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マグノリアの木~木蓮の仲間たち~ [花]

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                                ホオノキ  朴の木  モクレン科 モクレン属

   そのいちめんの山谷の刻みにいちめんまっ白にマグノリアの木の花が咲いてゐるのでした。
   その日のあたるところは銀と見え陰になるところは雪のきれと思はれたのです。
   (けはしくも刻むこゝろの峯々に いま咲きそむるマグノリアかも。)斯う云ふ声がどこからか
   はっきり聞こえて来ました。諒安は心も明るくあたりを見まはしました。
    すぐ向ふに一本の大きなほほの木がありました。その下に二人の子供が幹を間にして立っ
   てゐるのでした。

                                   宮沢賢治 「マグノリアの木」
                                         
                                     ちくま文庫版「宮沢賢治全集 6 」所収

 ホオノキの花を見ると、宮沢賢治の童話「マグノリアの木」を思い浮かべます。

 

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 でも、「マグノリアの木」は、「銀河鉄道の夜」や「風の又三郎」のように、良く知られた作品ではありません。
 取り立てた物語もない、仏教的な雰囲気を持ちながら、「サンタ、マグノリア」という、キリスト教的な祈りの言葉が鏤められている、宮沢賢治の独特な世界観で描かれた、ごく短い作品です。

 その中に、「大きなほほの木」とありますから、ここではマグノリアは、ホオノキを指していると考えられます。

 この作品に描かれた、白く輝くようなホオノキの花のイメージが、僕の心に焼き付けられてしまっているようで、ホオノキの花を見た時に、ふとこの童話のことを、思い浮かべてしまったという、ただそれだけのことではありますが・・・

 尤も、実際のホオノキはまっ白な花ではなく、作品中に「天からおりた天の鳩。」という記述があり、むしろ、ハクモクレンを連想させる雰囲気もあるのが、些か気にはなりますが…

 

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 「マグノリア=Magnolia」とは、モクレン科の「モクレン属」を指すラテン語表記です。

 その仲間としては、モクレンやコブシなどが挙げられます。

 ホオノキの花期は、図鑑等では5月から6月となっていますが、このホオノキは4月20日過ぎ頃から咲き始めたようで、今も咲いていますが、どうも通常よりも少しばかり早いような気もします。

 写真は、最寄りの「津田沼駅」に近い、公園に植えられたホオノキの花です。
 前々から、ホオノキの存在は知っていたのですが、なかなか撮る機会がありませんでした。

 今年は、割合低い枝にも咲いていたので、漸く撮ることが出来ました。

 

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                           ハクモクレン  白木蓮  モクレン科 モクレン属

 ハクモクレンの写真は、3月19日に撮ったものです。
 なんとなく慌ただしいままに、載せそびれてしまっていましたが、「マグノリア」の仲間ということで、今更ですが載せて置くことにします。

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 いつも、ハクモクレンの花を見るたびに、一斉に飛び立とうとしている白い鳥を連想してしまいます。

 

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 ハクモクレンの花の蕊は、何だかパインアップルの実のようで、何だかとても可愛らしく感じられます。

 

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                                   コブシ  辛夷  モクレン科 モクレン属

 ハクモクレンよりも、少し小ぶりのコブシです。

 これも、3月19日に撮ったもので、やはり載せそびれていた写真です。

 近縁種に「タムシバ」という、よく似た花樹がありますが、花の下に一枚づつの若葉がみえるので、これは「コブシ」で間違いないと思います。

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 冒頭に引用した、宮沢賢治の作品では、ホオノキを「マグノリア」と呼んでいましたが、賢治の文語詩の一遍に、

                 群れてかゞやく辛夷花樹(マグノリア)

                                     ちくま文庫版「宮沢賢治全集 4 」所収

と、書かれている作品があり、ここでは「辛夷花樹」に「マグノリア」とルビを付していますから、コブシのことも、「マグノリア」と呼んでいたようです。

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 ハクモクレンもコブシも、僕の好きな花なので、載せそびれてしまったことは、些か残念に思っていましたが、今年は思いがけなく、ホオノキの花を写真に撮れたましたので、同じ仲間と言うことで、今更ですが、載せて置くことにしました。

 尚、モクレン科の植物のひとつに、ユリノキがあります。

 先日、トーハク(東京国立博物館)へ行った際に、ちょうど咲いていたユリノキの花を撮って来ましたが、それは「モクレン属=Magnolia属」ではなく「ユリノキ属=Liriodendron」であるため、別の記事として、明日にも更新する予定です。

 

参考図書

宮沢賢治全集〈6〉 (ちくま文庫)

宮沢賢治全集〈6〉 (ちくま文庫)

  • 作者: 宮沢 賢治
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1986/05
  • メディア: 文庫

新・宮沢賢治語彙辞典

新・宮沢賢治語彙辞典

  • 作者: 原 子朗
  • 出版社/メーカー: 東京書籍
  • 発売日: 1999/07
  • メディア: 単行本

 


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コメント 4

mimimomo

おはようございます^^
albireoさんとわたくしが思い浮かべることには雲泥の差が有りますね~
宮沢賢治の短編ですか・・・わたくしは朴葉味噌などを思い浮かべて(__;;;
ユリノキのお花が咲いていますか。この数年咲いているところを見ていないので
今年は次期を合わせてどこかへ見に行きたいと思っていますが、ユリノキも高いところに咲きますよね。いつもお尻ばかり見せられるような(><;
by mimimomo (2013-05-12 07:55) 

mimimomo

あ、時期です。
by mimimomo (2013-05-12 07:55) 

(。・_・。)2k

本を書くには花の名前も知らないと
伝えられないんでしょうね
物知りじゃないとなれないですね(^^;


by (。・_・。)2k (2013-05-12 21:00) 

sakamono

「一斉に飛び立とうとしている白い鳥を連想」するというところ、
私もまったく同じです^^;。
by sakamono (2013-05-19 15:24) 

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