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神としての蛇 [神話・伝説]

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 奈良県桜井市三輪に鎮座する、大和の国一之宮「大神神社(おおみわじんじゃ)」です。

 因みに、この写真を撮ったのは2004年8月。今から9年ほど前のことになります。

 大神神社(おおみわじんじゃ)は、日本最古の神社と言われ、普通の神社では、ここに写っている拝殿の向こうに、御神体の座す本殿があるのですが、大神神社には本殿がありません。
 それは、この神社の御神体が、拝殿の背後に聳える「三輪山(みわやま)」と考えられているからです。

 しかし、神話の世界では、この山の神は、「蛇」であるともされています。

 それに就いて、古事記に、 以下のような記述があります。
 原文では分かり難いので、平凡社世界大百科事典の「三輪山伝説」から引用させて頂きます。

 「《古事記》によると,陶津耳(すえつみみ)命の娘活玉依毘売(いくたまよりびめ)には夜な夜な通う男があってついに身ごもる。父母が怪しんで男の正体をつきとめるために,糸巻きに巻いた糸を針に通して男の衣の裾に刺すように娘に教えた。翌朝見ると糸は戸のかぎ穴から抜け出ており,糸巻きには3巻きだけ残っていた。そこで糸をたよりに訪ねて行くと美和(みわ)山の神の社にたどりついた。かくて男は美和山の神であり,生まれた子はその神の子であることがわかった。そして残った三勾(みわ)(3巻き)の糸にちなんでその地を〈ミワ〉と名づけた。」 

                              
平凡社世界大百科事典 DVD版より

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 神体山である三輪山は、神奈備(かんなび)と呼ばれる聖なる場所として、かつては禁足地(きんそくち)とされ、神官や僧侶以外の入山は禁止されていましたが、現在は、「入山者の心得」という規則を遵守しての登山が許可されています。

 僕は、三輪山へは三回ほど登っていますが、規則の中に、山内での「写真撮影の禁止」の項目があるため、三輪山の登山中には、規則通りに一切の撮影はしていませんから、山での写真はありません。

 三輪山は、標高467.1m の、比較的なだらかな、円錐形の山で、二時間程度で山頂までの往復が可能です。

 僕が、最初に三輪山に登ったのは、十数年も前ですが、途中の細い坂道を登って行くと、突然登山道脇の草叢から、ザザザッと言う音がして、大きなアオダイショウが現れました。

 今まで見たこともない程の、大きなアオダイショウでしたが、まるで僕を先導してくれるように、山道を登って行き、やがて生い茂る草の中に姿を消して行きました。

 三輪山の神は、美しい白蛇だとも言われていますから、そのアオダイショウは三輪山の神の眷属だったのかも知れません・・・

 以下に、六月半ばに、家の庭に現れたアオダイショウと、その数日後に近くの農道脇で見掛けた、シマヘビの子供の写真を載せます。
 更に、その後にはヒキガエルの写真もあります。

 僕自身、ヘビはどうも苦手なのですが、写真を撮ることには、抵抗はありません。

 それほど、怖い雰囲気の写真ではありませんし、写真の枚数もヘビ・ヒキガエル共に、二枚づつだけですが、嫌いな方は、どうぞご注意願います。      

    ⇓    ⇓

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                         アオダイショウ 青大将 ナミヘビ科 ナメラ属

 家の、ミカイドウの木の上で、蜷局(とぐろ)を巻いていたアオダイショウです。
 何故、この木の上に登ったのかは、よく分かりません・・・

 家の玄関は、二階にあるのですが、そこへ登って来る階段の真上の枝に、このヘビはいました。

 台所の窓から見える位置だったので、先ずは写真を撮りましたが、来客があった際に、ヘビに落ちて来られても困るので、外へ出て、棒で枝をそっと叩いて、木から降りて行って貰うことにしました。

 降りて来た時に、あわ良くば写真を撮ろうとして、カメラを持って出たのですが、枝をどう伝わって降りたのか、あっという間に庭からいなくなってしまいました・・・

 しかし、こうして写真に撮ってよくよく見ると、アオダイショウの鱗は、なかなかに美しいものだと思いました。

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                      シマヘビ (幼体) 縞蛇   ナミヘビ科 ナメラ属

 数日後、近くの農道の縁石の向こう側に、赤っぽい細い紐のような物が、落ちているように見えたので、何だろうと思って良く見ると、小さなヘビでした。

 昨年の記事に載せた、成体のシマヘビとは、かなり様子が違いますが、山渓ハンディ図鑑10「日本のカメ・トカゲ・ヘビ」で検索して、シマヘビの幼体と同定しました。

 長さはある程度ありますが、太さはせいぜい普通のボールペン程度の小さなヘビでした。
 数回シャッターを切って、もう少し全体を撮ろうとした瞬間、素早く向きを変えて、藪の中へ飛び込むように去って行ってしまいました。

