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初夏の風~マツバウンラン~ [花]

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                              かぜ と なりたや

                            はつなつ の かぜ と なりたや

                              かのひとの まへに はだかり

                            かのひと の うしろより ふく

                               はつなつ の はつなつ の

                                かぜ と なりたや

                                          川上 澄生   「初夏の風」

                                       川上澄生全集 第一巻 所収
                                       中央公論社・刊 (昭和54年)


 

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                              マツバウンラン  ゴマノハグサ科 ウンラン属

 初夏の風と、戯れるように揺れるマツバウンランを見ていると、何故か川上澄生(かわかみすみお)の詩「初夏の風」を思い浮かべることがあります。

 

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 マツバウンランの細い茎は、僅かな風を受けても、思いの外に激しく揺れて、カメラを構えても、思うように撮らせてはくれません。

 そんな時には、何だか風そのものを撮ろうとしているかのような、不思議な気持ちにさせられたりもします。

 

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       吹き抜ける初夏の風が

       薄紫の花を揺すると

       まばゆい光の粒子は

       きらきらときらめきながら

       そこここに散乱して消える


       やがて移ろい行く季節の

       果てしない繰り返しの中を

       風は飽くこともなく吹き亘り

       花々の香りを運びながら

       終わりのない旅を続ける

       

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 マツバウンランを最初に見たのは、ブログを始めた年の、五月だったと思います。

 すぐに図鑑に当たって見たのですが、暫くの間名前が分からず、一月ほどしてから、帰化植物の図鑑の中に、漸く見付けることが出来ました。

 

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 それ以来、毎年何処かで見付けられるようになり、毎年このブログにも載せています。

 ここ数年は、家からほど近い大規模小売店舗の、給排水施設の辺りに咲いているのを見ることが出来ますが、狭い場所なので、群生しているという訳ではありません。

 今回の記事の写真は、5月10日に、上野の西美(国立西洋美術館)の、前庭の芝生で撮ったものです。

 毎年、この時期には、何らかの特別展があるので、その帰りに撮って来るようになりました。
 今年は、前の記事にも書いた「ラファエロ展」でした。

 この日は、本当は時間の余裕がなかったのですが、ISO感度とホワイトバランスの設定を変えていたことを忘れて、何十枚も撮ってしまったため、途中で気が付いた後、もう一度撮り直す結果となってしまいました・・・

 

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 家の庭でも咲かせたいと思って、種を撮って来て蒔いたりもしたのですが、上手く行きませんでした。
 
 マツバウンランは、芝生のような日当たりの良い場所でないと育たないようなのですが、家の狭い庭では、そのような場所を確保する余裕はないため、仕方なく断念しました。


 

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 因みに、冒頭に引用させて頂いた、川上澄生の「初夏の風」は、本来単独の詩として書かれたものではなく、版画作品のなかに彫り込まれた詩の一編です。

 作者の、川上澄生という人自体を、御存じのない方も多いかも知れませんが、その代表作とも言える版画「初夏の風」は、大正15年の展覧会に出品した際に、棟方志功に大きな感銘を与え、志功に「板画家」として生きて行くことを決意させたとされている作品です。

 僕が、最初に「初夏の風」の版画を観たのは、三十四年も前、1979年(昭和54年)に中央公論社から出版された「川上澄生全集(全14巻)」に掲載されていた図版でした。

 その後、2009年に、東京都美術館で開催された「日本の美術館名品展」という展覧会で、その実物を、偶然目にすることが出来ました。

 その版画は、栃木県立美術館の所蔵品でしたが、版画作品であるため、鹿沼市立川上澄生美術館にも、同作品は展示されているそうです。

 この「初夏の風」の版画は、各美術館のサイトで観ることが出来ます。

    栃木県立美術館

    鹿沼市立川上澄生美術館

 

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 また、この詩には、川上澄生自身による、以下のようなバリエーションも存在します。


        わが願ひ

     われはかぜとなりたや

     あのひとの

     うしろよりふき

     あのひとの

     まへにはだかる

     はつなつのかぜとなりたや

          詩集・青髭 (昭和2年刊・私家版)より

            川上澄生全集 第一巻、及び 第十四巻 所収
                                               中央公論社・刊 (昭和54年)

 

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 もう、五月も半ばとなりましたが、数日前までの寒さの後、今日は真夏のような暑さでした。

 そのせいか、色々な植物にも、花が早く咲き過ぎたり、また咲かなかったりと、様々な影響が出ているようです。
 マツバウンランも、今年はかなり早く咲き始めたように思いますが、昨日近くで咲いている場所を通り掛かると、まだ咲いているものもあり、もう花が終わって種が大きくなり始めたものもあり、という状態でした。

 そんな状況で、暑さ対策が間に合わないまま、熱中症で倒れた人も多いようですし、農作物や果樹などにも、種々の影響が出てくる恐れもあると思います。
 
 どうか皆さんも、あまりに急激な温度変化で、熱中症等にならないよう、充分にご自愛なさって下さい。

 


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ゴーパ1号

先日、マツバウランを見つけた時、albireoさんのblogを思い出してました^^
by ゴーパ1号 (2013-05-14 22:42) 

mimimomo

こんにちは^^
目立たないお花ですが群生していると美しいですね。
albireoさんのお写真を拝見するお益々惹かれるお花です。今年はもう見に行けないかしら。
泉自然公園にも群生しているのですよ。毎年楽しみにしているのですが、今年はどうもダメみたい。

by mimimomo (2013-05-15 10:42) 

春分

マツバウンランが撮りたいなと幾つか咲いていたところを見ていましたが、今年はまだ見られていません。後は確実なのは和歌山城だけど、今月は行くあてがないです。
川上澄生は栃木県民はよく知っています。学校で美術館に行きますしね。
by 春分 (2013-05-15 19:21) 

(。・_・。)2k

可愛らしい花ですね(^^)
紫の花に可愛いのが多い気がするんですよね~

by (。・_・。)2k (2013-05-15 22:02) 

きまじめさん

マツバウンランに出会ったことがありませんが、
その可憐な姿は川上澄生の詩の「われはかぜとなりたや」との願い、
わかるような気がします。
by きまじめさん (2013-05-16 23:27) 

はてみ

有名な詩で知ってるけど、いったいなにで知ったのだろう?教科書?
ひらがなだけなので、白っぽくきらきらしている感じ。
版画の実物見てみたいです。
鹿沼市でいま展示してるみたいですが、鹿沼ってほとんど日光ですね。
どうせなら日光とセットにして行きたいなあ。
by はてみ (2013-05-24 00:22) 

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