梢を目指して <ツルハナナス> [花]
ツルハナナス 蔓花茄子 ナス科 ナス属
庭にある、キンモクセイやナツメの枝に絡みついて、青紫と白のなかなか奇麗な花を咲かせている、つる性の植物があります。
つる性と言っても、巻きひげを出したり、茎を螺旋状に巻きつかせたりする訳ではなく、要所要所に葉柄を絡めるようにして、木々の枝を這い登って行きます。
相手の枝に絡まった部分をよく見ると、最初のうちは軽く引っかっている程度ですが、やがては頑丈に結束したような状態になります。
この花は、ナス科の外来植物で、「ツルハナナス」という、将にそのままの名前を持っています。
「ツルハナナス」は、なかなかに繁殖力が強い植物のようで、茎を採って地面に挿しておくだけで、簡単に殖やすことが出来ます。
実際、家の庭のツルハナナスも、知り合いの人の庭に咲いていた花の付いた枝を一枝頂いて来て、植木鉢に挿しておいたところ、いつの間にか大きく育ったものです。
今では、根が植木鉢の底の穴を抜いて、その下の地面に達している状態です。
花の咲く期間も、かなり長いようで、庭の花も5月下旬頃から咲きはじめ、まだ当分は咲き続けそうな気配がします。
写真でも解かると思いますが、一つの枝に青紫と白の花が、同時に咲いています。
でも、これは二色に咲き分けている訳ではありません。
「ツルハナナス」は、最初は青紫の花を咲かせますが、数日を経て段々と薄い色になり、やがて白に変わります。
一つの枝に、花が徐々に咲いて行くため、二色に見える訳です。
ところで、今回の記事の写真を見て、この花は「ヤマホロシ」では?と、思われた方もいらっしゃるかも知れません。
事実、「ツルハナナス」をネットで検索すると、この花には「ヤマホロシ」の別名があるかのような記述が数多く見出されます。
しかし、これは明らかな間違いで、両者はそれぞれに別の植物です。
…とは言っても、実際のところ「ツルハナナス」を、「ヤマホロシ」の名で販売している園芸店も多いようですから、一般の方が、ブログの記事等に、この花を「ヤマホロシ」と書かれたとしても、その方を責めることは出来ません。
さて、僕もまだ実物を見たことのない、本物の「ヤマホロシ」ですが、この植物は日本の山間部等に自生している、ナス科の在来種で、全国的に見ても、かなり希少な植物のようです。
「ヤマホロシ」の近縁種には、「ヒヨドリジョウゴ」という植物がありますが、こちらは今のところ、「ヤマホロシ」ほどの希少種ではなく、僕も以前にブログの記事にしています。
http://albireo190.blog.so-net.ne.jp/2006-09-16
「ヒヨドリジョウゴ」の花は、白くて花弁が後ろに反り返っていますが、「ヤマホロシ」は青紫の花で、花弁は反り返らないようです。
「千葉県環境生活部自然保護課」の「千葉県レッドデータブック掲載種一覧」を見ると、「カテゴリー:C 重要保護生物」として「ナス科 ヤマホロシ」の名が、掲載されています。
繁殖力の強い、外来種の「ツルハナナス」も、同じナス科に属する植物ではありますが、希少種である本来の「ヤマホロシ」とは、当然別の植物です。
また、「ヤマホロシ」には、「ヒヨドリジョウゴ」と似た、赤い実がなるそうですが、「ツルハナナス」には、実は出来ないようです。
そんな、別々の植物に紛らわしい名称が付けられている理由は、園芸植物の販売業者が、恣意的に名付ける「流通名」にあるようです。
「流通名」の問題点に就いては、以前にもこのブログで取り上げたことがあります。
http://albireo190.blog.so-net.ne.jp/2005-07-31
販売業者としては、商品である植物を売る為に、よりアピールのし易い名称を付けたいのでしょうが、花を扱う者としての良心があるのであれば、やはり紛らわしい名称は避けて貰いたいと思います。
曲線を描くように
しなやかに枝を伸ばして
高い木々の梢を目指し
這い登って行く花
可憐な けれども強かな
その生命の在りようを
人の生き方に重ねることを
僕は決して好まない
花は花であって 人ではなく
同様に人は 花では有り得ない
すべての生命はあるべき姿で
その生命を全うしようとする
因みに、「ツルハナナス」を図鑑等で調べても、僕の調べ方が徹底していないからか、あるいは比較的新しく導入された外来種だという事なのか(いつ頃、輸入されたのかは分りませんでした…)、僕の手元にある本には、一冊も載っているものがありませんでした。
また、「ヤマホロシ」の方も、こちらは滅多に見られない植物であるせいか、百科事典等は別にして、手元にある図鑑類で、記載されている本は一冊だけでした。
(僕は現在持っていませんが「牧野植物図鑑」には、「ヤマホロシ」が記載されています)
また、東京の都心部には、少なくとも一か所は「ヤマホロシ」の見られる場所があるそうです。
参考図書
世界大百科事典 第2版 プロフェッショナル版―CD-ROM+DVD-ROM
- 作者:
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 1998/10
- メディア: 単行本
日本大百科全書+国語大辞典―スーパー・ニッポニカ CD-ROM Windows版
- 作者:
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1998/11
- メディア: 大型本
花の色が変わるのは「ニオイバンマツリ」と一緒ですね。
by SilverMac (2008-07-21 06:12)
それぞれとてもきれいな写真ですね。
希少種じゃなくても、在来種じゃなくても関係ないですね。
しかし、私はやはり花に鳥に人を思いますねー。弱いからか。勝手だからか。
by 春分 (2008-07-21 20:28)
青紫と白が同時に咲いているように見えるのがいいですね。
梢を目指しているお写真素敵です。
つるには見えませんね。
ツルハナナスにもヤマホロシにもお目にかかったことがありません。
by penpen (2008-07-21 22:10)
>その生命の在りようを
>人の生き方に重ねることを
>僕は決して好まない
100%同感というわけでもないけど、ここが好きです。
albireoさんが詩の中で、ご自分の意思をはっきり表明するのは珍しいような気がして、その点も。
by はてみ (2008-07-21 23:31)
たしかにナスの花ですね。ツル性のナスがあるとは思いもよりませんでした。
高いところまで上っていくものですね。薄い紫色が美しいです。
by sakamono (2008-07-22 08:32)
8枚目のお写真に 特に惹かれました 私の大好きな色のお花
最初てっきり ナスの花と思いました こんなツルハナナスがあるとは
by sanesasi (2008-07-22 17:07)
おはようございます^^
ツルハナナスはご近所でも見かけます。とっても涼しげで良いお花ですよね~
albireoさんのお宅にもあるのですね~
どのお写真も素敵です^^ 好みは下から二番目ですかしらね~^^v
by mimimomo (2008-07-23 05:44)
本当に茄子の花ですね~。
この房にナスのような実が付くのかなあ。
付いたら面白いですね、紫の実。
ただ、外来種はどれも逞しいようですね。
繁殖の制限をしないと、繊細な在来種が危ないとか…。
難しいですね。
by ichii (2008-07-24 01:39)
僕も8枚目の写真が一番好きです。
背景の青空が、花の美しさを引き立てていますね!
by lapis (2008-07-24 21:08)
私は3枚目の写真が好きです。
ひとつのお花にだけピントが来ていて 主人公みたいだから。
by すずめ (2008-07-24 23:20)