 手も足もなく、しかも細紐のように小さな生き物が、まるで飛ぶような動作を見せて、一瞬のうちに消えるように、去って行ったことは、かなりの驚きでした。

 些か、大袈裟かも知れませんが、ヘビが畏怖や崇敬の対象となる理由の一端を見たような、そんな気さえしました。

 蛇に対する信仰に関して、民俗学者の吉野裕子さん(1916~2008)は、

 蛇が世界各原始民族によって崇拝されたのは、蛇が祖霊・祖先神とみなされたからである。

 それは従来、日本の民俗学その他で定説となっている単なる「水の神」というような低次元の神ではない。私見によれば、蛇は絶対に祖霊であり、先祖神である。

                              山の神 易・五行と日本の原始蛇信仰

                                   吉野裕子 講談社学術文庫

 と書かれていて、神話や伝承、祭りなどを例に、様々に検証を重ね、『蛇 日本の蛇信仰』(講談社学術文庫)という著作では、生物としての「蛇」の生態にまで触れて、独自の蛇信仰を論じられています。

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                   アズマヒキガエル 東蟇蛙 ヒキガエル科  ヒキガエル属

 先日、カラスウリの写真を撮りに行った帰り道で、公園の通路上にいたヒキガエルです。

 かなり大きな個体で、道の真ん中を、のそのそと歩いていました。

 フラッシュを焚いて、写真を数枚撮った時に、すぐ横をアカガエルが跳ねているのを見付けたので、それも撮ってやろうと思って、アカガエルを狙って行ったのですが、すぐに逃げられてしまいました。

 僅かな時間で、すぐにヒキガエルのもとへと戻ったのですが、ヒキガエルの姿も、そこにはありませんでした・・・
 あんなにのそのそと、道の真ん中辺りを這っていたのに、ヒキガエルにも、何か不思議な能力があるのかも知れません・・・

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 ヒキガエルは、ガマガエルとも呼ばれ、筑波山の「ガマの油」でも有名ですが、神霊としての平将門公の眷属ともされていて、東京大手町の将門塚の石碑の横には、大きな蟇蛙の置物が、何体も置かれています。

 ヒキガエルの正面顔は、思いの外可愛いようにも感じられました。

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                      十二神将立像  東京国立博物館
 
                       横須賀市曹源寺伝来・鎌倉時代・木造・重要文化財

 こちらも、蛇の神様です。

 トーハク(東京国立博物館)の常設展示場に、現在(2013.7月時点)展示されている、「十二神将像」の内の「巳神(ししん)」です。

 十二神将とは、本来は「薬師如来」を守護する、十二体からなる武神の群像です。

 中央の刀を持った像は、頭部に蛇の飾りを着けていますが、他の像もそれぞれに、十二支の動物の顔を、頭に戴いています。

 これは、蛇信仰とは些か趣が異なり、十二神将の十二という数字に掛けて、その一体づつに十二支の動物を当て嵌めただけのものと考えられますが、それぞれの干支の守護神のような意味合いは、あるのかも知れません。

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 また、この像とは関係ありませんが、仏教の経典には、「龍」或いは「龍神」という名が、よく現れます。
 これは、原典のサンスクリット語では、「ナーガ」或いは「ナーガラージャ」と呼ばれているものですが、その実態はインドコブラに起源を持つ神格と思われます。

 つまり、仏典に現れる龍もまた、実際には蛇神であると言うことのようです。

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 この十二神将の巳神(ししん)は、最も堂々とした立ち姿で、このグループ全体の指揮官のような風貌をしています。
 尚、この画像はクリックで拡大表示されます。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 以前、春分さんもご自分のブログに書かれておられましたが、トーハク(東京国立博物館)で、こうして仏像の写真を撮らせて頂けるのは、本当に有り難いことだと思います。

 寺院や個人からの寄託品の一部や、損傷の激しい展示品等の中には、撮影禁止のものもありますが、トーハクでは、かなり多くの列品の撮影を許可してくれています。

 フラッシュや三脚は、当然の事として使用出来ませんが、カメラのISO感度やホワイトバランス等を、少しづつ調整しながら撮影するのも、また楽しいことです。
 ただ、これもまた、当然のことですが、撮影に夢中になって、他の来館者の迷惑にならないことにだけは、常に心していなければなりません。

 仏像好きな僕としては、東京国立博物館には、本当に感謝しております。

 ところで、先日、トーハクのサイトで、トーハクがFacebookでの情報発信を開始したことを知り、僕も漸くFacebook のアカウント登録をすることにしました。

 僕は、十年ほど前から東京国立博物館友の会に入っているので、隔月で様々な案内を送って貰えるのですが、やはり日常的に最新の情報を得られれば、それに越したことはありません。

 Facebook 自体は、取り敢えずアカウント登録をしただけで、未だ使い方も良くは分かっていませんが、友達を検索する項目を見て、ちょっと驚きました。
 それは、そこに並んでいる友達候補は、登録した居住地域や出身校名などに依って、Facebook に参加している人たちの中から、一致する項目を抽出して選んでいるのだと思いますが、その中にそれらの登録項目とは、全く関係のない知人が、三人もいたからです。

