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不老不死への憧れ [伝説]

菊には、昔から不老不死の効能があると信じられています。

能に、『枕慈童(まくらじどう)』という曲があります。
(僕が以前観たのは、金剛流の『枕慈童』でしたが、現在五つある能の流派の内、観世流だけは、同じ曲を『菊慈童(きくじどう)』と呼んでいます)

この『枕慈童』は、中国の話と言うことになっています。
魏(ぎ)の国の皇帝の命を受けた臣下が、湧き出て来た薬の水の源流を尋ねて、山中に分け入り、「慈童」という童顔の仙人に出会います。
その仙人は、かつては古代の王に仕えていた少年でしたが、ある時、王の枕をまたぎ越えてしまった為、罰を受けて山中に流された者だと名乗ります。
恐ろしい猛獣も住むという山へ流罪にされる時、憐れに思った王は、枕に「法華経」の経文の一部を書いて、この経文を忘れず唱えるようにと、少年に与えました。

その有り難い経文を、忘れないようにと菊の葉に書き写したところ、その葉を伝わって流れる水の雫が、不老不死の霊薬と化したと言うのです。

菊の水の霊薬のおかげで、少年は七百年の長寿を保ちました。

能の最後に、「慈童」は楽しげな舞を見せ、現在の皇帝に対して、自分の残りの寿命を捧げようと言って立ち去って行きます。

中国には、山の上に咲く菊を伝わって流れた水のおかげで、谷に暮らす住民が長寿を得たという伝説や、菊を入れた酒を飲んで、長寿を願うという習慣もあったそうです。

また、この「菊の水」は、実は「酒」なのだとも言われています。

『枕慈童』では、皇帝に残りの寿命を捧げたということですが、同様の話は人魚の肉を食べて、不老不死となった「八百比丘尼」の伝説にも残されています。

昔の人は、極端な長寿と言うものは、他人に譲ることが出来ると考えていたのかも知れません。

 

菊とは直接関係はありませんが、ヨーロッパにも『エレキシー』とか『エリクシール』と呼ばれる、不老不死の霊薬の話が伝えられているようです。

フランス革命の直前、18世紀のパリの社交界に実在した「サン・ジェルマン伯爵」という謎の人物がいます。
彼は、その「エリクシール」の秘密を知っていて、自分はこれまで 2,000年間生きて来たと、公言していました。
彼は、人の目には、いつも40歳位に見えたということです。

一時期、サン・ジェルマン伯爵は、暫くパリの社交界に姿を見せなかったことがあるのですが、後にどこにいたのかと尋ねられると、「日本へ行っていた」と答えたという話も伝わっています。

僕は、この不可解な人物が何故かとても好きで、奇妙な話題を幾つも読んだことがあるのですが、今回はこの辺にしておきます。

 

ところで、やはり誰もが不老不死には憧れるようで、『エリクシール』という不老不死の霊薬を、何とか本当に作り出そうという努力もなされたようです。

フランスのリキュールに『シャトリューズ・ヴェール』という、とても美しい緑色をした強い酒があります。
これは、多種類のハーブを原料にした、一種の薬用酒なのですが、元々は『エリクシール』を作ろうとした結果出来たものだと言う話があります。

とても甘い酒ですが、多種類のハーブ入りのため、かなり癖のある味で、アルコール度数は55度もあり、好みは相当に分かれる酒だと思います。
そのせいか、日本ではあまり売れないようで、現在ではなかなか見つけることが出来ません。

 

最後の写真は、先日筑波山へ行った際、中腹の「筑波山神社」の境内に奉納されていた「奉納菊展」です。

実は、僕が筑波山へ行ったのと同じ日に、so-netブログ仲間の はるまきママさん御一家も、筑波山へ行かれていたのだそうです。
頂いたコメントから推測すると、どうもケーブルカーの「宮脇駅」の辺りで、すれ違っている可能性がありそうです。
そうと知っていれば、可愛いお嬢さんの真葵ちゃんに、一目だけでもお会いしたかったと、今更ながら残念に思います。

はるまきママさんの、楽しい『筑波山』登頂の記事です!
http://blog.so-net.ne.jp/harumaki/2005-12-09

 


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コメント 23

penpen

随分いろんな種類の菊が奉納されているのですね。それと盛りだくさんの菊、不老不死にまつわるお話、大変楽しく読ませていただきました。
by penpen (2005-12-09 21:16) 

いろいろな菊、たくさんありますね。
不老不死にまつわるお話楽しくは意見しました。
by (2005-12-09 21:29) 

SomethingPrecious

花自身の“持ち”がいいことも関係するのでしょうね。
それにしても美しい菊の群生。
by SomethingPrecious (2005-12-09 21:34) 

Runa

色とりどりの 菊が たくさんありますね。
不老不死の お話 面白く 読ませて頂きました。
by Runa (2005-12-09 21:36) 

とても美しい菊ですね!特に3枚目が好きです。
サン・ジェルマン伯爵は、確か「サイボーグ009」では、カリオストロ伯爵と同一人物になっていました。阿刀田高「ナポレオン狂」にも出てきますし、とても興味深い人物だと思います。
by (2005-12-09 22:09) 

