしたよね(^_^)
今後もよろしくお願いします!
by sasasa (2014-07-21 20:28)
仏像たちの黒光り(?)した様子から、時間の堆積が感じられます^^;。
昨日はおつかれさまでした。クマバチには驚きましたが^^;。
またの機会も、よろしくお願い致します。
by sakamono (2014-07-21 22:09)
昨日はお疲れ様でした。予想を反して炎天下のBBQでしたが
楽しいひと時でした。またよろしくお願いします。
菩薩様の美しさにハッとしました。是非観に行きたいです。
by po-net (2014-07-21 23:55)