 その内の一人の人とは、年賀状の遣り取りはしていますが、他の二人の人たちとは、もう五年以上会っていませんし、連絡を取リ会うようなこともしてはいません・・・
 ただの偶然なのか、何か僕の気付いていない理由があるのか・・・

 ちょっと怖いような、面白いような・・・取り敢えずは、もう少し使い方を覚えてからと言うことにします。

参考図書

古事記 (岩波文庫)

古事記 (岩波文庫)

  • 作者: 倉野 憲司
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1963/01/16
  • メディア: 文庫

蛇 (講談社学術文庫)蛇 (講談社学術文庫)
  • 作者: 吉野 裕子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1999/05/10
  • メディア: 文庫

山の神 易・五行と日本の原始蛇信仰 (講談社学術文庫)

山の神 易・五行と日本の原始蛇信仰 (講談社学術文庫)

  • 作者: 吉野 裕子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/08/07
  • メディア: 文庫

大神神社

大神神社

  • 作者: 中山 和敬
  • 出版社/メーカー: 學生社
  • 発売日: 1999/12
  • メディア: 単行本

 

ハンディ10日本のカメ・トカゲ・ヘビ (山溪ハンディ図鑑)

ハンディ10日本のカメ・トカゲ・ヘビ (山溪ハンディ図鑑)

  • 作者: 松橋 利光
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2007/06/01
  • メディア: 単行本

 

日本のカエル+サンショウウオ類 (山渓ハンディ図鑑)

日本のカエル+サンショウウオ類 (山渓ハンディ図鑑)

  • 作者: 松橋 利光
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2002/03/01
  • メディア: 単行本


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ichii

アオダイショウ、綺麗ですね。
三輪山伝説の神の子を産んだ娘の話もとても面白かったです。
十二神将はまるでヒーロー戦隊のような立ち姿ですね。
随分と美しくカッコイイ仏像です。
by ichii (2013-07-25 07:27) 

mimimomo

おはようございます^^
青大将の顔は愛嬌がありますね^^ 目が何とも可愛い~
これが頭の上から落ちてきたら、やはり吃驚しますね~人によっては腰を抜かすかも^^
蛇も蛙も動きは早いです。いつも写し損ねます。蛙はアマガエルくらいかしらね~じっとしていてくれるのは。
Facebookはわたくしも登録していますが、同姓同名の人と間違われて、
何故だか姪の夫を紹介され《その時は人違いと分からないから》、どうして親戚関係まで分かるのかとちょっと不気味な思いをしました。
by mimimomo (2013-07-25 08:45) 

枝動

こんにちは。
ここの大鳥居を眺めながら、よく仕事しています。
一度参拝したいと思いながら、未だ実現に至っておりません^^;
FBは是非とも、友だち申請させて頂きたいですね(^^)
色々と問題もあるようですが、ブログがプライベートで無い分、FBで交流を楽しんでいます。慣れましたら、サイドバーなどでご案内下さいませ。m(__)m
by 枝動 (2013-07-25 12:29) 

きまじめさん

アオダイショウは昔から家の守り神として大事にされていたと聞いていますが、
改めて写真を拝見すると、胴体の麟が美しい色合いなのですね。
顎を胴体にのせ、くつろいでいるような顔がなかなかかわいいです。
by きまじめさん (2013-07-26 23:03) 

sakamono

ヘビには確かに不思議な魅力(?)があるように思われます。
魅入られるというか...。ちなみに私は巳年です^^;。
by sakamono (2013-07-27 14:44) 

はてみ

ほんとにシマヘビの幼体かなあと『日本のカメ・トカゲ・ヘビ』を開いてみましたが、「幼体には小豆色の横縞がある」ってこれですね。むかし飼っていたシマヘビが卵を生んで子どもが孵ったというのをワンパターンで自慢にしているのですが、幼体はあまり観察しないままに逃がしてしまったので記憶がさだかではありません。
ヒキガエルは眠そうな目(黒目が丸くないのでしょうか?)とこの貫禄ある体で長老みたいな感じがします。
頭に蛇をいただく巳神、以前の記事に書かれていた宇賀弁才天みたいですね。
by はてみ (2013-07-28 13:27) 

ぼんぼちぼちぼち

カエル なんか太ってやすね(◎o◎:
by ぼんぼちぼちぼち (2013-07-29 10:19) 

旅爺さん

関西から就職してきた若者の名前は「三輪」なんです。
神の子かも知れないので大事にしないと・・・でも辞めて消えました。
我が家の庭にもヘビが居ますが、毎年車にひかれて最近姿が見えません。
by 旅爺さん (2013-07-30 10:55) 

スミッチ

仏像の写真を撮れるのいいですね。家でもじっくり眺められますね
いろんなところで写真を撮るのに夢中になって他の人への配慮を忘れてしまう事があるようで、いつでもそういう事は忘れないようにと思います
ヘビ苦手なんですけど、見かけるとやっぱり写真を撮ろうと思ってしまいます
by スミッチ (2013-08-03 07:38) 

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