おはようございます。
 お酒の『菊水』はこんなところが名の由来かしら・・・などと話がそちらに
直結するmimimomoであります。
 今度焼酎に菊の葉でも浮かべて香りを楽しみながら飲んでみましょうか。
 一番下のお写真は、本当に沢山の菊。色々あるのですね。
by (2005-12-10 09:28) 

Silvermac

ViolaMacです。
若いときは菊の花を良いとは思いませんでしたが、今は好きになりました。一枚目鮮やかな黄色に目が覚めました。
お越し頂きありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
by Silvermac (2005-12-10 11:22) 

エリクシールそんなすごい不老不死の霊薬の名前だったとは知りませんでした。お化粧品につける資○堂さんって...!
そう言えば菊水というお酒もありますね。
そのお話にあやかって名前をつけられたのかな。
一番上の黄色い菊のお写真がとてもきれいです。
by (2005-12-10 11:47) 

Silvermac

ご無沙汰しています。菊もまだまだきれいですね。
by Silvermac (2005-12-10 14:29) 

sera

菊が不老不死ですか、、
黄色い菊、てんぷらに食べたことがある!
ちょっとためらったけれども、食べましたぁ~
スーパーにも時々食べ物としての菊がありますね。
by sera (2005-12-10 15:51) 

お散歩爺

菊の水が良薬・・・・なら私も毎晩戴いてます。700年を目指して(笑)
菊は中国からの帰化植物・・・と最近のブログで知りましたが、綺麗ですよね
by お散歩爺 (2005-12-10 16:16) 

shareki

不老不死の話は面白いのがたくさんあるんですね、興味深く拝見しました。
2枚目の小菊は清楚な感じがして良いですね。
by shareki (2005-12-10 17:24) 

m-tamago

菊にまつわる数々のお話、興味深く拝見しました。
フランスのサンジェルマン伯爵のお話はおもしろいですね。
不老不死は人間の永遠のテーマなんでしょうか。
by m-tamago (2005-12-10 17:58) 

不老不死・・・誰もが憧れるものですね。
心が若々しく、輝いている人を見れば、その人こそが、「不老不死」のなかにいるのだなと思うことがあります。
たとえ、その人が世を去っても、その人の輝かしい記憶が、他人の心のなかで生き続けるのでしょうね。
菊の花を見ていると、厳かなものを感じました。
by (2005-12-10 21:02) 

Gotton Factory

不老不死。映画で「永遠に美しく」というけっこうブラックなものがありましたが、
私はそこそこでころっとあの世に行きたいと思っています。
でもこういう人間に限って長生きして、「いい人は早く死ぬのよね~。」なんて言われるんでしょうね。(笑)
by Gotton Factory (2005-12-10 22:53) 

bellflower

こんばんは^^
美しい菊の花ですね♪
albireoさんのブログ、美しい写真だけでなく色々な雑学載せてあるので
いつも楽しみだったりします^^
不老不死に関する逸話、どれも興味深いですね。
特にサン・ジェルマン伯爵、初めて知りました。
今でもどこかに存在してて、この記事読んでたりしたら面白いですね^^
by bellflower (2005-12-10 23:47) 

NO NAME

大変勉強になりました 楽しく読ませていただきました
by NO NAME (2005-12-11 11:11) 

INOUE

不老不死に関しての色々なお話、興味深く拝読させていただきました。
菊展に出展されている多くの菊の花、皆さんが丹精込めて育てられた菊と
思いますが、綺麗ですね。
by INOUE (2005-12-11 11:47) 

ナナ

他の方もコメントされていますが、私も、まず化粧品を思い出します。
エリクシール。恐るべし。
追伸:あ!たった今、弟がユズを連れて遊びにきました。PCを閉じます。
また、改めて、伺いますね。
by ナナ (2005-12-11 14:29) 

春分

キクには全草に香りがあり、香り成分はテルペン(精油の類)だそうですし(大体香り成分はテルペンだったりしますが)、殺菌力も期待できそうです。そんなわけで、いろいろなものの防腐に利用したのかもしれません。不老不死とキクを関連付けて、そんなことを考えていました。
by 春分 (2005-12-11 17:07) 

barbie

私の祖先は能楽の師だったようです。世が世なら・・・今はさっぱり(^_^;見に行くと眠くなってしまいます。狂言は楽しめるのですが。菊の展示会は力作そろいですばらしいですね。
by barbie (2005-12-12 21:53) 

はるまきママ

TB、ありがとうございます!
駅の辺りですれ違っていたのかもしれないのですね?!
そうと知っていれば、もっとあたりをキョロキョロしていたのですが・・・・・残念です。
真葵は菊よりも境内に沢山落ちていたイチョウの落ち葉で遊ぶ方がよかったみたいで、ずっと舞い落ちる落ち葉を追いかけていました。^^;
こんなに素敵な菊があったのなら、無理矢理見に行けばよかったです・・・・・
by はるまきママ (2005-12-13 17:38) 

不老不死のお話、興味深く読ませていただきました。
菊を今までとは別の思いで眺められそうです。
私も「エリクシール」でお化粧を連想しました。
そんな深淵な意味があったなんて!
by (2005-12-15 00:24) 

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